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第2章
1話 ネクロマンサー、神を訪ねる
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「さて、早速だがお前たちにはあるお方に会ってもらう」
先の戦いの余韻が未だ収まらないこのタイミングで、魔人フォルニスは俺達へそう言い放った。
フィルカ、ミスト、ミルア、ヴィクト、そして俺レイル。
皆ヴァルファール王国復興のために忙しく動いていたのだが、フォルニスが引っ張ってでも全員を連れてこいというので無理言って集まってもらったのだ。
「あるお方? それは一体誰? わたしたちの、知らない人?」
「既にお前には聞きたいことが山ほどあるんだが、またさらに俺たちの疑問を増やすつもりか?」
「否。むしろその逆だ。我が今まで隠し続けていたこと、それを話す時が来た。ただ――」
「……ただ?」
「話すのは我ではない。お前たちに真実を告げるのは我が主――」
スッと、左腕を高く掲げた。その手の内には、アビスストーンに酷似した塊。
フォルニスが軽く口角を上げると、その塊から強い紫色の光が発して一瞬のうちに俺達を包み込んだ。
そして視界が開けると、そこは――
「人族神アルティマ様だ」
狭間の神塔。
アイツはこの場所を、そう呼んでいた。
物理的にあり得ない、奈落に向かって伸びる美しい巨塔。
その入り口で、腕を組みながら待つ少年が一人。
魔界へ旅立とうとする俺たちの前に立ちはだかり、一時フォルニスをけしかけて殺そうとしてきたアイツがいた。
「やぁ、久しぶりだね。ネクロマンサーくんとそのお仲間さんたち。元気そうで何よりだよ」
彼は子供のような無邪気な笑顔で小さく手を振り迎えてくれたが、強制的に連れてこられたばかりの俺達は状況の整理が追い付いていない。
人族神――つまりは、人間族を生み出した種族神ということか。
やはり黒フードが言っていた神はコイツだったという事だな。
何となく察してはいたけれど、今ここではっきりと知ることが出来た。
「あぁ、この姿については気にしないでね。ボクの力で作った映像みたいなものだから。こうでもしないとキミたちはボクを満足に認識する事すらできない。それだと落ち着かないだろうしね」
相変わらずの尊大な口ぶりだ。
だけどきっとその言葉に偽りはないのだろう。
現に依然ここを訪れた時は、アルティマの姿形をとらえる事が出来なかった。
目の前に立っているはずなのに、そこに本物はいないとすら感じたくらいだ。
「フォルニス。ご苦労だったね。後の事はボクがやろう」
「はい。ありがとうございます」
「さて、どこから話したものか。まずはボクの眷属、聖竜アズラゴンの件に関しては感謝しているよ。まさか魔界でそんなことが起きているとは思わなかった」
「……ああ、あの竜は本当に手ごわかった。少しでも作戦が嚙み合わなかったらこっちが死んでいた」
「それだけじゃなく、彼を魔障に堕とした張本人と対峙したそうだね」
「……ああ、あの黒フードか」
――人間界をいただく。そのためには戦争だ。
魔障竜との戦いを終えた俺達の前に現れたあの奇妙な男。
聖竜を魔障に堕とした張本人と名乗り、人間界に攻め込むと言っていた。
「何者なんだ、アイツは? 自らを魔族の解放者とか名乗っていたが」
「これは推測も混じるけれど、恐らく奴はボクと対を成す神――魔族神ディアブレル、もしくは彼の手の者だと思っていい」
「魔族神ディアブレル、だと?」
「……あれがわたしたち魔族の、神?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! レイルくんもみんなも! いきなり神とか言われても唐突過ぎて何が何だかさっぱり分からないんだけど……」
ああ、そうだった。ヴィクトの事をすっかり忘れていた。
ヴィクトは俺達と違いこの場所に来たこともなければ、アルティマと話した事すらない。
そもそも今どういう状況にあるのかすらも全く理解できていない事だろう。
「……再確認の意味も込めて、一から説明してもらえるか?」
「そうだね。ではまず改めて自己紹介から行こうか。ボクはこの世界を生み出した二大神の片割れにして、人間族の生みの親。人族神アルティマだ。そして――」
「人族神アルティマ様と魔族神ディアブレル様の二神によって生み出された原初の種族――魔人族のフォルニスだ」
「そう。フォルニスは人間族と魔族のハーフではなく、ボクたち二人がさいしょにつくりだした知性ある種族、と言う訳だ」
ハーフではなく原始種。
俺がフォルニスにハーフなのかと聞いた時に、遠くはないが根本が間違っていると言っていた理由がこれか。
見誤っていた。ただのハーフが神の使いになるわけもない、か。
「そしてここは人間界と魔界を繋ぐダンジョンの中間層、狭間の世界。キミたちは既にあの黒フードからこの世界のことをいろいろ聞かされたそうだけど、大方それは真実であると認めよう」
「――っ!!」
「そしてそれについて語るには、遥か昔。ボクたちがまだ地上にいた頃の話をしなければいけない」
さて、どこから話したものか。
そう言ってアルティマは一呼吸置き、ゆっくりと口を開いた。
先の戦いの余韻が未だ収まらないこのタイミングで、魔人フォルニスは俺達へそう言い放った。
フィルカ、ミスト、ミルア、ヴィクト、そして俺レイル。
皆ヴァルファール王国復興のために忙しく動いていたのだが、フォルニスが引っ張ってでも全員を連れてこいというので無理言って集まってもらったのだ。
「あるお方? それは一体誰? わたしたちの、知らない人?」
「既にお前には聞きたいことが山ほどあるんだが、またさらに俺たちの疑問を増やすつもりか?」
「否。むしろその逆だ。我が今まで隠し続けていたこと、それを話す時が来た。ただ――」
「……ただ?」
「話すのは我ではない。お前たちに真実を告げるのは我が主――」
スッと、左腕を高く掲げた。その手の内には、アビスストーンに酷似した塊。
フォルニスが軽く口角を上げると、その塊から強い紫色の光が発して一瞬のうちに俺達を包み込んだ。
そして視界が開けると、そこは――
「人族神アルティマ様だ」
狭間の神塔。
アイツはこの場所を、そう呼んでいた。
物理的にあり得ない、奈落に向かって伸びる美しい巨塔。
その入り口で、腕を組みながら待つ少年が一人。
魔界へ旅立とうとする俺たちの前に立ちはだかり、一時フォルニスをけしかけて殺そうとしてきたアイツがいた。
「やぁ、久しぶりだね。ネクロマンサーくんとそのお仲間さんたち。元気そうで何よりだよ」
彼は子供のような無邪気な笑顔で小さく手を振り迎えてくれたが、強制的に連れてこられたばかりの俺達は状況の整理が追い付いていない。
人族神――つまりは、人間族を生み出した種族神ということか。
やはり黒フードが言っていた神はコイツだったという事だな。
何となく察してはいたけれど、今ここではっきりと知ることが出来た。
「あぁ、この姿については気にしないでね。ボクの力で作った映像みたいなものだから。こうでもしないとキミたちはボクを満足に認識する事すらできない。それだと落ち着かないだろうしね」
相変わらずの尊大な口ぶりだ。
だけどきっとその言葉に偽りはないのだろう。
現に依然ここを訪れた時は、アルティマの姿形をとらえる事が出来なかった。
目の前に立っているはずなのに、そこに本物はいないとすら感じたくらいだ。
「フォルニス。ご苦労だったね。後の事はボクがやろう」
「はい。ありがとうございます」
「さて、どこから話したものか。まずはボクの眷属、聖竜アズラゴンの件に関しては感謝しているよ。まさか魔界でそんなことが起きているとは思わなかった」
「……ああ、あの竜は本当に手ごわかった。少しでも作戦が嚙み合わなかったらこっちが死んでいた」
「それだけじゃなく、彼を魔障に堕とした張本人と対峙したそうだね」
「……ああ、あの黒フードか」
――人間界をいただく。そのためには戦争だ。
魔障竜との戦いを終えた俺達の前に現れたあの奇妙な男。
聖竜を魔障に堕とした張本人と名乗り、人間界に攻め込むと言っていた。
「何者なんだ、アイツは? 自らを魔族の解放者とか名乗っていたが」
「これは推測も混じるけれど、恐らく奴はボクと対を成す神――魔族神ディアブレル、もしくは彼の手の者だと思っていい」
「魔族神ディアブレル、だと?」
「……あれがわたしたち魔族の、神?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! レイルくんもみんなも! いきなり神とか言われても唐突過ぎて何が何だかさっぱり分からないんだけど……」
ああ、そうだった。ヴィクトの事をすっかり忘れていた。
ヴィクトは俺達と違いこの場所に来たこともなければ、アルティマと話した事すらない。
そもそも今どういう状況にあるのかすらも全く理解できていない事だろう。
「……再確認の意味も込めて、一から説明してもらえるか?」
「そうだね。ではまず改めて自己紹介から行こうか。ボクはこの世界を生み出した二大神の片割れにして、人間族の生みの親。人族神アルティマだ。そして――」
「人族神アルティマ様と魔族神ディアブレル様の二神によって生み出された原初の種族――魔人族のフォルニスだ」
「そう。フォルニスは人間族と魔族のハーフではなく、ボクたち二人がさいしょにつくりだした知性ある種族、と言う訳だ」
ハーフではなく原始種。
俺がフォルニスにハーフなのかと聞いた時に、遠くはないが根本が間違っていると言っていた理由がこれか。
見誤っていた。ただのハーフが神の使いになるわけもない、か。
「そしてここは人間界と魔界を繋ぐダンジョンの中間層、狭間の世界。キミたちは既にあの黒フードからこの世界のことをいろいろ聞かされたそうだけど、大方それは真実であると認めよう」
「――っ!!」
「そしてそれについて語るには、遥か昔。ボクたちがまだ地上にいた頃の話をしなければいけない」
さて、どこから話したものか。
そう言ってアルティマは一呼吸置き、ゆっくりと口を開いた。
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