ライオンガール

たらこ飴

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第2章〜クラウンへの道〜

第41話 冷たいスコール

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「そろそろお前をクラウンとしてデビューさせたい」

 ギアナ公演を終えたある休日の朝ルーファスに言われ、私は瞬きを数百回は繰り返したかもしれない。

「ピアジェはまだ早いと思ってたらしいが、クラウンを出せという問い合わせが殺到してな。お前も基礎的な技術は大分付いてきたし、クラウンも様になってきたから、デビューしてもいいんじゃないかと俺は思ってる」

「やったぁ!! ありがとう、ルーファス!! やっぱり君は最高だよ!!」 

「だが、どんなショーをやるかスキットの脚本を書いて、皆の前で演じてピアジェにOKをもらわなきゃいかん」

 脚本は私が自由に考える。アイデアノートに書いた寸劇の脚本をルーファスがチェックしトレーニングルームで意見を交わしながら修正を加え、動作を修正したりどの部分を観客に1番観せたいか、特に集中して練習すべきかなどを議論する。

 練習を重ね動きができてきたら団員たちとピアジェに観てもらう。そこでウケてOKが出ればそのままショーとして本番で使えるが、今回ピアジェから10回以上NGを喰らってしまい、散々駄目出しを受けそのたびに最初から脚本を書き直し練習し直した。その分私のデビューまでの道のりは長くなった。

 ジャグリングも最初に比べたら上達した。傘回しの難しい技だってマスターしたし、綱渡りだって足にマメができるほど必死にやってできるようになった。でも私は曲芸師じゃない。スキットがウケるようでなければクラウンとして胸を張ることはできない。

 困ったことに、「つまらん」とNGを喰らえば喰らうほど面白いことが浮かばなくなっていく。何が面白くて、何が正解で間違いで、これ以上どうしたらいいのか?

 途方もない問答の繰り返しで書いたもの全てが失敗なような気がしてきて、遂には脚本を考えることすら苦痛になってきて、せっかくできた脚本をぐしゃぐしゃに丸めてゴミ箱に捨てた。

「もう一生デビューなんてできないんじゃないかな? 僕はクラウンに向いてないのかもしれない。こんなにNG喰らうなんてどうかしてるよ」

 泣き出したい気持ちでライオンの檻の前でレオポルドに語りかけていたら、アルフレッドがコリンズを肩に乗せて現れた。

「ネロ、そんなに落ち込むなよ」

「落ち込むよ」

「俺は君のショー、面白いと思うよ」

「だけど、ピアジェはつまらないって……」

「アイツの言うことなんか気にするな。笑いのツボなんて人それぞれ違うし、アイツは元々ジョークセンスが皆無だ。僕も散々酷い目に遭わされた。一つだけ言えるのは、アイツがNGを出しまくるってことは、君にはアイツが羨むくらいの才能があるって意味だよ」

「……つまり、どういうこと?」

「アイツは才能のある人間が嫌いなんだ。自分が夢を絶たれた立場だから、誰かが認められたり頑張ってるのを見るのが嫌なんだ。だからわざと邪魔をしようとする」

「なら一生OKなんて出ないじゃないか」

「僕がアイツに言ってやってもいいぞ、ネロをショーに出せ! って」

「ありがとう、アルフ。僕、自分でピアジェに直接どこが悪いのか聞いてみるよ」

 何故ピアジェはNGを出すのか? どこを直せばいいのか? 質問しても返ってくる答えは「とにかくつまらん」。他のメンバーは笑っているのにだ。納得できるわけがない。
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