クールな伯爵令嬢と見習い魔術師

花見 有

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第7話

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「はあ……」

 夕食を目の前に、セシリアは大きくため息を吐いた。

「どうしたの?食事が全然進んでいないじゃない」

 母のアニエスが心配そうにセシリアに訪ねた。

「お母様……、私、さっきからずっと心臓がズキズキするのです。病気でしょうか?」

 セシリアは、泣きそうな顔で母に言った。

「まあ!大変!!」

 アニエスは立ち上がると、すぐにセシリアに駆け寄る。
 父のジョエルも兄のアンドレも皆がセシリアに駆け寄った。

「セシリア、すぐに医者を呼ぶからな!」

「お父様……」

「とにかく、横になった方がいい」

「お兄様……」

 優しい家族に囲まれてセシリアは、ポロポロと涙が溢れた。

「どうしたの!?そんなに痛むの!?」

 お母様に心配そうに顔を覗き込まれて、セシリアは全てを話す事にした。



「魔術師の見習い?」

 ケヴィとの事をざっくりと話すと皆が驚いたようにそう言った。

「ええ。ケヴィは魔術師の見習いで転移に失敗して、私の部屋に来てしまっていたの」

「な!?若い男がセシリアの部屋に出入りしていただと!?」

 お父様が怒って立ち上がったが、それをお兄様がなだめるように言った。

「まあ、まあ。でもセシリアが最近変わったのは、そのケヴィという魔術師の見習いのせいなんだろ?」

 セシリアはそう言われて、改めてケヴィと出会ってからの自分を思い返した。

 初めて部屋に現れた時、私はただ、ただ驚いて、でも忙しなく変わる表情や行動から、目が離せなかった。
 そして、彼が魔術を使って部屋から居なくなると、ドキドキとする心臓の音をやけに大きく感じていたわ。
 何処かで、また彼と会える事を期待して、読書の時間が楽しみになって……

「私……、ケヴィに会うのが凄く楽しかったの。だから、ケヴィに会えなくなるって言われて、とても辛くなって……」

 とセシリアはズキズキする心臓を押さえた。

 すると、お母様が優しく声を掛けて、私をフワリと抱き締めた。

「そう。セシリアはケヴィに会えなくなって寂しいのね。だから、心臓が痛くなったのね」

「うん……心配掛けてごめんなさい」

「いいのよ。その胸の痛みは、きっと時間が過ぎれば段々消えていくから、心配ないわ」

「そうなの?」

「ええ。そういうものよ」

 お母様は優しく言うとギュッと私を抱き締めた。


 セシリアは、先に部屋で休む事になり、食堂に残った3人は静かにお茶を飲んでいた。

「セシリア……、きっとケヴィという見習い魔術師に恋をしていたのね」

 母のアニエスが、静かに言った。

「ふん!俺はまだ、勝手にセシリアの部屋に上がりこんでいた事、許してないぞ」

 と父のジョエルは怒りを顕にした。

「でも、セシリア、自分の気持ちには気付いてなさそうだな」

 と苦い顔をした。

「その方が良いのよ。いくら魔術師が稀少な人材でも、家は伯爵家。叶わない恋だもの」

 アニエスは、物悲しそうに言った。

「そうだ、そうだ!1年後にはセシリアは社交デビューだし、そこで、良い男と出逢えばすぐにでも忘れるさ」

 ジョエルが満足げに言ったが、アンドレは

そう簡単にセシリアが彼の事を忘れるだろうか……

と思ったのだった。

 
そして、それからセシリアは、母の時間が過ぎれば消えるという言葉を信じ、痛みを抱えながらも、1年後の社交デビューの準備をするのだった。
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