[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

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第49話 酒とカステラは人間関係の潤滑油

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 マリがアマンダに酒とカステラを所望して数時間後。 アマンダは本当に多くの種類の酒と山の様なカステラを運んで来た。

 「んへ~、もむもむぬね」

 マリが頬いっぱいにカステラを頬張って喋っているのをアマンダは苦笑しながら見ている。 まるでリスの様だと考えると危うく吹き出してしまいそうになる。

 「陛下、食べながら喋るのはマナー違反ですよ?」

 「ふぁい、ふひむへん」

 メリーに叱られても喋るマリを見て、遂にアマンダは吹き出してしまう。

 「ぷっ?! ひ、ひぃぃぃ~! お、お腹痛い、い、息が、息がぁぁぁ」

 格子越しにアマンダは石畳を叩いて笑い転げる。

 「んぐ! アマンダさん、さすがに笑い過ぎじゃない!? 」

 「いーえ、陛下がはしたな過ぎただけでございます」

 誰も味方をしてくれない現状にマリは不満を露にするが、直ぐに美味なカステラに心を奪われてしまう。

 「す、すみません陛下。 ま、まさか1国の女王がその様に食事をするとは思っていなかったのです」

 「いや、アマンダさんそれ全然フォローになってないからね? でも、持ってきてくれたカステラ凄く美味しい。 ありがとう」

 2人の和やかな様子を見ながら、メリーはまだアマンダを品定めしていた。

 (やはり……マリ陛下は凄いお方ですね。 会って数時間で、既に長年の友人の様な関係を敵方の兵士築けるとは。 しかも、近衛師団と云えば精鋭の筈……まぁ、このアマンダという兵士は其処まで優秀に見えませんが)

 メリーは心中でアマンダの評価を下しながら、アマンダが調達した酒の毒味を済ませる。

 「陛下、お飲みになられますか?」

 いつの間にかカステラを皿に置いて、涎を垂らしそうな顔で見てきていたマリに問う。

 「飲む、飲む飲む飲む! あ……ちなみにアマンダさん」

 注がれた杯をメリーから受け取りながらマリはアマンダに聞かねばならぬ事を聞く。

 「は、はい。 なんでしょう」

 「ゴルメディア女皇帝さんに呼ばれるのって……今日とかじゃないよね?」

 「そ、それは大丈夫だと思います。す、 直ぐに呼びつけると外聞がよろしくないので、恐らく数日はお待ちいただくかと……」

 アマンダは流石にマリを怒らすかと思ったが、自分の様な下っ端と平等に接してくれる相手に嘘をつきたくなく正直に話した。

 (アマンダさんは……真面目なんだね~。 嘘がつけないタイプかな? う~ん……なら、仲良くなってて損は無いよね)

 敵方の女王に対して誠実過ぎるが、その真面目さをマリは気に入った。

 「ふふ、うんうん……じゃあ、飲めるね? アマンダさんも一緒に!」

 アマンダは何を言われたのか一瞬分からずきょとんとしたが、兜を外し笑顔で答えた。

 「ぜ、ぜひご一緒します。 ど、どうせ私の仕事はマリ陛下のお側に控えてるだけですから」

 こうして、アマンダとマリの酒盛りが始まってしまった。

 ◆◇◆

 「ひくっ、えー? 何それ!? 流石に酷くない?」

 「ひぐっ、ぞ、ぞーなんですよ! わ、私だっで、頑張っでるのにー!」

 酒盛りが始まり数時間、完全に出来上がった2人は近衛師団の嫌な上司の愚痴で盛り上がっていた。

 アマンダは酒に弱く、格子に寄りかかった状態で泥酔している。

 既に本人は何を言って何を見ているのかすら不鮮明になってきているだろう。

 そして、メリーが動いた。

 アマンダに気取られぬ様に小声でマリに話し掛ける。

 「陛下……暫し離れます。 杯にはすみませんがご自身でお願い致します」

 マリの側に酒を数本並べ、無言で頷くマリを確認してからメリーは闇に溶け込む様に消えた。

 「で、でずがらー! わ、私は祖国の為にづ、尽ぐじだのに……何も、変わらないんでずー!」

 それからメリーが戻るまで、マリはアマンダの愚痴に頷きながらゴルメディア帝国産の酒に舌鼓を打つのであった。
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