世界は妖しく嗤う【リメイク前】

2章 学校編

28

「なるほどね、その線から行けば、パスワードは、笹野”先生だから、sasanoであり、数字は学校だから受け持つ教室の番号だと。つまり、3年2組であり、3_2、である可能性が高いわけだ」
　
　二人の推理を聞いて、僕の頭の中で、予想されるパスワードが羅列された。
　ここまでに使用された文字数は9文字。
　後一文字が足りない。
　さらに二人の知恵を借りよう。
　
「それで、今のパスワード候補だとsasano3_2で9文字と足りないわけだが、どう推理する？」
　
　僕が橋口に質問しようとするときに、笠井は橋口の代わりに口を開いた。

「それは簡単だよ。アットマークまたはアンダーバーだと予想するね」
「根拠を聞こうじゃないか？　笠井探偵くん」
　
　橋口の言う笠井探偵くん、という響きには少しおかしくて笑ってしまった。
　
「笠井探偵……くん……か。悪くないな」
　
　笠井は昔を懐かしむような遠い目をしながら、つぶやいた。
　
「おいおい、けなしたつもりだったのによぉ。遠い目してないで根拠を話せよな！」
　
　橋口は笠井探偵くんをからかいながらも、無視されかけている質問に引き戻した。
　ナイスだぞ、橋口。
　
「僕も根拠を知りたいとこだ」
「良いだろう、二人とも。……って言われても単純な予測に過ぎないよ。　良いの？それでも」
「ああ、構わない」　　
　
　一通りの話を聞いて、わかったのだが、「笹野」と「3年2組」の間にアットマークまたはアンダーバーをつけるのが一般的な考えとして挙げられる。
　さらにいえば、解きたいパスワードは3年2組の担任笹野先生のものであり、仕事用だと容易に予想がつく点から、比較的単純な　sasano_3_2　だと推測はできる。
　よし、満を持して、入力してみようではないか。
　
「では、解除をしてみるぞ！　覚悟は良いな？」
　
　二人は生唾を飲んで僕の入力が終わるのを見守る。カタカタと入力をおこない、決定を押す。
　僕は事件にまつわる手がかりに、橋口と笠井はAVをみていた形跡の存在の手がかりに、期待を寄せて、ひたすらパスワード解除の成功を祈った。
　パスワードの認証が始まった。
　PCの画面がウィンウィンと動作する音が聞こえる。
　解除なるか……。
　さぁ、中身を見せて貰おうではないか、頼みますよ、笹野先生。