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「アウローラ様、これからどうされるのですか?」
勝手知ったる王城を抜けて庭園に入ると、私について来たシルヴァンは歩きながら尋ねる。
「ヴァン、止めても無駄よ」
「止めませんよ」
「それから。私は雨音よ、ア、マ、ネ!」
「私もヴァンではなく、シルヴァンです」
「……知ってるわよ、私がつけた名前だもの」
ヴァンは、公爵領の孤児院にいた男の子。母に連れられ寄付に訪れては一緒に遊んだり、文字の読めない彼らに絵本の読み聞かせをしていた。その頃はまだ、クリステルは人見知りがあり、孤児院にはたまにしか一緒に来ていなかった。
聖痕が現れるきっかけとなったのは、ヴァンの怪我だ。転んだ私を庇い、額を切ってしまったヴァンを治したくて必死で祈った。
傷口がぱあっと光ると、見る見るうちに治ったのだ。
子供だった私たちは、絵本の聖女と聖騎士の物語に自分たちを重ね、聖女と騎士の誓いごっこをした。
そして、絵本の聖女のように自分だけの騎士に名を与えたのだ。
足を止め、背の高いヴァンを見上げる。
私は聖騎士シルヴァンが、あのヴァンだとすぐに気づいた。けれど、ヴァンは――てっきりクリステルに魅了されていると思っていた。
「まさか、あれが本当に……聖騎士の誓いになっていたとは思わなかったわ」
「ひと目見て、アウローラ様だとわかりました。聖騎士の誓いで与えられた印が、また現れたのです」
私の手を包んだシルヴァンの手の甲には、聖痕と同じ形をした小さな痣が確かにあった。
「だとしても! どうして、クリステルの魅了が効かなかったのに、聖騎士になったの? 私はもういなかったのに――」
「アウローラ様の死の真相を探っていました」
「なんでそんなことを!」
一歩間違えば、私のように捕らえられ殺されたかもしれないのに。それだけの地位に、クリステルはいたのだ。
「私は、あなただけの騎士です。アウローラ様のいない世界なんて何の意味も持たないのです。全ての真相を明かしたら、あなたの元へ行くつもりでした」
「そんなの……」
もしも、私が召喚されていなかったらと思うと、ゾクリとする。初恋の相手が自分のせいで、死を望むなんて耐えられない。
「ですが、あなたは私の元へ戻って来てくれた」
熱を帯びたシルヴァンの瞳が潤む。震える手が私の頬に触れる。
近づくシルヴァンの息づかいに、私はそっと目を閉じた。
勝手知ったる王城を抜けて庭園に入ると、私について来たシルヴァンは歩きながら尋ねる。
「ヴァン、止めても無駄よ」
「止めませんよ」
「それから。私は雨音よ、ア、マ、ネ!」
「私もヴァンではなく、シルヴァンです」
「……知ってるわよ、私がつけた名前だもの」
ヴァンは、公爵領の孤児院にいた男の子。母に連れられ寄付に訪れては一緒に遊んだり、文字の読めない彼らに絵本の読み聞かせをしていた。その頃はまだ、クリステルは人見知りがあり、孤児院にはたまにしか一緒に来ていなかった。
聖痕が現れるきっかけとなったのは、ヴァンの怪我だ。転んだ私を庇い、額を切ってしまったヴァンを治したくて必死で祈った。
傷口がぱあっと光ると、見る見るうちに治ったのだ。
子供だった私たちは、絵本の聖女と聖騎士の物語に自分たちを重ね、聖女と騎士の誓いごっこをした。
そして、絵本の聖女のように自分だけの騎士に名を与えたのだ。
足を止め、背の高いヴァンを見上げる。
私は聖騎士シルヴァンが、あのヴァンだとすぐに気づいた。けれど、ヴァンは――てっきりクリステルに魅了されていると思っていた。
「まさか、あれが本当に……聖騎士の誓いになっていたとは思わなかったわ」
「ひと目見て、アウローラ様だとわかりました。聖騎士の誓いで与えられた印が、また現れたのです」
私の手を包んだシルヴァンの手の甲には、聖痕と同じ形をした小さな痣が確かにあった。
「だとしても! どうして、クリステルの魅了が効かなかったのに、聖騎士になったの? 私はもういなかったのに――」
「アウローラ様の死の真相を探っていました」
「なんでそんなことを!」
一歩間違えば、私のように捕らえられ殺されたかもしれないのに。それだけの地位に、クリステルはいたのだ。
「私は、あなただけの騎士です。アウローラ様のいない世界なんて何の意味も持たないのです。全ての真相を明かしたら、あなたの元へ行くつもりでした」
「そんなの……」
もしも、私が召喚されていなかったらと思うと、ゾクリとする。初恋の相手が自分のせいで、死を望むなんて耐えられない。
「ですが、あなたは私の元へ戻って来てくれた」
熱を帯びたシルヴァンの瞳が潤む。震える手が私の頬に触れる。
近づくシルヴァンの息づかいに、私はそっと目を閉じた。
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