[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

文字の大きさ
101 / 231

第99話 ドナドナ再び

しおりを挟む
 「ありがとう、此処からは1人で行くね」 

 「マリ陛下、どうかメリー隊長をお願いします」

 「隊長きっと凄く怒ると思いますが、私達の大事な隊長何です」

 「ほんとにごめんね~陛下さん~。 メリーちゃんの無事確認したら直ぐに助けに行くね~」

 「すまねぇ、隊長を頼む!」

 「マリ陛下の事誤解してたっす。 必ず助けに行くっすから、隊長をお願いっす!」

 マリは深く頭を下げるファースト達に挨拶し、帝都の門へと歩く。

 地下都市からの脱出路は帝都の外までの道しか残っておらず、わざわざ一度出てから帝城へと向かうことになったのだ。

 マリの背中を見送った戦闘員の5人は、外からでも見える悪趣味な黒檀で出来た帝城を睨みつけていた。

 「皆、この醜態……必ず拭いましょう」

 「「「了解」」」 「了解さんよ~」

 ◆◇◆

 マリは大きな正門の前にやって来た。

 既にマリを視認した衛兵達は殺気立ちながら近付いてくる。

 「貴様、元エントン王国女王のエントンフォルマリだな! 帝城から姿を消したと聞いていたが……おめおめと戻って来るとは!」

 手に持つ槍をマリに突き出し、衛兵達は今にも刺し殺す勢いだ。

 「あはは~……あれ? 私って一応、特別改革大臣何ですけど? 一応、偉いんですけど?」

 白を切り精一杯見栄を張ったが、残念ながら衛兵達の感情を逆撫でする結果となる。

 「ふ、ふざけるな! その恩義に報いずに、キャベル女皇帝陛下を殺害しておいて何を抜かす! おい! この女を確保し帝城に連行しろ!」

 衛兵達にマリは両手を掴まれ、そのまま帝城へと連れて行かれる事となった。

 道中怒れる民衆から罵詈雑言を吐かれるが、正直な所女皇帝殺害等身に覚えのないマリにとってはどうでもいい事だ。

 むしろ、既に帝都にいる民達をマリは見捨てている。

 奴隷の様に扱っていた下民達が居なくなり、今後食料に困ること等知った事では無いのだ。

 「あ~~れ~~、またドナドナなの? って、痛い! 優しく優しくお願いーー!」

 ◆◇◆

 マリは帝城まで連行され、あれよあれよの内に大広間へと到着した。

 「新皇帝陛下、先代女皇帝陛下を殺害し逃亡していたエントン フォル マリを捕らえましたので連行致しました!」

 連行した衛兵が跪く。

 マリは両手を縛られ、両サイドに近衛兵が槍を持ち見張っている。 もし逃亡を図れば即座に処刑されるだろう。

 衛兵が跪いた先には偉そうに座っている新皇帝アバンが頬杖をついてマリを見下していた。

 「ふんっ! 良くも母を殺害しておめおめと戻って来たな。 この愚か者目が! この俺様からエナを奪い、母まで奪うとは万死に値するぞ!」

 立ち上がり、はためかせた無駄に豪華なマントが全く似合っておらず、マリは思わず笑う。

 「ぷっ……似合わな過ぎじゃない?」

 小声で呟いた筈だが、どうやら本人にも自覚があるのか顔を真っ赤にして激怒し始めた。

 「おい! 母を殺害したこの重罪人をさっさと殺せ! 首を母の墓前に飾ってしまえ!!」

 「やば……まさか、速攻で死刑なの?」

 アバン皇帝の命令で、両サイドに立つ近衛兵が槍をマリに向けて構える。

 「殺せ! 早く殺せぇぇぇぇぇ!」

 アバン皇帝が叫ぶ。

 「その処刑待たれよ!!」

 槍がマリに突き刺さろうとした瞬間、大広間に制止する声が響いた。

 「なっ!? ブラック宰相閣下、アバン皇帝陛下の命に異議を申し立てるおつもりか!」

 制止させたブラックを咎めるのは近衛師団副団長のピレンだ。 団長のカエサルが突然失踪し、副団長のピレンが現在近衛師団の指揮を採っている。

 「黙れ、小僧。 新アバン皇帝陛下、お怒りはご尤も。 ですが、計画通りにすべきかと。 でなければ……あの御方が」

 猛禽類の様な目で睨まれたアバンは、凄まじい小物っぷりを発揮し身体をガタガタと震わせた。

 「そ、そそそうであったな。 処刑はちゅ、中止だ! い、今はな! 後日、エントンフォルマリをキャベル女皇帝殺害と不正していない無実の貴族達に心労を課した罪で処刑とする。 ろ、ろろろろろ牢屋に連れて行けぇぇぇ!」

 唾を撒き散らし、叫ぶアバンを見てマリは溜息を吐いた。

 あり得ない程の速度でアバンが皇帝になっている時点でお察しだが、どうやら全ては黒い妖精ティナが糸を引いているようだ。

 そもそも、女皇帝しか存在しない帝国で先代が崩御した瞬間に男のアバンが何の違和感も無く皇帝になれる筈が無い。

 恐らくこのヘタレはティナ達に唆され、殺したのだろう。

 信頼する配下の命よりも息子を優先してくれた実の母親を。

 「はぁ……いや、キョドり過ぎでしょ? ねぇ、親殺しのヘタレ君。 絶対に後悔するからね」

 キャベルはマリにとって確かに敵だった。

 それでも憎めない所が有ったのは事実だ。 愛した息子に殺されるとは思っても無かっただろう。

 連行されるマリが放った捨て台詞を、アバンは真っ赤な顔で押し黙って見送った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

処理中です...