10 / 13
9.無能聖女、調べ始める
しおりを挟む
崩れ落ちてしまいそうになる足を必死で動かし歩いたトルテは、やっと馬車へたどり着いた。
「聖女様!!大丈夫ですか?顔色が真っ青ですよ!?」
「…大丈夫よ…、解呪の魔法を使った反動が出てきたみたい。早く王都へ戻りましょう…」
「やはり私もご一緒すべきでした…」
護衛の騎士が申し訳なさそうにトルテの顔を覗き込んだ。その顔は、本当にトルテの事を心配している様子で、少しほっとした。
「疲れが出てしまっただけだから、そんなに落ち込まないで…」
無理矢理笑顔を作ると、トルテは馬車に乗り込んだ。
馬車の中で一人になると、途端に身体に震えが戻って来た。
何故あのような非道な事が行われているのか、狩人たちの会話は一体何なのか。
教会で教わった事は嘘だったのか。自分が行ってきた事は一体何だったのか。
あの時、逃げずにやめろと叫べば、あそこにいた9人は助かったのではないだろうか。そんな事が頭の中をグルグルとまわっている。アカギツネの男の眼差しや、獣たちの最期の声がトルテの心を突き刺すのだった。
沈んだ心のまま王都の自宅へ戻ったトルテは、そのまま一週間も寝込んでしまった。
いつもよりも体調不良が長引いたのは、あの時見た光景のせいだろう。
その間も、夢の中で何度もあの光景を見た。この国でこんな非道な事が行われているとは信じたくない。しかし、自分の目で見た事もまた事実なのだ。
「真実を…本当の事を知らなきゃ…」
トルテはグッと手を握りしめ、覚悟を決めたのだった。
トルテは体調が回復するとさっそく調べ始めた。まずは教会でこの国の聖女の歴史を調べ始めた。
森の人々の呪いを解くという役目がいつから始まったのか、それが知りたかったのだ。まさか、初代聖女からあの非道な行為が行われていたとは思いたくない。
教会の保管庫にある古文書は、どれも古代語で書かれていて簡単に読める代物では無かった。この国でも、古代語を読める人間は数が少ない。
しかしトルテは第一王の婚約者であり、王妃教育の一環で古代語も勉強していたので読むのに苦労はしなかった。
保存の魔法がかかっているとはいえ、古文書は今にも崩れてしまいそうなほどに古く、文字がかすれて読めない部分も多く、読むのに時間がかかった。
何日も教会に通いつめ、何とか建国から100年までの古文書を読み解くことが出来た。
古文書によると、森にかけられた結界は、国境と同じく動物が入ってきても出られない仕組みは有ったようだが、それだけだった。聖女の役目も、国を護る結界の維持だけだった。
そこに変化があったのは、初代聖女が亡くなって二代目聖女の時代からだった。文章の記述に「呪われの森の結界」という文言が突然出てきた。そして、あの森で呪いを解くという役目が追加されていたのだ。
「二代目の聖女様から、すでにこの非道な行いが始まっていたの…?」
二代目の聖女アウラは、初代聖女が手塩にかけて育てた愛弟子として有名な聖女だった。そんな彼女の代から、この非道な行いが始まっている事にトルテは愕然とした。
しかし、愕然としているだけでは始まらない。次は当時のこの国の魔法素材の取引の書類を調べるべく、王宮の書物庫へ足を向けるのだった。
*----------------*
トルテの回想が続きますが、もう少しお付き合いください…
「聖女様!!大丈夫ですか?顔色が真っ青ですよ!?」
「…大丈夫よ…、解呪の魔法を使った反動が出てきたみたい。早く王都へ戻りましょう…」
「やはり私もご一緒すべきでした…」
護衛の騎士が申し訳なさそうにトルテの顔を覗き込んだ。その顔は、本当にトルテの事を心配している様子で、少しほっとした。
「疲れが出てしまっただけだから、そんなに落ち込まないで…」
無理矢理笑顔を作ると、トルテは馬車に乗り込んだ。
馬車の中で一人になると、途端に身体に震えが戻って来た。
何故あのような非道な事が行われているのか、狩人たちの会話は一体何なのか。
教会で教わった事は嘘だったのか。自分が行ってきた事は一体何だったのか。
あの時、逃げずにやめろと叫べば、あそこにいた9人は助かったのではないだろうか。そんな事が頭の中をグルグルとまわっている。アカギツネの男の眼差しや、獣たちの最期の声がトルテの心を突き刺すのだった。
沈んだ心のまま王都の自宅へ戻ったトルテは、そのまま一週間も寝込んでしまった。
いつもよりも体調不良が長引いたのは、あの時見た光景のせいだろう。
その間も、夢の中で何度もあの光景を見た。この国でこんな非道な事が行われているとは信じたくない。しかし、自分の目で見た事もまた事実なのだ。
「真実を…本当の事を知らなきゃ…」
トルテはグッと手を握りしめ、覚悟を決めたのだった。
トルテは体調が回復するとさっそく調べ始めた。まずは教会でこの国の聖女の歴史を調べ始めた。
森の人々の呪いを解くという役目がいつから始まったのか、それが知りたかったのだ。まさか、初代聖女からあの非道な行為が行われていたとは思いたくない。
教会の保管庫にある古文書は、どれも古代語で書かれていて簡単に読める代物では無かった。この国でも、古代語を読める人間は数が少ない。
しかしトルテは第一王の婚約者であり、王妃教育の一環で古代語も勉強していたので読むのに苦労はしなかった。
保存の魔法がかかっているとはいえ、古文書は今にも崩れてしまいそうなほどに古く、文字がかすれて読めない部分も多く、読むのに時間がかかった。
何日も教会に通いつめ、何とか建国から100年までの古文書を読み解くことが出来た。
古文書によると、森にかけられた結界は、国境と同じく動物が入ってきても出られない仕組みは有ったようだが、それだけだった。聖女の役目も、国を護る結界の維持だけだった。
そこに変化があったのは、初代聖女が亡くなって二代目聖女の時代からだった。文章の記述に「呪われの森の結界」という文言が突然出てきた。そして、あの森で呪いを解くという役目が追加されていたのだ。
「二代目の聖女様から、すでにこの非道な行いが始まっていたの…?」
二代目の聖女アウラは、初代聖女が手塩にかけて育てた愛弟子として有名な聖女だった。そんな彼女の代から、この非道な行いが始まっている事にトルテは愕然とした。
しかし、愕然としているだけでは始まらない。次は当時のこの国の魔法素材の取引の書類を調べるべく、王宮の書物庫へ足を向けるのだった。
*----------------*
トルテの回想が続きますが、もう少しお付き合いください…
0
あなたにおすすめの小説
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】
小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。
これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。
失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。
無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。
そんなある日のこと。
ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。
『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。
そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……
使い捨て聖女の反乱
あんど もあ
ファンタジー
聖女のアネットは、王子の婚約者となり、瘴気の浄化に忙しい日々だ。 やっと浄化を終えると、案の定アネットは聖女の地位をはく奪されて王都から出ていくよう命じられるが…。 ※タイトルが大げさですがコメディです。
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))
書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
王太子妃(仮)でしたが、聞いたこともない予言のせいで追放されました。ですから、今さら呼び戻されても困ります。
實藤圭
ファンタジー
王太子妃候補として、真摯に王子リオネルを愛し、支えてきたクラリス。
だが、王太子妃となるための儀式、婚礼の儀の当日、リオネルと聖女ミラによって、突如断罪され、婚約を破棄されてしまう。
原因は、教会に古くから伝わる「神託」に書かれた“災いの象徴”とは、まさにクラリスのことを指している予言であるとして告発されたためであった。
地位も名誉も奪われ、クラリスは、一人辺境へと身を寄せ、心静かに暮らしていくのだが……
これは、すべてを失った王太子妃(仮)が、己の誇りと歩みを取り戻し、歪められた“真実”と向き合うため、立ち上がる物語。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる