[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

文字の大きさ
210 / 231

第208話 間もなく超巨大新幹線が参ります

しおりを挟む
 無数の黒い触手がルニアを襲うが、手に持つ大剣でそれらを難無く斬り飛ばす。

 「『へ、へぇ! やるじゃなぁぁぁい! アンタ……本当に人間? 何でこんな規格外が居るのよぉぉぉ!』」

 黒の触手を幾ら生み出し、ルニアに向けても一瞬で細切れにされる事にマリは焦り始める。

 しかし、マリは知らない。

 ルニアは身体を無理矢理動かす事で、既に傷口は開き凄まじい出血を鎧の中で流していた。   

 それを勘付かれない様に、ルニアは己の限界と戦っているのだ。

 「どうした! 所詮は元が羽虫だからか? まるで小蠅の様な攻撃だな! ふははははは!」

 余裕を見せながら、マリの後方に見える味方が大砦に攻撃をしている自動兵器を破壊し始めたのを確認し笑みを浮かべる。

 (耐えれても後、数分といった所か。 ふっ……一矢は報いてやろう!) 
 
 ルニアは地面が抉れるほどに踏み込み、マリに向けて急接近した。 突然の事にマリは驚き、後ろに下がろうとしたが遅い。

 「……しっ!! なっ!」 ルニアの大剣がマリを斬り裂く瞬間、突然マリの表情が醜い笑いから何時もの笑顔に変わった。

 「ねぇ……私を斬るの?」 

 頭では分かっていた。 もう、仕えていた主はこの世に居ないのだと。 マリ様は死んだのだと言い聞かせていたが、ルニアは躊躇ってしまった。

 ほんの一瞬、その一瞬が命取りとなる。 マリの顔は頬まで裂け醜い笑顔に戻り、黒い触手がルニアの胸を貫いた。 そして、マリは別の黒い触手で鎧を剥ぎ取り血だらけのルニアを見て笑う。

 「『あははははは! 騙されたぁ~! どうせ斬られても死なないんだけど、斬られるのは嫌だからさぁ~! あれぇ? どうしたのぉ? 私が殺す前から死に掛けじゃなぁぁあい』」

 「がはぁっ……! ふははは……赤い死神もここまでか」

 力無く触手に宙吊りにされ、そんなルニアを見たマリは良い事を思い付いたとはしゃぎ始めた。

 「『あはぁ~……そうだ、お前の死体をあの大砦に投げ込んで上げるぅ。 そしたら、中に閉じ籠もってる兵士達が絶望するでしょぉぉぉ? あはははは!』」

 マリはルニアを投げる為に、触手をしならせ自身から離した。 すると、ルニアが笑い始める。

 「ふははは! 予想より……早かったじゃないか」

 「『はぁ? 何よ、何でガガガガガガガガッ! この死に損なガガガガガガガガガガッ! さっさと死ガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ! さっきからうっさいわね! 一体何よこの音……は?』」

 けたたましい音を立てながら超巨大新幹線が高速で大砦の周りを囲みそのままマリを吹き飛ばした。

 「『にぎゃぁぁぁぁ?! 何よソレふざけんじゃないわよおぉぉぉぉぉぉ!』」

 ◆◇◆

 マリが吹き飛ばされる少し前。 エントン王国の側を超巨大新幹線が高速で移動していた。

 「アテス、そろそろエントン王国じゃ。 速度を緩めよ」

 「はいは~い、分かってるよ~。 メリーさ~ん? 魔族達の準備はどうだい?」

 アテスは速度を減速させながら、後ろに立つメリーに問う。

 「獣人族の酔冷ましの実を分けて下さったおかげで、全員絶好調ですよ! 本当に感謝します、ラガン殿」

 「大丈夫だ。 これから、最後の戦いだからな」

 「ふふ、そうだね。 今度こそ最後にしないとね」

 ヨハネが減速した景色を眺めながら呟く。

 「アテス殿、向こうに王都が見えました。 進路はあってます! このまま進んで下さい!」

 「了解だよ~!」

 比較的に穏やかな速度で進んでいると、ルルの通信機が鳴り始めた。 ルルは慌てて通信機を取り、恋仲のルカへと呼び掛ける。

 「む?! ルカからじゃ! 減速したおかげで通信が届いたのじゃな……どれ、もしもし? 儂じゃ、ルルじゃ! 聞こえるか、ルカよ! 無事か!」

 『ザザザ……ザザ、聞こえ、ザザザ、母上が、既に父ザザザ、ルルさザザザ……ブツッ!』

 殆ど聴き取れないまま通信は切れてしまい、ルルは真っ青になる。

 「アテス! アテス!! 速度を上げておくれ、頼むのじゃ! 早く!!」

 ルルに急かされたアテスは、もう一度速度を上げる。

 「はいよー! ヨハネ兄! 風の精霊に頼んで先の安全を確認出来ないか!?」

 「短時間しか無理だよ? それでも良いならいけるよ!」

 ヨハネが精霊魔法を発動し、風の精霊に進路上の生き物を確認させる。

 「大丈夫! 人間は居ない!」

 「了解、全速力でいくよーーー!」

 景色が更に加速し、激しい振動音が超巨大新幹線から聞こえ始めた。

 「頼むのじゃ、頼むのじゃ! ルカ! 義母上様、義父上様、どうか無事でいてくれなのじゃー!」

 そして、大砦に着いた時。

 少し減速し、見えた先の光景は乗っ取られたマリが黒い触手で義母である血だらけのルニアを投げようと振りかぶっている所だった。

 「アテス! このまま大砦を囲んで、そのままマリを乗っ取ってるルミニスを轢いてしまうのじゃーーー!!」

 「はっ! いいねぇ! りょうかーーいっ!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

処理中です...