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2章 学校編
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しおりを挟むせっかくお小水で濡れたズボンを拭いたのに。
ばしゃーっと冷水をかけられて今度は全身ずぶ濡れになってしまった。
僕はバケツの水をかけられるその時まで何が起きたかわからず、「ヒャッ」という女声を高らかにあげてしまい……。
お陰で、自分の教室にいたクラスメートや、隣のクラスの人まで各自の教室から顔を覗かせて注目を浴びる羽目に。
すると、例の4人衆が今度は先程までとは態度をガラリと変えて、
「なーに、やってんの!」
「どじだなぁ。お前は」
「足を滑らせてバケツの水をこぼすどころか、頭から被るなんて」
「みっともないぞ」
他クラスの生徒が見てるからか、手を差し伸べてきた。
(さっきまで僕をいじめていたやつはどこのどいつだよ。いじめてきたのはお前らなのに……)
「体裁は気にするんだ……」
と、悔しさで口をへの字に結ばせて、握りしめた両手をわなわなと震わせながら、微かに言葉を漏らした。
この捨て台詞がせめてもの報復だと自身に言い聞かせながら、右手の握り拳を少し緩め、袖口で顔にかかった水を拭き取る。
みじめ、残酷、悔しい。
いじめてきた当の本人の彼らの差し伸べてくる偽りの情けに、一糸を報えない自分の不甲斐なさに呪いのようなダークな感情の支流が一本の奔流となって止めどなく溢れ出す。
「僕は……僕に……お前らの情けなんか欲しくなんか思わない!」
はっきりと明瞭な声で言い放てた。
言えたよ、やっと。
僕自身、普段強くものをいえない性格なのに、たった今、“発言”をすることができた。
言いたいことや自分の気持ちをろくにいえない辛酸を舐める卑屈で退屈な日々とおさらばできたような嬉しさで、僕の顔に太陽のような煌々と照らす明るさが戻った。
すると、どうだろう。
へへへっという癖のある笑いを唐突に漏らしてしまった。
ただ笑いたくなったのだ。
理由はそれ以上でもそれ以下でもない。
ただ、唐突に。
だけど──。
それが、彼らの尊大な自尊心を傷つけ、新たないじめのとっかかりを産み出すことになった。
それは僕への関心をなくし定位置に収まるように教室の中に入っていくクラスメートたちを見送った間もないときだった。
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