[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

文字の大きさ
120 / 231

第118話 見えない襲撃

しおりを挟む
 「もうそろそろ最後尾が見える頃でさぁ!」

 黒騎士達の先導で大砦に向かうマリ達は514名誰一人欠ける事無く関所を後にしていた。

 「陛下大丈夫ですか? 今でしたら休憩も可能かと」

 「んーん、ありがとうメリーさん。 大丈夫」

 ジャックの膝の上に帰ってきたマリは疲れからか顔色が悪い。

 「色々あったから少し疲れただけだと思う……大丈夫だよ」

 「……分かりました。 大砦が味方の手に落ちれば休む時間もあるでしょう。 今暫しのご辛抱下さい」

 「陛下の事は任せてくれ。 先頭の黒騎士の所へ頼む」

 ジャックにも言われ、メリーは先頭へと移動する。
 今は前も後ろも黒騎士達が警戒しながら馬を進めてくれている為、メリー達は列の中心でひと息つきながら移動出来ていた。

 「マリ様は大丈夫ですかい?」

 「処刑される寸前でしたから……疲労困憊なのは当然です。 あの陛下が一度もお酒を飲みたいと言いませんでした。 ……急いだ方がいいです」

 「分かりやした。 もう少し速度を上げやしょう」

 この隊の指揮官である黒騎士は部下達に指示を飛ばし、馬を早めた。

 ◆◇◆

 暫く進むと、前方に大勢の民達が黒騎士達に護衛されエントン王国に向けて逃げている列に追い付いた。

 「お!? 副団長どうしたんですかい!?」

 列の後ろに居た黒騎士が馬を走らせ此方にやって来た。
 どうやら決死の防衛戦をしようとしていた隊の指揮官は黒騎士団の副団長だったようだ。

 「はっはっは! 色々あってな。 マリ様の恩情で防衛戦は中止にされちまったのさ。 関所はエルフの旦那が見事な魔法で馬鹿でかい山にしてくれたから、当分追手の心配はねぇとよ!」

 「じゃあ、残った奴等は全員?」

 「あぁ、無事だ。 おいおい何だよ泣くなよ、最強の黒騎士団の名が泣いてんぞぉ」

 もう会えないと覚悟した仲間達に再開出来たからか、合流した黒騎士達は涙を流していた。

 ジャックに持たれ掛かった状態のマリはその光景を見て、自分の判断がきっと間違っていなかったと噛みしめる。

 (うん、やっぱり止めて良かったなぁ。 ん~? やっぱり何かおかしいな……身体から力が抜けてる……?)

 「陛下!? マリ様?! メリー! メリー来てくれ!」

 突然意識を失ったマリをジャックは慌てて抱きとめメリーを呼んだ。

 黒騎士達もざわめき、メイド暗部部隊達は敵襲かと周囲の警戒にあたる。

 「陛下どうされましたか!? ……これは、何?」

 ジャックがマリを馬から下ろし、メリーが直ぐ様駆け付けマリの状態を確認する。

 すると、意識の無いマリの瞳が黒く光始める。

 マリの額には滝のような汗が流れ、明らかに異常事態だ。

 メリーとジャックは理由が分からず慌てていると、ヨハネも馬から降りて走ってきた。

 「マリ!! これは……!? メリー、帝都で何があったんだい?」

 「キサラギ、陛下に何が起きているのか分かるのですか!?」

 「原因は分からないが、これは呪いだよ。 それもかなり強い……堕ちた精霊の強い呪いだ」

 ジャックには思い当たる節はないが、メリーにはあった。

 「キサラギ、信じるかどうかは別として聞いて下さい。 陛下はゴルメディア帝国に連れられた際に、大砦に幽閉されていたエナという少女から未来を見る目の力を受け継ぎました」

 「……その少女は?」

 「陛下に未来を託した後に息を引き取りました」

 メリーの悲痛な顔を見る限り事実なのだろうとヨハネは何故か残念そうな顔をした。

 「そうか……それで?」

 「帝都には妖精が居たのです」

 メリーの言葉を聞き、ヨハネの顔色が変わる。

 「まさか、伝説の妖精ティナかい?!」

 「当初は陛下に友好的だった筈です。 私の事も……陛下の側に居る事を許してくれました。 それに、陛下曰く未来を見るのを手伝ってくれてたそうです」

 メリーはマリとの会話を思い出しながら話す。

 「ですが、突然陛下が妖精ティナは敵だったと言ってました。 実際に私も見えない存在に襲われ拉致されています。 声を聞く限りは妖精ティナでしたが、その声には悪意が満ちていて……」

 「世界の均衡を守る伝説の妖精とは思えなかったって事だね?」

 頷くメリーを見てヨハネは頭を回転させる。

 「あの処刑台にいた精霊が混じった存在が……妖精ティナだった? 何があったかは分からないが、すべき事はわかったよ」

 「本当ですか!? 陛下は助かりますよね?!」

 メリーの問いにヨハネは笑う。

 「この呪いは術者が側で術を掛け続けなければならないのさ。 つまり……近くに居るって事だね」

 ヨハネの言葉にメリーとジャックは周囲を見渡す。

 「あはは、無理だよ。 私にしか見つけられないだろう……マリを頼む。 ジャック、メリー」

 「ヨハネ……? 貴様、何を言っている」

 「マリに怒られるかもしれないけど、このままだと数時間もすればマリは死んでしまう」

 「ならば、私達メイド暗部部隊も戦います」

 「ダメだよ。 すまない、精霊との戦いに君達は足手まといになる」

 ヨハネは苦しむマリの頬を優しく撫でてから立ち上がり、馬に騎乗した。

 「できる限り術者を足止めする。 メリー達は急いで大砦に向かってくれ。 離れたら状態は良くなる筈だ。 ……マリを頼んだよ」

 「ヨハネ、必ず生きて帰れ。 陛下は貴様の死を望んでいない!」

 「キサラギ……どうか、お願い」

 「任せてくれ。 それに、死ぬつもりは無いさ。 やっと最愛の人に再開出来たんだからね」

 ヨハネは来た道を1人戻る。

 明らかに罠だと知りながら、長い人生で1番大切だと思える恋人を助ける為に。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~

八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。 しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。 それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。 幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。 それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。 そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。 婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。 彼女の計画、それは自らが代理母となること。 だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。 こうして始まったフローラの代理母としての生活。 しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。 さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。 ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。 ※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります ※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

処理中です...