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第8話
しおりを挟むアーロン王子からの話しが終わり、私達はヴェルナーに案内されて、用意された部屋へとやって来た。
うわっ!何この部屋?内装凄く凝ってるじゃない。ただの候補者にここまでするの!?
女性が好む清潔感のある内装に調度品は白を貴重として、全てが最高級品で揃えられていた。
部屋に入るとさっそくステフィが興奮した様子で話し出す。
「カーラ、さっそくヴェルナー様を間近で見られてラッキーね!」
「はあ、宮廷って本当に広くて煌びやかな所ですね。このお部屋も内装や調度品もすごく素敵で、私なんか目眩を起こしそうです」
イルダは少々緊張気味のようだが、幼い頃から世話をしてくれていたイルダに来てもらえたのは私としては心強い。
「二人とも、一緒に宮廷に来てくれて本当にありがとう」
カーラの言葉に二人は優しく微笑んだ。
「当たり前じゃない!カーラがアーロン王子と結婚したら、カーラに会いにいればヴェルナー様を見られるんだもの」
とステフィはキラキラとした瞳で言い
「カーラお嬢様がアーロン王子と結婚ともなればミッシェル家にとってこれ程、喜ばしい事はございませんもの」
と言ってイルダは上品に笑った。
「え?ちょ、ちょっと待って。二人は、私がアーロン王子と結婚すればいいって思ってるの?」
「もちろん!」
「ええ、もちろんですわ」
「ま、待って!私、確かに妃候補の話しは受けちゃったけど、アーロン王子と結婚するつもりはないのよ?」
「ええ!?どうして!?」
とステフィが驚きの声を上げる。
「だって私は目立ちたくないもの。他の妃候補と揉めて暗殺でもされたら……」
「ああ、確かにね。ジャクリーナ様のあの顔、悪役令嬢まんまだったものね」
「そうでしょう?」
もう、これからジャクリーナ様が何を私にしてくるのか手に取るように分かるのよ!
そこにジャクリーナの使いがカーラの部屋を訪れた。
「カーラ様、ジャクリーナ様からのご伝言で、宮廷での生活について話しをしたいので部屋に来るようにとの事です」
ああ、さっそく呼び出しが……。
カーラは引きつった笑みを浮かべると
「わ、分かりました。伺います」
と言って、ジャクリーナの部屋へと向かった。
◇◆◇
ジャクリーナの部屋に入ると、ジャクリーナはこちらを見向きもせず紅茶を一口飲んで言った。
「ねえ、どうして私が貴方をわざわざ呼び出さなければならないの?先ずは格下の貴方が、格上の私に挨拶に来るのが礼儀ってものよね。フンッ。どうして殿下はこんな下級貴族の冴えない娘を候補になどしたのかしら」
ああ、さっそく来たわ。私も前世で同じセリフを言ったわね……。
カーラは前世の自分を見ているようで、何とも気恥ずかしい思いになった。そして、ジャクリーナの機嫌を損ねないよう答えた。
「申し訳ございません。こういった事に不慣れなもので。なぜ私がこの宮廷に呼ばれたのかも私にも本当に不思議でして……。私は、アーロン王子のお妃に一番相応しい方は、ジャクリーナ様だと思っておりますから、私の事は早急に候補から外して頂きたいのですが……」
するとジャクリーナはこの返答が思いがけなかったのか、少々顔を赤らめた。
「あら、ちゃんと分かっているじゃない。まあ、そうね。貴方のような下級貴族じゃあ、分からなくても仕方がないわね。アーロン王子はお忙しい方だから、なかなかお会いにもなって下さらないけれど、今度王子とお茶をする時は、あなたのその意見も伝えておいてあげるわ」
「まあ、ありがとうございます!流石、ジャクリーナ様は頼りになりますね!」
するとジャクリーナは気を良くしたのか嬉しそうに言った。
「それまでは、私が貴方の面倒見てあげてもよくってよ」
「まあ!良かった。私、宮廷での生活がとても不安でしたので、ジャクリーナ様にそう言って頂けて嬉しいですわ」
これでジャクリーナからの嫌がらせはとりあえず回避出来るはず!
ジャクリーナが思ったより単純で良かったわ。
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