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11.無能聖女、ひとつお願いをする
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教会と書物庫で、過去の記録を見たトルテは、さっそく行動に移した。
まずは、この非情な行為を王家が認識しているのかどうか。という所だ。
トルテが見た資料は、数字での情報だけであって、その時に何があり、誰がどう動いたのかを知れるものでは無かった。経理や経済、当時の歴史背景を良く知る物であれば、知っていることも、推測する事も出来るのかもしれないが、トルテはそんな専門家ではないので、数字の流れを追う事しかできなかった。
しかし、馬鹿正直に国王陛下に問いただすのは危険だ。もし、陛下がこの事を知っているのであれば、トルテを社会的、もしくは物理的にか消しにかかるだろう。
そこでトルテは、自身の婚約者であるアルファド王子に目を付けた。
婚約者同士で交流をもち、お互いの理解を深めるため、週に数度、共にお茶を飲む事が推奨されている。
お互いに歩み寄る気の無いトルテとアルファド王子は、毎回このお茶会を30分くらいで切り上げていた。
最近王子は、どこかの男爵令嬢に入れ込んでいるらしく、その最低限の交流さえ週に一度、ものの5分で切り上げてしまう。トルテはこれ幸いに、王宮の美味しいお菓子とお茶をゆっくりと堪能してから帰宅していた。
しかし、今日はそんな訳にはいかない。彼が森の事について知っていれば、確実に陛下も知っている。
そうなれば、下手に騒ぎ立てる事は下策だ。
「俺は忙しいのだ!!何故、毎度毎度貴様と茶を飲まなければならないのだ!!」
お茶が用意された中庭へ来るなり怒鳴る王子。
中庭は人払いされて、トルテと王子の二人しかいないとは言え残念な王子である。
森で呪いを解いたはずの人々が殺される所を目撃した後、体調を崩したり過去の帳簿を調べたりと色々していたため、王子と顔を合わせるのはひと月ぶりくらいだが、相も変わらずな王子にげんなりする。
(いい加減、それが己の責務の一つだと理解してほしいわ)
トルテは優雅な手つきで、それぞれのカップにお茶を注ぐと、淑女の笑みを顔に張り付け言葉を紡ぐ。
「貴族に私たちの中が良好であると印象付けるためでございますわ。筆頭聖女として力を示した乙女を、次期国王となる王太子が娶る。これがこの国の決まりでございます。お互い心も通わせておりませんが、それでも体面的は良好であるふりをしなければなりません」
「貴様のその無礼な口ぶり、この場で切って捨てても良いのだぞ!!」
「今私を切り捨てれば殿下のお立場が危うくなります。私は筆頭聖女です。あの森でのお役目をこなしておりますから、今私がいなくなれば、かなりの打撃となりますわ」
にっこりと笑い、そのくらいお前にも分かるだろ?と言外ににおわせる。
トルテの言わんとしている事を理解したのか、王子は盛大に舌打ちをする。
「あの森の奴らも大人しく捕まれば良いものを、魔神の力を使って人に成りすますとは不遜な奴らよ!!さっさと俺の金になれば良いんだ!」
「…だからこそ、私が呪いを解いているのではありませんか」
「ふん!偉そうに!貴様の代わりなどいくらでも居るのだぞ!」
王子は確実にあの森の獣達が売りさばかれている事を知っているし、その売り上げの一部を貰っている様だ。王子の態度や発言に、不快感で胸がムカムカしてくる。そこに乗っかるような発言をしなければならない自分にも。
しかし、随分簡単にあの森の秘密を知っていると言ってくれて助かった。というか、トルテがこの秘密を知っている事に疑問を持たないのもどうなのか。他の誰かから話を聞いているのだとでも思っているのだろうか。なんにせよ、何故秘密を知っているのかと追及されずに済むのは助かった。
王子が森の秘密について知っているのであれば、親である国王陛下が知っていて当然だろう。
トルテはグッと手を握りしめると、一つの覚悟を持って王子に話しかけた。
「殿下、私ひとつお願いがございますの」
*----------------*
あと1、2話で回想編は終わると思います。
長くなって申し訳ありません…。
まずは、この非情な行為を王家が認識しているのかどうか。という所だ。
トルテが見た資料は、数字での情報だけであって、その時に何があり、誰がどう動いたのかを知れるものでは無かった。経理や経済、当時の歴史背景を良く知る物であれば、知っていることも、推測する事も出来るのかもしれないが、トルテはそんな専門家ではないので、数字の流れを追う事しかできなかった。
しかし、馬鹿正直に国王陛下に問いただすのは危険だ。もし、陛下がこの事を知っているのであれば、トルテを社会的、もしくは物理的にか消しにかかるだろう。
そこでトルテは、自身の婚約者であるアルファド王子に目を付けた。
婚約者同士で交流をもち、お互いの理解を深めるため、週に数度、共にお茶を飲む事が推奨されている。
お互いに歩み寄る気の無いトルテとアルファド王子は、毎回このお茶会を30分くらいで切り上げていた。
最近王子は、どこかの男爵令嬢に入れ込んでいるらしく、その最低限の交流さえ週に一度、ものの5分で切り上げてしまう。トルテはこれ幸いに、王宮の美味しいお菓子とお茶をゆっくりと堪能してから帰宅していた。
しかし、今日はそんな訳にはいかない。彼が森の事について知っていれば、確実に陛下も知っている。
そうなれば、下手に騒ぎ立てる事は下策だ。
「俺は忙しいのだ!!何故、毎度毎度貴様と茶を飲まなければならないのだ!!」
お茶が用意された中庭へ来るなり怒鳴る王子。
中庭は人払いされて、トルテと王子の二人しかいないとは言え残念な王子である。
森で呪いを解いたはずの人々が殺される所を目撃した後、体調を崩したり過去の帳簿を調べたりと色々していたため、王子と顔を合わせるのはひと月ぶりくらいだが、相も変わらずな王子にげんなりする。
(いい加減、それが己の責務の一つだと理解してほしいわ)
トルテは優雅な手つきで、それぞれのカップにお茶を注ぐと、淑女の笑みを顔に張り付け言葉を紡ぐ。
「貴族に私たちの中が良好であると印象付けるためでございますわ。筆頭聖女として力を示した乙女を、次期国王となる王太子が娶る。これがこの国の決まりでございます。お互い心も通わせておりませんが、それでも体面的は良好であるふりをしなければなりません」
「貴様のその無礼な口ぶり、この場で切って捨てても良いのだぞ!!」
「今私を切り捨てれば殿下のお立場が危うくなります。私は筆頭聖女です。あの森でのお役目をこなしておりますから、今私がいなくなれば、かなりの打撃となりますわ」
にっこりと笑い、そのくらいお前にも分かるだろ?と言外ににおわせる。
トルテの言わんとしている事を理解したのか、王子は盛大に舌打ちをする。
「あの森の奴らも大人しく捕まれば良いものを、魔神の力を使って人に成りすますとは不遜な奴らよ!!さっさと俺の金になれば良いんだ!」
「…だからこそ、私が呪いを解いているのではありませんか」
「ふん!偉そうに!貴様の代わりなどいくらでも居るのだぞ!」
王子は確実にあの森の獣達が売りさばかれている事を知っているし、その売り上げの一部を貰っている様だ。王子の態度や発言に、不快感で胸がムカムカしてくる。そこに乗っかるような発言をしなければならない自分にも。
しかし、随分簡単にあの森の秘密を知っていると言ってくれて助かった。というか、トルテがこの秘密を知っている事に疑問を持たないのもどうなのか。他の誰かから話を聞いているのだとでも思っているのだろうか。なんにせよ、何故秘密を知っているのかと追及されずに済むのは助かった。
王子が森の秘密について知っているのであれば、親である国王陛下が知っていて当然だろう。
トルテはグッと手を握りしめると、一つの覚悟を持って王子に話しかけた。
「殿下、私ひとつお願いがございますの」
*----------------*
あと1、2話で回想編は終わると思います。
長くなって申し訳ありません…。
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