《瞑想小説 狩人》

瞑想

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同種喰い

同種喰い 其の5

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学び舎を後に
君は礼拝堂への一人旅

帰路

色づきを変える
木々のざわめきに、
田園に引かれた
用水路の水に、心を奪われる

…きれ、い

立ち止まり、
深呼吸を2度、3度

呼吸の回数とともに
不浄なものが吐き出され
清浄なものが吸収される
その感覚に身体が満たされる

…嗚呼、
 生きている
 草も木も、
 田畑も水も、
 みんな、
 みんな、
 一緒…

鳥が鳴いている
ホトトギスがいるらしい

「早苗鳥」とも呼ばれる
美しい名を冠した
容姿可憐な
この鳥は
姿に似合わぬ
一風、変わった
不可解な習性を持つ

自らの卵を
別種の鳥の巣の中に
産み付け、預ける
「托卵」と呼ばれる行為には
一寸した恐怖を覚えるだろう

主の留守宅に入り込み
巣に辿り着いた早苗鳥は…

周囲を警戒し
誰も居ないことを確認すると
巣の中の卵を
一つ落とし、
破壊し、
気づかれぬよう
気づかれぬように
そっと自らの分身を
産み落とし、去る

こんなにも美しい
鳴き声の主、
その本質は
陰そのもの

人間に例えるならば
人は見かけに依らぬ
との表現が相応しい

ホトトギスの鳴き声が
周囲の景色と混じりあい、
不吉な影を創り出す時

頭の中に…
早朝の記憶が巡りだす

赤いオンナの
鋭い瞳と
緑のオンナの
狡猾な眼差し

情熱の、赤と
企みの、緑…





…そう
 いえば、
 あの
 2人は…

 一体、
 何者、
 なのかしら…

…彼女らは
 言っていた
 確かに

 わたし、が
 輪番中、で

 長老様に
 毎夜、毎夜

 嗚呼…
 されている、ことを

…知っていると、
 言っていた…

:::::::::::::

礼拝堂に
差し込む光は
いつも幻想的で
抽象的な印象

天窓の一枚から
斜め下方に向かい
降り注ぐ光の束が丁度
パイプ・オルガンを包み込んでいる

壁の材質は一体、何なのだろう
こんなにも音が反響するのだから
余程良い石を使い
余程の名工がこしらえた
素晴らしい建築に違いない

最後列の椅子が空いている

できれば、右端に
それが駄目なら、左端に
座ることができれば良いのだが
そこには既に先客がおり
他の祈り女と談笑していた

前列が埋まり
中列が埋まるころ

右手側に赤い気配を
左手側に緑の気配を
感じ、察知する
君の反応速度は素晴らしい

運動神経の賜物だ
氣の流れだけで
全体を掌握し、
物事の概ねを捉えてしまう
直感と呼ばれる部門において
他に類を見ない、と付しておこう

赤目が右に
緑目が左に
君を挟んで座り込む

朝と同じ
既視感に似た
感覚に包まれる

唯一、違うのは
彼女らが何をしようと
しているのか
その企みの方向性を
君が知ってしまっていることか

もう全席が埋まっている
移動することは
叶わぬと知れ





赤目が鋭い目つきで
君の全身を観察する

市場に売り出す奴隷を
品定めする商人のように

緑目は周囲を見渡し
後方に誰も
居ないことを確認すると

右腰のポケットから
2つの小さな球体を取り出し
君の背中越しに
そのうち1つを赤目に手渡す

…また、
 会えたわね

…嬉しいわ
 とっても…

…!…

扉が閉まる音とともに
祈りの時間が始まる

静寂が支配する室内は
ドアの採光が無くなることで
少しだけ、暗くなる

…続きを、
 しましょ…

…そう、朝の
 続き、を…

2人は本気だ
気配がそれを告げている
覚悟をもってここに居る
それが何となく、理解出来る

静寂の中
後列の中央部分だけ
氣の流れが違う

…朝よりも、
 もっと…
 楽しませて、もらうわ

赤目が囁く
鋭く、
しかし小さく、
カラダを突き刺し
貫くような声で

…昼食の前に、ね
 貴女のカラダで
 遊ぶの、よ
 いいでしょ?

緑目が囁く
ゆっくり、と
包み込むように

緑の瞳は三白眼で
中心に向かうほど
緑の色素が濃くなっている

周囲への警戒を怠らず
フクロウのように
後方を再度確認した後

小さな球体のスイッチを入れ
漆黒のワンピースの上から
ゆっくりと胸に押し当てた

…!…!

…声を
 出しちゃ、駄目、よ
 わかった?

…そう、
 動くのも、いけないわ
 何なら、
 動けないように
 してあげる
 まってて、ね

…?…?

彼女らは
素早い手捌きで
祈り女の右手首を
背面に回し
左手首を
その対象側に引き込み

何事か呟きながら
小さな布切れ2枚で
見事な縛りを
瞬間で作り上げた

東洋の縛り芸
《後手縛り》

祈り女は
祈りのポーズとしては
余りにも歪な
東洋のアーサナに
固定され
胸に振動する球体を
あてがわれる

…や、
 め、
 て…

…駄目、
 続きを、するの
 朝の、続きを…

…そう、
 おねえさん達を
 楽しませて、ね
 その綺麗な
 カ、ラ、ダ、で

…ぁ…っ!

音もなく
振動する
2つの球体はそれぞれ
親指と人指し指に導かれ
ワンピース越しに
胸の小さな膨らみをなぞりながら

ゆっくりと
大きな円を描き
左右対象に
中央へ向かって
円周率を縮めていく

…声を
 出しちゃ駄目って
 言った、でしょう?

…みんなに
 気づかれるわよ?
 神聖な礼拝堂、で
 神聖な祈りの時間、に
 何て
 ふしだらなことをって、ね

輪番の中で開発され
調教を受け続けたその部位は
布越しの刺激であっても
十分な反応を示す

時間の
経過と
ともに

カラダが震え
吐息が、荒くなる

…ぁ…
 …っ

赤も緑も
急がず
慌てず

円を描き
押し付け
回すものの
その中心部
胸の突起に触れるか
触れないかの瞬間に
球体を離し
もう一度外側から
同じように
回り込む

繰り返し
繰り返し

…そんなに
 震えちゃって…
 感じやすいの、ね
 
…嗚呼
 可愛い、わ
 綺麗よ、とっても…

声が…
声が…
漏れ、ちゃう
おね、が、い…

時は牛の刻、
礼拝堂の天窓から
南高く上った太陽がもたらす
一陣の光が差し込めば
そこは
一枚の絵画のようだ

《50人の祈り女と
 2人の別種、同種喰い》

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