[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

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第100話 メリーの正体

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 「あの~? 牢屋って地下だよね? なして……ずっと廊下を進むの?」

 絶賛連行中のマリは何故か牢屋では無く、長い廊下を歩かされていた。

 両サイドの近衛兵は無機質に歩き続ける。

 暫く歩いた先の部屋で近衛兵は止まり、黙って扉を開けた。

 そして、部屋の様相を見たマリは気付く。

 この扉の先の部屋はクロモトの工房だと。

 「うわ~……良い予感はしないね。 ごめん、因みに誰かお酒持ってない? 緊張ほぐしたいんだけど」

 残念ながら、マリを連行した近衛兵から酒が出されることはない。

 ただ、黙々と部屋の奥へと進む。

 マリと衛兵達が近付くと隠し扉が開き薄暗い更に奥へと進んだ。

 明るい部屋に到着すると、椅子に座っていた老人が立ち上がる。

 「ひゃひゃひゃひゃ、ようこそぉ! 待っていたぞ~お嬢ちゃん」

 クロモトが両手を広げマリを歓迎する。

 最悪なのは、クロモトの後ろに1体の不気味な人形が待機している事だ。

 強いファーストすら死を覚悟する相手なのだ。 
 マリなら数秒と保たずに死ぬだろう。

 「げっ、やっぱりか……ねぇ、メリーさんは無事なの?」

 「ひゃひゃひゃひゃ、あの御方から殺すなと厳命されておるからな。 可愛い人形ちゃん達、連れておいで」

 いやらしく笑うクロモトに問うと、隣の部屋から2体の人形に両手を引きずられたメリーが連れて来られた。

 「マリ……陛下、何故……何故戻って来たのですかっ!」

 マリの前に降ろされたメリーが叫ぶが、マリはそれどころでは無い。

 メリーの身体はズタズタだった。

 ほんの数時間前に別れた時には傷一つ無かった美しいメリーが。

 「……ごめんね、メリーさん」

 「陛下の……せいではございませんっ! ぐっ?! はぁ……はぁ……早く、早くお逃げ下さい!」

 謝るマリを逃がそうと、メリーは震える足を無理矢理立たせ人形達に対峙しようとする。

 「いいの。 私がメリーさんに無理なお願いしたんだから……それに皆にも頼まれたんだ~」

 マリはメリーを落ち着かせるように後ろから抱きしめる。

 「陛下……?」

 「ねぇ、クロモト。 私が来たら、メリーさんは解放してくれるんだよね?」

 メリーの目が見開き、傷だらけの身体に力を込めたせいで様々な所から血が吹き出る。

 「ダメです、ダメです陛下! 貴女にはやるべき事がある筈です!」

 「大丈夫、大丈夫だよメリーさん。 落ち着いて、大丈夫」

 マリは優しく微笑み、メリーを宥める。

 「ひゃひゃひゃひゃ、あの御方から言われているからのぉ。 目的のお嬢ちゃんが来たなら解放するようにと」

 クロモトが後ろに控えさせた人形を四つん這いにさせ、その上に腰掛ける。

 悪趣味な光景だが、マリは嫌悪するのを必死に我慢した。

 「そっか、本当に私の首がティナの目的に必要なんだね。 それなら早く解放してあげてくれない? メリーさん凄く痛そうだから」

 「勿論じゃよ。 傷は……どうせ直ぐ治るんじゃろ? のぉ……化け物よ」

 クロモトがジロリとメリーを睨む。

 しかし、マリはメリーの前に立ち後ろに隠した。

 「気になってたんだけど、何でメリーさんの事を化け物なんて言うのかな? もしかして、クロモトって鏡見たこと無いの? 分かった! 目が腐ってるんだ!」

 怒りが限界に達し始めたマリの侮辱にクロモトは顔を顰めたが、直ぐに嫌な笑みに戻る。

 「ひゃひゃひゃひゃ、口が達者なお嬢ちゃんじゃなぁ。 そうじゃ! 解放する前に、冥土の土産としてお嬢ちゃんにその化け物の正体を教えてやろう!」

 クロモトの発言に、メリーは見るからに動揺し始めた。

 「陛下、陛下お願いです……。 聞かないで下さい!」

 メリーの懇願虚しく、クロモトが高らかに叫んだ。

 「ひゃひゃひゃひゃひゃ! そのピンクの化け物の正体は魔族じゃよ! 太古の昔、世界を滅ぼそうとした悪しき種族! 御伽話等では無く、実在する人間の敵! 滅ぼさねばならぬ化け物なんじゃよ! ひゃひゃひゃひゃひゃ!」

 秘密を知られたメリーは膝から崩れ落ち、マリの反応に怯えた。

 「え? それだけ? じゃあ、早くメリーさん解放してくれるかな」

 しかし、マリの反応は凄まじくあっさりとしており。これには、クロモトもメリーも呆気にとられた。

 「いや、メリーさん凄い顔してるけど。 普段の何でも有りな所見てたらむしろ納得だからね? 逆に私、何で今まで気付かなかったのかなって自分に驚いてるよ!」
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