[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

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第125話 光の精霊

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 「失礼します。 ジャック、陛下はどうですか?」

 「メリー! ヨハ……税務官殿、無事で何よりだ。 陛下の容態だが、目の黒い靄が消えた。 顔色も少し良くなって来ている」

 メリーがヨハネを背負ってマリが居る部屋に入る。 
 ベットに寝かされたマリの手をジャックは握りながら汗を拭いていた。  

 ジャックの言う通り、1番酷い時より体調は良くなっているようだ。 マリも苦しむ様子も無く、ただ眠っている様に見える。

 「ふふ、また会えて嬉しいよ友よ。 マリ……良かった、時間を稼いだかいがあったよ」

 メリーに下ろされたヨハネがマリの頬を優しく撫でる。
 ヨハネはマリの寝息を聞くだけで、鈍い痛みも吹き飛んでいく。

 「キサラギ、陛下はこのまま大砦に居れば良くなりますか?」

 メリーの問いにヨハネは首を横に振った。

 「いや、私達が飛んだ先は堕ちた光の精霊にバレている。 また接近されれば、マリの呪いはまた強くなるだろう」

 「くそ! じゃあ、このままエントン王国まで休まずに逃げれば陛下は助かるのか? だが、もし陛下に呪いを掛けた奴がエントン王国まで来たらどうしようもないじゃないか」

 「落ち着きなさいジャック。 ねぇ、キサラギ。 堕ちた光の精霊って……どういう事なの? アレは妖精じゃないって事?」

 ヨハネは椅子に座り、話し始めた。

 「ふー……まず、マリが出会ったのは間違い無く妖精だろう。 だが、中に堕ちた光の精霊が混じってる。 光の精霊っていうのは、精霊達の中でも最上位の存在なんだ。 他の精霊は魔力のある場所なら幾らでも存在する。 だが、世界を照らす光と闇の精霊は1体づつしか存在しない」

 「堕ちたっていうのはどういう意味何だ?」

 「そうだね。 ん~……人間にも善人と悪人がいるだろ? 精霊は基本的に善なる存在だ。 しかし、怒り悲しみ嫉妬等の負の感情を蓄積し過ぎると悪へと変わる。それを精霊魔法を使用するエルフ達は堕ちたと言うのさ」

 「つまり、世界に1体しかいない強力な光の精霊が堕ちた挙げ句……何故か精霊の更に上の存在である妖精と混じったってこと……?」

 メリーはヨハネの話を聞き顔を青ざめる。
 状況がどれだけ最悪なのか悟ったからだ。

 「そうだね。 妖精が何をしたのかは分からない。 だが、自分の意思でも無い限り身体に精霊が混じる等あり得ない」

 「そいつは……倒せないのか?」

 「すまないジャック……アレは無理だ。 それこそ、対となる存在である闇の精霊を味方にすれば話は別だが……居場所が分からない」 
 
 「待って下さい。 そういえば、陛下が書いた遺書に……ありました。 最北の地で闇の精霊を探せと……陛下は何故知っていたのでしょう……?」

 メリーが懐から取り出したのは、マリがファーストに預けた遺書だ。 ジャックとヨハネはマリの書いた遺書を苦しい顔で読む。

 「最北か……遠すぎるね。 だが、良いことが分かったよ」

 「何だ? 早く言え」

 「ふふ、最北に闇の精霊が居るのなら間違い無く光の精霊は最南であるゴルメディア帝国を出れない。 つまり、エントン王国までアレは来れないって事さ」

 ジャックに急かされたヨハネが答えた事は、メリーとジャックに希望をもたらせた。

 「分かりました。 キサラギ、貴方の言葉を信じます。 ジャック、陛下を移動させる準備をしておいて。 この大砦には馬車が数台ありました。 それに乗って陛下だけ先に逃がしましょう」

 メリーは話が決まった瞬間に動き出す。  

 こうしている間にも、マリに呪いを掛けたルミニスが迫って来ているかもしれないのだ。

 「分かった、直ぐに取り掛かる。 おい、税務官殿。 お前も陛下と同じ馬車に乗ってもらうからな」

 「待ってくれ、確かに私は判断ミスをした。 だが、この大砦には多くの亡命する民達が避難したばかりだ。 マリはきっと、民達を置いて逃げるのを喜ばない。 それなら、私が残って少しでも守りたい」

 ヨハネの言葉にメリーとジャックは耳を貸さない。

 「ダメですよ、キサラギ。 治療が終えたと言っても貴方は重傷なのに変りはありません」

 「そうだ、貴様の意見等もう聞かん。 意識のない間に恋人が生死を分けた戦いをしていたと知った時の陛下の事を考えろ」

 2人にフルボッコにされたヨハネは反論するのを諦めた。

 「分かったよ……君達2人の意見が正しい。 だが、此処の防衛はどうするんだい? 私達が抜けて大丈夫なのかい?」

 「愚問ですよキサラギ。 此処には我等がエントン王国最強の赤い死神と元ゴルメディア帝国最強の黒騎士団が居るのです。 民達が休み、エントン王国に避難するまで必ずや守り抜いてくれるでしょう」
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