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第202話 最後の戦いの前触れ
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エントン王国の国境に亡命する帝国民達が殺到し始めて4日目。
国境近くの大砦では傷だらけのルニア侯爵が休息を取っていた。 其処に定期連絡をしに部下が訪れる。
「ふぅ……どうだ、あれから動きはあるか?」
「はっ! 亡命を希望する帝国民達が見えなくなると、精霊人形達は引き上げて行きました!!」
「なるほどな。 命令はやはり、逃げ出した帝国民達を皆殺しにせよ……とかだろうな。 本番はこれからか」
「現在、デラン殿率いる黒騎士団が偵察を行っております!」
「ご苦労。 お前も休める時に休め。 私は陛下の下に向かう」
ルニアは包帯を巻き直し、傷だらけの鎧を身に纏った。 そして、部屋を出てルーデウスの下へと向かう。
「失礼します、おはようございます陛下。 援軍はどうなりそうですか?」
司令室に入ると、ルーデウスや息子のルカ達が会議をしているが異様に空気が重たい。
「おはようございます、ルニア侯爵殿。 先程、大臣ルカから報告が有りました……ルル殿と通信が取れたと」
「そうですか! もしや、援軍が遅れるのですか? まだまだ私達も戦えます。 ご安心めされよ」
表情の暗いルーデウスを励ますが、その顔は暗く悲痛だ。
「……マリ様に何かあったのですか」
察したルニアは言葉を絞り出す。
ルーデウスは口を開くが、声にならないのか喋る事が出来ない。 ただ、悲痛に顔を歪め必死に泣き叫ぶのを我慢しているかの様だ。
「母上……これはこの後に全軍へと知らせる事ですので、しっかりと聞いて下さい。 マリ様が例のルミニスに殺されました」
「……は?」
ルニアは息子の言葉を信じられず、ルーデウスを見ると耐えられなくなり涙をポロポロと溢していた。
「何故だ、何があったんだ!!」
「落ち着いて下さい、母上。 マリ様の頭の中に紛れ込み、マリ様の精神を殺害し身体を乗っ取ったそうです。 俄には信じられませんが……事実です」
「マリ様が……死んだだと? おのれぇ……ルミニス!!」
ルニアは拳を握り締め、食い込んだ所から血が滴り落ちる。
「ですが、朗報もあります。 マリ様は、ルミニスに殺される前に魔族達と我等との間を取り持ち手を取り合う事に成功したそうです。 現在、約1万の魔族達と亜人の共有領土に向かっており、其処で亜人の軍勢も合流すれば1万6000の援軍が到着する事になります」
「1万6000か……大きいな。 現在の我が軍が総勢1万5000……合わせて3万1000か。 それでも相手は話しに聞く限り、50万の精霊人形。 この数日で1万程倒したので、後49万体か……陛下、簡単に諦めてマリ様の残した想いを無駄には出来ませぬな」
こめかみに青筋を立てたルニア侯爵の言葉に、涙を拭ったルーデウスが頷く。
「ぐす……はい! その通りです! 姉上の意思を引き継ぎ、王国を守る為には皆の力が必要になります! ルニア侯爵殿……どうかその命、私と一緒に使って頂きたい!」
「勿論です陛下。 我等一同、王国を守る為に命を惜しむ者等居ません! やりましようぞ!」
「母上、それに陛下も落ち着いて下さい。 この数日で此方の被害もそれなりに出ていますし、何より母上は亡命する民達を庇いかなりの手傷を負っている筈です」
ルカの冷静な進言に、ルニアは顔顰める。
「コレぐらい問題は無い。 それと、他の同盟国からは通信は無いのか?」
ルニアは血の滲んた包帯を隠し、誤魔化すように問う。
「勿論有りますよ。 ですが、状況は良く有りません。 亡命を求める民達は膨大な数です。 エントン王国以外にも逃げた様で、精霊人形達と交戦したとウルフ王国、ウッド王国、レオン王国から通信が有りました。 かなりの被害が出た様ですが、なんとか撃退したと。 援軍には期待出来ないでしょう」
「後ろに回り込まれないだけマシだな。 キャット王国とドック王国は?」
「正直戦う力はもう2国には残されていません。 自国の防衛に専念する様に、キャミ様とドーラ様に伝えてもらいました」
「ピッグ共和国は無事なのだな? 其処からは援軍は来ないのか?」
「……厳しいでしょう。 距離が有りすぎます。 それに、共和国の女王陛下には近くのレオン王国に援軍を出すように願いましたから」
「分かった、ルカ……最後まで役目を果たすのですよ。 陛下、私は大砦の守備に入ります。 準備が出来ましたら……マリ様の事を皆に伝えて下さい」
「分かりました。 よろしくお願い致します」
司令室を出て守備に向かったルニアに、ルーデウスは頭を深々と下げた。
「ルカさん……すみません」
「良いのです。 母はそういう人です。 あれでも……死んでもおかしくない怪我をした事を本当に隠せていると思っているのですよ。 ならばこそ、母の覚悟に応えねばなりません」
「えぇ、行きましょう。 姉上の仇……必ずとってやります!」
ルーデウスとルカは外へと向かう。
兵士達にマリの死を伝え、怒りを悲しみを力に変える為に。
もうじき、始まるのだ。
最後の戦いが。
国境近くの大砦では傷だらけのルニア侯爵が休息を取っていた。 其処に定期連絡をしに部下が訪れる。
「ふぅ……どうだ、あれから動きはあるか?」
「はっ! 亡命を希望する帝国民達が見えなくなると、精霊人形達は引き上げて行きました!!」
「なるほどな。 命令はやはり、逃げ出した帝国民達を皆殺しにせよ……とかだろうな。 本番はこれからか」
「現在、デラン殿率いる黒騎士団が偵察を行っております!」
「ご苦労。 お前も休める時に休め。 私は陛下の下に向かう」
ルニアは包帯を巻き直し、傷だらけの鎧を身に纏った。 そして、部屋を出てルーデウスの下へと向かう。
「失礼します、おはようございます陛下。 援軍はどうなりそうですか?」
司令室に入ると、ルーデウスや息子のルカ達が会議をしているが異様に空気が重たい。
「おはようございます、ルニア侯爵殿。 先程、大臣ルカから報告が有りました……ルル殿と通信が取れたと」
「そうですか! もしや、援軍が遅れるのですか? まだまだ私達も戦えます。 ご安心めされよ」
表情の暗いルーデウスを励ますが、その顔は暗く悲痛だ。
「……マリ様に何かあったのですか」
察したルニアは言葉を絞り出す。
ルーデウスは口を開くが、声にならないのか喋る事が出来ない。 ただ、悲痛に顔を歪め必死に泣き叫ぶのを我慢しているかの様だ。
「母上……これはこの後に全軍へと知らせる事ですので、しっかりと聞いて下さい。 マリ様が例のルミニスに殺されました」
「……は?」
ルニアは息子の言葉を信じられず、ルーデウスを見ると耐えられなくなり涙をポロポロと溢していた。
「何故だ、何があったんだ!!」
「落ち着いて下さい、母上。 マリ様の頭の中に紛れ込み、マリ様の精神を殺害し身体を乗っ取ったそうです。 俄には信じられませんが……事実です」
「マリ様が……死んだだと? おのれぇ……ルミニス!!」
ルニアは拳を握り締め、食い込んだ所から血が滴り落ちる。
「ですが、朗報もあります。 マリ様は、ルミニスに殺される前に魔族達と我等との間を取り持ち手を取り合う事に成功したそうです。 現在、約1万の魔族達と亜人の共有領土に向かっており、其処で亜人の軍勢も合流すれば1万6000の援軍が到着する事になります」
「1万6000か……大きいな。 現在の我が軍が総勢1万5000……合わせて3万1000か。 それでも相手は話しに聞く限り、50万の精霊人形。 この数日で1万程倒したので、後49万体か……陛下、簡単に諦めてマリ様の残した想いを無駄には出来ませぬな」
こめかみに青筋を立てたルニア侯爵の言葉に、涙を拭ったルーデウスが頷く。
「ぐす……はい! その通りです! 姉上の意思を引き継ぎ、王国を守る為には皆の力が必要になります! ルニア侯爵殿……どうかその命、私と一緒に使って頂きたい!」
「勿論です陛下。 我等一同、王国を守る為に命を惜しむ者等居ません! やりましようぞ!」
「母上、それに陛下も落ち着いて下さい。 この数日で此方の被害もそれなりに出ていますし、何より母上は亡命する民達を庇いかなりの手傷を負っている筈です」
ルカの冷静な進言に、ルニアは顔顰める。
「コレぐらい問題は無い。 それと、他の同盟国からは通信は無いのか?」
ルニアは血の滲んた包帯を隠し、誤魔化すように問う。
「勿論有りますよ。 ですが、状況は良く有りません。 亡命を求める民達は膨大な数です。 エントン王国以外にも逃げた様で、精霊人形達と交戦したとウルフ王国、ウッド王国、レオン王国から通信が有りました。 かなりの被害が出た様ですが、なんとか撃退したと。 援軍には期待出来ないでしょう」
「後ろに回り込まれないだけマシだな。 キャット王国とドック王国は?」
「正直戦う力はもう2国には残されていません。 自国の防衛に専念する様に、キャミ様とドーラ様に伝えてもらいました」
「ピッグ共和国は無事なのだな? 其処からは援軍は来ないのか?」
「……厳しいでしょう。 距離が有りすぎます。 それに、共和国の女王陛下には近くのレオン王国に援軍を出すように願いましたから」
「分かった、ルカ……最後まで役目を果たすのですよ。 陛下、私は大砦の守備に入ります。 準備が出来ましたら……マリ様の事を皆に伝えて下さい」
「分かりました。 よろしくお願い致します」
司令室を出て守備に向かったルニアに、ルーデウスは頭を深々と下げた。
「ルカさん……すみません」
「良いのです。 母はそういう人です。 あれでも……死んでもおかしくない怪我をした事を本当に隠せていると思っているのですよ。 ならばこそ、母の覚悟に応えねばなりません」
「えぇ、行きましょう。 姉上の仇……必ずとってやります!」
ルーデウスとルカは外へと向かう。
兵士達にマリの死を伝え、怒りを悲しみを力に変える為に。
もうじき、始まるのだ。
最後の戦いが。
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