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第20話 きっとうまくいく
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私が断りの言葉を言うと、スクルさんは、少し寂しそうな表情で私を見つめる。その表情に、私の胸が苦しくなる。
(悲しませてしまった……)
それでも、嘘をつくわけにはいかない。
「ああ……そうですか。うーん、分かっていたけれど、いざ言われると地味に傷つくなあ……」
スクルさんのその言葉で、私は急に怖くなってしまう。これで、スクルさんとの縁が切れてしまうのではないか、と。
(そんなのは……いやよ……)
私は、その気持ちを、何と伝えるべきか必死に考え、慌てて口に出した。
「でも、お願い……これからも、私とお友達でいてほしいの。自分勝手なわがままだって分かっているわ……それでも私、これであなたとの縁がなくなってしまうのは、絶対に嫌……」
私は、あまりにも必死だったのか、気づけば肩で息をしていた。
スクルさんは手を口に当てて驚きの表情になっている。
(私……もしかして、何か大変なことを言ってしまったのかしら……)
焦りから、全身から変な汗が出てくる。
でも、気づくと私は、彼に思い切り抱きしめられていた。
「ううっ……お姫様……なんていい子なんだ!ええ、俺たちはずっと友達ですよ!嫌だと言っても逃しませんよ!?」
私は、あまりにも突然の事すぎて、どうしたらいいか分からない。
(またなの!?私……今日は抱き付かれ運が絶好調なのかしら!?)
謎の運勢でもないと、この状況に説明がつかない。
そこへフォールスの野次が飛んでくる。
「おいこらスクル!何やってるんだ!」
「へへーんだ、お坊ちゃまはそこで指咥えて黙ってな」
(もう……子供のケンカみたいね)
楽しさ半分、呆れ半分で見ていた私。そんな私の耳に、スクルさんはそっと顔を寄せてくる。
そして、私だけに聞こえるくらいの小さな声で、そっと囁いてきた。
「……あなたとフォールスなら、きっとうまくいきますよ。あいつは本当にいい男になった。俺が保証します」
「えっ……」
それだけ言うと、スクルさんは私をようやく放す。
驚いたままの私に、スクルさんはいたずらっ子のように笑いかけて、それから、ああ疲れた!と言いながら背伸びをした。
「じゃあ、名残惜しいですが……そろそろ行くかフォールス」
「……まったく君って奴は。まあいい。ほら、じゃあ先に乗れよ」
「はいはい。わかりましたよ」
呆れ顔のフォールスにも、全く悪びれた様子のないスクルさん。
「じゃあお姫様、今日はこれで失礼します。何も考えないでゆっくり休んで下さいね。……で、今度はちゃんと、歌劇を観に行きましょう」
「ええ、ぜひ!」
スクルさんは馬車に乗り込んでいく。フォールスは、そんな彼をやれやれという様子で見てから、私の方を向く。
「じゃあ……僕も行くよ。見送り、ありがとう」
「いいえ……きっと私、色々迷惑をかけたのでしょう?見送りくらいさせてちょうだい。……歌劇、楽しみにしてるわ」
そう言う私に、フォールスはふふっと笑う。
「わかった。早めに時間を作るよ」
そう言ったきり、フォールスはしばらく黙り込んでしまう。
どうしたの、そう聞こうと思った時だった。
「……よかったら、僕も」
フォールスがそう言いながら、私から顔を逸らして、遠慮がちに両手を開いている。
「……?」
その意味がわからず、私は首を傾げる。そのまま、ただ無の時間が過ぎていく。
「ああ……もう、ちくしょう!」
痺れを切らした様子で、フォールスは私の手首を掴む。驚く私に構わず、彼は私を自分の方に引き寄せる。そして、私を抱きしめた。
「……スクルだけ、ずるいだろう?」
「っ!……もう、びっくりしたじゃない」
とは言ったものの、3回目の抱擁は、さすがにもう慣れてしまった。
(そういえばフォールス、さっき、僕もって言ってたわね)
「ねえ、フォールス。もしかして、自分だけ、仲間はずれだと思ったの?」
「……そんなんじゃ、ない」
ぶっきらぼうに答えるフォールス。その反応に、私は思わず笑ってしまった。
「ふふっ、あなた、まるで子供みたいだわ。もう……仕方ないわね。よしよし、いい子いい子」
私は、子供の患者にするように、優しく彼の背中をポンポンと叩いた。
「……本当に、そんなんじゃない」
「はいはい。そういう事にしておいてあげるわ」
すると、フォールスは私から少し離れ、私の両肩に手を置くと、何も言わず、ただ私を見つめてくる。
「……フォールス?」
私は、彼の顔を見上げる。彼は、何か躊躇うような表情でその顔を近づけてくる。そして……私の額に、口づけをした。
「おやすみ、アステ」
それだけ言うと、フォールスはそのまま馬車へと乗り込んでしまった。
「…………え?」
私は、呆然としたまま、その場に立ち尽くした。
(悲しませてしまった……)
それでも、嘘をつくわけにはいかない。
「ああ……そうですか。うーん、分かっていたけれど、いざ言われると地味に傷つくなあ……」
スクルさんのその言葉で、私は急に怖くなってしまう。これで、スクルさんとの縁が切れてしまうのではないか、と。
(そんなのは……いやよ……)
私は、その気持ちを、何と伝えるべきか必死に考え、慌てて口に出した。
「でも、お願い……これからも、私とお友達でいてほしいの。自分勝手なわがままだって分かっているわ……それでも私、これであなたとの縁がなくなってしまうのは、絶対に嫌……」
私は、あまりにも必死だったのか、気づけば肩で息をしていた。
スクルさんは手を口に当てて驚きの表情になっている。
(私……もしかして、何か大変なことを言ってしまったのかしら……)
焦りから、全身から変な汗が出てくる。
でも、気づくと私は、彼に思い切り抱きしめられていた。
「ううっ……お姫様……なんていい子なんだ!ええ、俺たちはずっと友達ですよ!嫌だと言っても逃しませんよ!?」
私は、あまりにも突然の事すぎて、どうしたらいいか分からない。
(またなの!?私……今日は抱き付かれ運が絶好調なのかしら!?)
謎の運勢でもないと、この状況に説明がつかない。
そこへフォールスの野次が飛んでくる。
「おいこらスクル!何やってるんだ!」
「へへーんだ、お坊ちゃまはそこで指咥えて黙ってな」
(もう……子供のケンカみたいね)
楽しさ半分、呆れ半分で見ていた私。そんな私の耳に、スクルさんはそっと顔を寄せてくる。
そして、私だけに聞こえるくらいの小さな声で、そっと囁いてきた。
「……あなたとフォールスなら、きっとうまくいきますよ。あいつは本当にいい男になった。俺が保証します」
「えっ……」
それだけ言うと、スクルさんは私をようやく放す。
驚いたままの私に、スクルさんはいたずらっ子のように笑いかけて、それから、ああ疲れた!と言いながら背伸びをした。
「じゃあ、名残惜しいですが……そろそろ行くかフォールス」
「……まったく君って奴は。まあいい。ほら、じゃあ先に乗れよ」
「はいはい。わかりましたよ」
呆れ顔のフォールスにも、全く悪びれた様子のないスクルさん。
「じゃあお姫様、今日はこれで失礼します。何も考えないでゆっくり休んで下さいね。……で、今度はちゃんと、歌劇を観に行きましょう」
「ええ、ぜひ!」
スクルさんは馬車に乗り込んでいく。フォールスは、そんな彼をやれやれという様子で見てから、私の方を向く。
「じゃあ……僕も行くよ。見送り、ありがとう」
「いいえ……きっと私、色々迷惑をかけたのでしょう?見送りくらいさせてちょうだい。……歌劇、楽しみにしてるわ」
そう言う私に、フォールスはふふっと笑う。
「わかった。早めに時間を作るよ」
そう言ったきり、フォールスはしばらく黙り込んでしまう。
どうしたの、そう聞こうと思った時だった。
「……よかったら、僕も」
フォールスがそう言いながら、私から顔を逸らして、遠慮がちに両手を開いている。
「……?」
その意味がわからず、私は首を傾げる。そのまま、ただ無の時間が過ぎていく。
「ああ……もう、ちくしょう!」
痺れを切らした様子で、フォールスは私の手首を掴む。驚く私に構わず、彼は私を自分の方に引き寄せる。そして、私を抱きしめた。
「……スクルだけ、ずるいだろう?」
「っ!……もう、びっくりしたじゃない」
とは言ったものの、3回目の抱擁は、さすがにもう慣れてしまった。
(そういえばフォールス、さっき、僕もって言ってたわね)
「ねえ、フォールス。もしかして、自分だけ、仲間はずれだと思ったの?」
「……そんなんじゃ、ない」
ぶっきらぼうに答えるフォールス。その反応に、私は思わず笑ってしまった。
「ふふっ、あなた、まるで子供みたいだわ。もう……仕方ないわね。よしよし、いい子いい子」
私は、子供の患者にするように、優しく彼の背中をポンポンと叩いた。
「……本当に、そんなんじゃない」
「はいはい。そういう事にしておいてあげるわ」
すると、フォールスは私から少し離れ、私の両肩に手を置くと、何も言わず、ただ私を見つめてくる。
「……フォールス?」
私は、彼の顔を見上げる。彼は、何か躊躇うような表情でその顔を近づけてくる。そして……私の額に、口づけをした。
「おやすみ、アステ」
それだけ言うと、フォールスはそのまま馬車へと乗り込んでしまった。
「…………え?」
私は、呆然としたまま、その場に立ち尽くした。
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