無能聖女は呪いを解かない

もりのたぬき

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10.無能聖女、さらに調べる

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王宮の書物庫にはそれこそ建国の時代からの、お金に関わるあらゆる書類が保管されている。

トルテは国王から閲覧許可をもらうと、すぐさま書物庫へ向かった。

「ここならきっとあるはず」

ここにならば、400年前の出納帳もしっかり残されているはずだ。
トルテは見上げるほど高い棚を、一つ一つ探していった。

「…なにこれ…年代も分類も滅茶苦茶じゃない!」

暫く目的の資料を探していたトルテだったが、未整理で詰め込まれたり積み上げられた資料に愚痴をこぼした。
どうやら、この部屋を管理している人間はおらず、文官が年に一度出納帳を置きに来るだけの部屋になっているらしい。

「これは骨が折れそうだわ…」

トルテは仕方なく手近な資料から整理しつつ、目的である建国から100年頃の資料を探していった。

書物庫に出入りするようになって1週間が経った。劣化防止の魔法がかかった資料とはいえ、500年分の積もり積った資料から探すのは本当に重労働だったが、部屋の三分の二を整理し終わった時、やっと目的の資料を見つけることが出来た。

「やっと見つけたー!」

第一王子には暇人だなと冷たく吐き捨てられたが、どうでもいい人間に言われてもどうという事は無い。
トルテは見つけた資料をいそいそと、閲覧台に載せて開くと内容をつぶさに見ていく。

資料を見てみると、二代目の聖女になってからの数年間は、あの森で取れる素材はポーションなどの素材になる植物が多く、獣たちの角や骨、毛皮と言った物品は殆ど取引されていない。

しかし、それから10年経った頃、その数が急激に増えている。しかも、狩るのが難しいと言われている幻獣と呼ばれる獣たちの角や毛皮も多く記載されていた。

「ここで結界に何か細工をしたのかな…いったいどんな細工をしたのかしら…」

そして、それから2年後の資料では、角や毛皮の取引数が唐突に少なくなっていて、国の財政もガクリと落ち込んでいる。

「きっと、この時期に魔神ダークが森の動物達に恩恵を与えたって所ね。」

財政の低迷はこの年から数年続き、それ以降は少しづつ回復し安定していった。
それと同じように、角や毛皮の取引量も推移していた。

それから、年代を飛ばし飛ばしで資料を見ていくと、二代目聖女のアウラの時代以降は、その量は半分か、それ以下に減っていた。

ただ、減ってはいたが無くなりはせず、少ない量のままで安定している。それが370年ほど続いていた。

そして今の時代、トルテが聖女になってからの記録では、少ない量だったものが倍以上に増えていた。聖女アウラの時代と変わらないくらいの量になっていたのだ。

「…っ」

トルテは他の聖女の倍以上の人数の呪いを解く事が出来る。それは勿論、狩られる獣の数もそれだけ増えるという事だ。自分が何に加担してきたのか、数字という揺るがない結果を見て、トルテは消えてしまいたくなる。

この、非道で利己的な行いはここで断ち切らなければならない。

トルテは、そう強く思ったのだった。

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