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第68話 爽やかイケメンの最後
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デランは自宅へと一目散に走る。
重い黒檀の重鎧を物ともせずに全力で自宅へと帰ってきた。 玄関の灯りはついており、異変が無いように思ったが扉が少し開いたままなのに気づき急いで大斧を構えたデランは扉を慎重に開けた。
「ユリ! ソウタ! 良かった、無事か!」
最初に目に入ったのはソウタを抱きかかえた妻の姿だ。 思わずデランは安堵し駆け寄ろうとしたが、青ざめた妻の視線の先を確認するとその光景に固まった。
「あが?! あがぎぎぐ!? ぎぎぎぎがぁぁ!」
苦悶か苦痛か分からぬ程に呻く近衛師団団長カエサルが全裸で座っており。 そして、呻くカエサルの頭に手を突き刺しているのも近衛師団団長の鎧を着たカエサルだった。
「カエサルが2人!? ユリ、どうなっているんだ!?」
思わずデランがユリに問うと、我に返りようやくデランに気付いたユリとソウタが駆け寄ってきた。
「あなた! それが、私達にもわからないの。 突然、玄関に近衛師団の団長を名乗る人が来たと思ったら剣を抜いて襲ってきて……そしたら天井から可愛いメイドさんが降りてきたの」
デランは妻が何を言っているのかさっぱり理解が出来なかった。
「父上、メイドの女の子が助けてくれたみたいなんだ! でも、何かをし始めたら身体が変わって襲ってきた奴と同じになったんだよ!」
息子が言っている事もさっぱり理解が出来ない。
「つまり……今、呻いているのが本物で何かをしているカエサルが元々はメイドだった? いや、すまん……分からん!!」
デランの頭は混乱し、状況を説明されても全く分からない。 とりあえず、先程助けられたメイドの事を考えるとカエサルに変化したというメイドは味方なのだろう。
状況はさっぱりだが、無事だった喜びを3人で分かち合っていると、全裸のカエサルが鈍い音を立てて床に倒れた。
「あ……あが」
頭に手を突き刺された全裸カエサルはそれでも死ねないのか、苦悶の表情のまま小さく呻いている。
「すみません~皆さん。 お待たせしました~、記憶をコピーするのって凄く凄く大変なのです~。 初めまして~エントン王国マリ女王さんから皆さんをお助けするように言われましたサードと申します~。 こう見えてメイドさん何ですよ~?」
鎧を着た方のカエサルが立ち上がり、サードはカエサルの声で何とも力の抜ける挨拶をした。
普段のカエサルを知っていたデランからすると、非常に不気味だ。 爽やかイケメンで、権力を持つ女貴族達からもモテたカエサルは絶対にそんな言い方はしないからだ。
だが、どう見ても近衛師団団長のカエサルにしか見えない。
「先ずは……妻と息子を助けてくれた事感謝する。 だが、すまない……一体全体何が起きてるんだ?」
全裸で倒れるカエサルの方をデランが見ている事に気付いたサードは微笑んで答える。
「はい~、其処のゴミさんですね~。 マリ女王さんが皆さんを無事に逃がす為に~まだ近衛師団団長が居なくなるといけないって言われまして~。 なので~、私が近衛師団団長カエサルになることになりましたの~」
くねくねと動きながらサードは説明するが、見た目はカエサルなのだ。 デランは気味が悪くて仕方がなかった。
「そもそも、何故私達が近衛師団に襲われたのか分からないんだが!? それに……変装が必要なのは分かったがさっきまでしていたのは何だ?」
「はい~、さっきまでのはゴミさんの記憶や性格に仕草等をコピーしていました~。 なので~、これで私が偽物のカエサルと気付ける人間は居ないでしょうね」
会話の途中に突然普段のカエサルと同じ口調になった事にデランは衝撃を受けた。
「あ、あり得ない……だが、確かに佇まいも仕草も口調も同じだ。 先程の光景を見ていなければ、本物だと言われても信じるだろうな」
「ありがとう、デラン殿。 それより、そろそろ移動しようか。 私の仲間が3人の死体を偽装させる手筈となっている。 付いてきてくれ」
完全にカエサルとなったサードが3人を安全な場所へと誘導を促す。
「よろしく頼む、さぁ2人共必要な物だけ持ちなさい。 サード殿、何故このような事になったか、後で説明をお願いしたいのだが」
「当然です。 安全な場所で今後の話をしましょう」
サードに連れられて3人は夜の街に消えていった。
◆◇◆
デラン達が消えて数分後。
デランの自宅にはファーストとセカンドの姿があった。
「もう! 少し前に目茶苦茶な任務をさせたのに、直ぐに帝国に来いだなんて、メリー隊長は人使いが荒すぎるのよ!」
赤髪のメイドファーストが文句を言いながら死んだ近衛師団の兵士の身体を変形させる。
室内にはゴキゴキと嫌な音が響いていた。
デランの息子ソウタの死体を偽装する為にかなり無理矢理に変形させている。
「あらあら、ファースト……大変だったのは同情しますけど、正直貴女が羨ましいのよ? 他の隊員も、殆どエントン王国の城から出さしてもらえないのに……ずるいわ」
茶髪のメイドセカンドも死体を変形させ、デランの妻ユリの死体を作っていた。
「ふ、ふん? そりゃぁ……まぁ、私が暗部部隊で序列1位ですし? 当然と云えば……当然なのかな? えへへ、メリー隊長も私を特別扱いしてくれてるのかな? じゃあ、頑張ろっかな~」
少し煽てただけで機嫌を直した同僚を内心でチョロいと考えていたセカンドは、デランの死体を作るのに適した死体が無いことに気づく。
「ん~……あ! 良いのがあったわ、サードが残しておいてくれたのね。 助かるわ~」
「だ……だずげでぇ……ぐえっ!?」 ゴキッ!
床で死ねずに呻いている全裸のカエサルを見つけたセカンドは、まるで床に落ちた花を摘み取るように躊躇無くカエサルの首を圧し折った。
こうして、本来の未来ではデラン一家を惨殺していた爽やかイケメンカエサルは苦しみ抜いて人知れず死んだ。
重い黒檀の重鎧を物ともせずに全力で自宅へと帰ってきた。 玄関の灯りはついており、異変が無いように思ったが扉が少し開いたままなのに気づき急いで大斧を構えたデランは扉を慎重に開けた。
「ユリ! ソウタ! 良かった、無事か!」
最初に目に入ったのはソウタを抱きかかえた妻の姿だ。 思わずデランは安堵し駆け寄ろうとしたが、青ざめた妻の視線の先を確認するとその光景に固まった。
「あが?! あがぎぎぐ!? ぎぎぎぎがぁぁ!」
苦悶か苦痛か分からぬ程に呻く近衛師団団長カエサルが全裸で座っており。 そして、呻くカエサルの頭に手を突き刺しているのも近衛師団団長の鎧を着たカエサルだった。
「カエサルが2人!? ユリ、どうなっているんだ!?」
思わずデランがユリに問うと、我に返りようやくデランに気付いたユリとソウタが駆け寄ってきた。
「あなた! それが、私達にもわからないの。 突然、玄関に近衛師団の団長を名乗る人が来たと思ったら剣を抜いて襲ってきて……そしたら天井から可愛いメイドさんが降りてきたの」
デランは妻が何を言っているのかさっぱり理解が出来なかった。
「父上、メイドの女の子が助けてくれたみたいなんだ! でも、何かをし始めたら身体が変わって襲ってきた奴と同じになったんだよ!」
息子が言っている事もさっぱり理解が出来ない。
「つまり……今、呻いているのが本物で何かをしているカエサルが元々はメイドだった? いや、すまん……分からん!!」
デランの頭は混乱し、状況を説明されても全く分からない。 とりあえず、先程助けられたメイドの事を考えるとカエサルに変化したというメイドは味方なのだろう。
状況はさっぱりだが、無事だった喜びを3人で分かち合っていると、全裸のカエサルが鈍い音を立てて床に倒れた。
「あ……あが」
頭に手を突き刺された全裸カエサルはそれでも死ねないのか、苦悶の表情のまま小さく呻いている。
「すみません~皆さん。 お待たせしました~、記憶をコピーするのって凄く凄く大変なのです~。 初めまして~エントン王国マリ女王さんから皆さんをお助けするように言われましたサードと申します~。 こう見えてメイドさん何ですよ~?」
鎧を着た方のカエサルが立ち上がり、サードはカエサルの声で何とも力の抜ける挨拶をした。
普段のカエサルを知っていたデランからすると、非常に不気味だ。 爽やかイケメンで、権力を持つ女貴族達からもモテたカエサルは絶対にそんな言い方はしないからだ。
だが、どう見ても近衛師団団長のカエサルにしか見えない。
「先ずは……妻と息子を助けてくれた事感謝する。 だが、すまない……一体全体何が起きてるんだ?」
全裸で倒れるカエサルの方をデランが見ている事に気付いたサードは微笑んで答える。
「はい~、其処のゴミさんですね~。 マリ女王さんが皆さんを無事に逃がす為に~まだ近衛師団団長が居なくなるといけないって言われまして~。 なので~、私が近衛師団団長カエサルになることになりましたの~」
くねくねと動きながらサードは説明するが、見た目はカエサルなのだ。 デランは気味が悪くて仕方がなかった。
「そもそも、何故私達が近衛師団に襲われたのか分からないんだが!? それに……変装が必要なのは分かったがさっきまでしていたのは何だ?」
「はい~、さっきまでのはゴミさんの記憶や性格に仕草等をコピーしていました~。 なので~、これで私が偽物のカエサルと気付ける人間は居ないでしょうね」
会話の途中に突然普段のカエサルと同じ口調になった事にデランは衝撃を受けた。
「あ、あり得ない……だが、確かに佇まいも仕草も口調も同じだ。 先程の光景を見ていなければ、本物だと言われても信じるだろうな」
「ありがとう、デラン殿。 それより、そろそろ移動しようか。 私の仲間が3人の死体を偽装させる手筈となっている。 付いてきてくれ」
完全にカエサルとなったサードが3人を安全な場所へと誘導を促す。
「よろしく頼む、さぁ2人共必要な物だけ持ちなさい。 サード殿、何故このような事になったか、後で説明をお願いしたいのだが」
「当然です。 安全な場所で今後の話をしましょう」
サードに連れられて3人は夜の街に消えていった。
◆◇◆
デラン達が消えて数分後。
デランの自宅にはファーストとセカンドの姿があった。
「もう! 少し前に目茶苦茶な任務をさせたのに、直ぐに帝国に来いだなんて、メリー隊長は人使いが荒すぎるのよ!」
赤髪のメイドファーストが文句を言いながら死んだ近衛師団の兵士の身体を変形させる。
室内にはゴキゴキと嫌な音が響いていた。
デランの息子ソウタの死体を偽装する為にかなり無理矢理に変形させている。
「あらあら、ファースト……大変だったのは同情しますけど、正直貴女が羨ましいのよ? 他の隊員も、殆どエントン王国の城から出さしてもらえないのに……ずるいわ」
茶髪のメイドセカンドも死体を変形させ、デランの妻ユリの死体を作っていた。
「ふ、ふん? そりゃぁ……まぁ、私が暗部部隊で序列1位ですし? 当然と云えば……当然なのかな? えへへ、メリー隊長も私を特別扱いしてくれてるのかな? じゃあ、頑張ろっかな~」
少し煽てただけで機嫌を直した同僚を内心でチョロいと考えていたセカンドは、デランの死体を作るのに適した死体が無いことに気づく。
「ん~……あ! 良いのがあったわ、サードが残しておいてくれたのね。 助かるわ~」
「だ……だずげでぇ……ぐえっ!?」 ゴキッ!
床で死ねずに呻いている全裸のカエサルを見つけたセカンドは、まるで床に落ちた花を摘み取るように躊躇無くカエサルの首を圧し折った。
こうして、本来の未来ではデラン一家を惨殺していた爽やかイケメンカエサルは苦しみ抜いて人知れず死んだ。
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