79 / 81
それぞれの喜び
しおりを挟む
歓喜の中、全員で抱きしめ合ったあと、一人一人と抱きしめあっていた。
その中で真梨子は驚いていた。由香里が泣いていたから。
チハルちゃんと抱きしめ合ったあと、ユカと抱きしめ合おうと顔を見るとユカはボロボロと泣いていた。
ユカとの付き合いは長いけど、泣いているところを初めて見た。私の涙は驚きで一瞬止まった。
「やった……!! やったね! マリ!!」
ユカはそう言って私の首に手を回して強く抱きしめてくる。
私も抱きしめ返す。
「うん…!」
体からユカの震えと熱が伝わってきて、止まった涙がまた溢れ出してくる。
親友の努力は、ようやく泣くほどの結果になって返ってきた。
これまでの人生で一番嬉しい。
ユカ、私はね、ずっと一人で頑張ってたユカに、報われて欲しかったんだ。
そう思いながら、抱きしめる力を強めて言った。
「……よかった!! よかったね!! ユカ!!」
涙は止まらないけど、頬が緩むのも止まらなかった。
佐奈栄は困惑していた。涙が出そうになってしまったから。
今まで何度も応募したデザイン画コンテストでも一位を取れたことなんてない。
デザイン画コンテストだけではない、一位とは無縁の人生を歩んできた。
仲間と取った初めての一位。嬉しくないわけがない。瞳に涙が溜まってしまった。
そんな中、右後方から栞の体当たりを受けた。
あやうく涙がこぼれ落ちるところだったじゃねーか。
なにしやがる。
そう言おうと首を回してシオリを見たら体当たりではなく抱擁だったようだ。
腰に手が回っている。
「うわああああ!! メガネどっかいったー!!」
シオリは開口一番そう言った。
口をデカく開けて、ギュッとつむった目からはダラダラと涙が流れていた。
いつも無表情であることが信じられないグシャグシャの顔。
たしかに眼鏡を掛けていなかった。どうやら歓喜のあまり吹き飛ばしてしまったらしい。
「なんでだよ! 一度も落ちたことねーだろ! おかしーだろ!!」
言いながら足元を見回すとシオリの眼鏡はすぐに見つかった。拾い上げて渡してやる。
「オラ! あったぞ! メガネ!」
シオリはギュッとつむっていた目を少しだけ開けて眼鏡を確認すると、すぐに受け取りいそいそと掛けた。
するとまたグシャグシャの顔になって言った。
「うわああああ!! ちょっと曲がってるー!!」
落ちた衝撃なのか踏んでしまったのかは分からないが、フレームが少し曲がり右側のレンズが右上に向かって少し曲がっていた。
「お前ちょっと落ち着け!」
いつも無口で無表情な後輩の乱れっぷりに笑ってしまった。お陰で涙は引っ込んだ。
危ない危ない。人前で泣くところだった。
千晴は栞を探していた。密着しているにも関わらず、涙で曇る視界で見失ってしまっていた。
メンバーであと抱擁していないのは栞だけだった。
ようやくシオリを見つけた。
「シオリ!」
振り向いたシオリはグシャグシャに泣いていて眼鏡がなぜか曲がっていたけど、気にせず抱きついた。
「やった! シオリ! やったよ!」
「うん! うん! チハルのお陰!」
シオリは顔を左肩に密着し頷きながら言った。体に頷きが伝わる。
でも私のお陰ではない。
「違うよ! 皆のお陰だよ!!」
「違うの! あの時チハルが扉を開けてくれなかったら! 声をかけてくれなかったら! こんな嬉しいこと無かったんだ! 本当に、本当にありがとう!!」
よく分からないけど、多分入部した時のことだろうと思った。
私がシオリに救われたように、きっとシオリも救われていたんだ。
本当に軽音部を作って良かった。頑張って良かった。
そう思うと、涙腺は更に緩んでしまった。
その中で真梨子は驚いていた。由香里が泣いていたから。
チハルちゃんと抱きしめ合ったあと、ユカと抱きしめ合おうと顔を見るとユカはボロボロと泣いていた。
ユカとの付き合いは長いけど、泣いているところを初めて見た。私の涙は驚きで一瞬止まった。
「やった……!! やったね! マリ!!」
ユカはそう言って私の首に手を回して強く抱きしめてくる。
私も抱きしめ返す。
「うん…!」
体からユカの震えと熱が伝わってきて、止まった涙がまた溢れ出してくる。
親友の努力は、ようやく泣くほどの結果になって返ってきた。
これまでの人生で一番嬉しい。
ユカ、私はね、ずっと一人で頑張ってたユカに、報われて欲しかったんだ。
そう思いながら、抱きしめる力を強めて言った。
「……よかった!! よかったね!! ユカ!!」
涙は止まらないけど、頬が緩むのも止まらなかった。
佐奈栄は困惑していた。涙が出そうになってしまったから。
今まで何度も応募したデザイン画コンテストでも一位を取れたことなんてない。
デザイン画コンテストだけではない、一位とは無縁の人生を歩んできた。
仲間と取った初めての一位。嬉しくないわけがない。瞳に涙が溜まってしまった。
そんな中、右後方から栞の体当たりを受けた。
あやうく涙がこぼれ落ちるところだったじゃねーか。
なにしやがる。
そう言おうと首を回してシオリを見たら体当たりではなく抱擁だったようだ。
腰に手が回っている。
「うわああああ!! メガネどっかいったー!!」
シオリは開口一番そう言った。
口をデカく開けて、ギュッとつむった目からはダラダラと涙が流れていた。
いつも無表情であることが信じられないグシャグシャの顔。
たしかに眼鏡を掛けていなかった。どうやら歓喜のあまり吹き飛ばしてしまったらしい。
「なんでだよ! 一度も落ちたことねーだろ! おかしーだろ!!」
言いながら足元を見回すとシオリの眼鏡はすぐに見つかった。拾い上げて渡してやる。
「オラ! あったぞ! メガネ!」
シオリはギュッとつむっていた目を少しだけ開けて眼鏡を確認すると、すぐに受け取りいそいそと掛けた。
するとまたグシャグシャの顔になって言った。
「うわああああ!! ちょっと曲がってるー!!」
落ちた衝撃なのか踏んでしまったのかは分からないが、フレームが少し曲がり右側のレンズが右上に向かって少し曲がっていた。
「お前ちょっと落ち着け!」
いつも無口で無表情な後輩の乱れっぷりに笑ってしまった。お陰で涙は引っ込んだ。
危ない危ない。人前で泣くところだった。
千晴は栞を探していた。密着しているにも関わらず、涙で曇る視界で見失ってしまっていた。
メンバーであと抱擁していないのは栞だけだった。
ようやくシオリを見つけた。
「シオリ!」
振り向いたシオリはグシャグシャに泣いていて眼鏡がなぜか曲がっていたけど、気にせず抱きついた。
「やった! シオリ! やったよ!」
「うん! うん! チハルのお陰!」
シオリは顔を左肩に密着し頷きながら言った。体に頷きが伝わる。
でも私のお陰ではない。
「違うよ! 皆のお陰だよ!!」
「違うの! あの時チハルが扉を開けてくれなかったら! 声をかけてくれなかったら! こんな嬉しいこと無かったんだ! 本当に、本当にありがとう!!」
よく分からないけど、多分入部した時のことだろうと思った。
私がシオリに救われたように、きっとシオリも救われていたんだ。
本当に軽音部を作って良かった。頑張って良かった。
そう思うと、涙腺は更に緩んでしまった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
パクチーの王様 ~俺の弟と結婚しろと突然言われて、苦手なパクチー専門店で働いています~
菱沼あゆ
キャラ文芸
クリスマスイブの夜。
幼なじみの圭太に告白された直後にフラれるという奇異な体験をした芽以(めい)。
「家の都合で、お前とは結婚できなくなった。
だから、お前、俺の弟と結婚しろ」
え?
すみません。
もう一度言ってください。
圭太は今まで待たせた詫びに、自分の弟、逸人(はやと)と結婚しろと言う。
いや、全然待ってなかったんですけど……。
しかも、圭太以上にMr.パーフェクトな逸人は、突然、会社を辞め、パクチー専門店を開いているという。
ま、待ってくださいっ。
私、パクチーも貴方の弟さんも苦手なんですけどーっ。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる