ラスボス推しなので! 魔王の破滅フラグ折って溺愛されます!??

モト

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ゲーム内で見たことのある都。グルグルと一回転、二回転して周りを見た。

レンガや木で出来た家々。

アドルフ王子やレーベンと出会った時代よりも過去だ。道具などもよく見ると原始的で未発達さを感じる。


「え? いつ寝ちゃってたんだろう!? 木苺採っていたのは夢? え? もっと先? レーベン様とサンドウィッチ食べて日向ぼっこしている時に寝ちゃってたとか?」


夢ならば覚めろ~~っと頬をつねった。頬が痛むだけで夢から覚める気配はない。

だが、夢だと気付いたからか、瞬きをした瞬間、景色も場所も変わった。


「え……」


今度は、人間の街のようでいて、そうではない、魔族と魔獣が多く住む都だった。

俺は周りを見た。少し先の向こう側を見ると空だ。

「魔界……!?」

どういう原理かは知らないが、魔界は空の上にある。高いむき出しの山からは滝が流れている。その下でユニコーンが水浴びを……わひゃぁ!! 生ユニコーンだ!! 神神しすぎる!!

自然豊かで穏やかな所で、魔族と人間が交戦しあっている様子もない。

この魔界もまた過去の魔界だと思った。


俺の前を魔族がすぅっと通った。

俺からは魔族がハッキリ見えるが、夢だからか魔族からは俺が見えない。


俺の横にいた猫型のレーベンが前を通る。レーベンが通ると、魔族達が首を垂れている。

レーベンは魔族から慕われているように見えた。それは恐怖でというより親しみに近い物を感じる。レーベンもまた毛並みを逆立てることもなくゆったりとした歩調だ。

緑豊かで、沢山の魔族と魔獣が住む。


こんなに再現率高く夢に出来るなどとは俺の想像力にはおったまげるぜ。


色々魔界を堪能したい。夢でしか見られそうにない魔界の生き物達を見るのだ! そう思って一歩歩いた瞬間、また違う世界になった。



「———えぇ……」

今度は城だ。

人間の住む城。魔界の様子を見たかった俺はガッカリした。


レーベンが城のバルコニーから城下町を見ていた。お祭りなのかとても賑やかだ。

国の王だろうか、その王がバルコニーから手を振った。レーベンは王の肩にトンと乗った。


「レーベン様……と王?」


俺は、エピソードを思い出していた。レーベンは、一人の人間を気に入った事があった。

その男は一国の王だ。

農作物が実っては祭りを、雨の恵みに祭りを、神に祈って祭りをする国だった。

レーベンも祭りの音が気に入り、この国に住み着いたのだ。

「……」

再び、俺は、レーベンと目が合っている気がした。

今なら、俺の声が聞こえるかもしれない。


「レーベン様、そこにいてはいけません! 俺と一緒にこの国を出ましょう!!」


そう、猫のレーベンを手に抱こうとした。たが、やはり本体に触れられない。

目が合っているのは気のせい……。


「レ―ベン様」

レーベンは王の膝に乗った。そして、王はレーベンの身体を撫でた。

二人は信頼しあっているように見えた。


その光景に何故か、もやっとした気持ちになる。

ゲーム内ではここまでストーリーがなかった。これは俺が勝手に見ている夢なのか?

目を背けた一瞬、また場面が変わった。





今度は、民衆達の罵声が城に鳴り響いた。王の事を一様に罵倒している。

豊かであった国は一転した。

何日も雨が降らず、農作物は枯れ、また、それに伴う疫病も発生した。


王は、祭りをなくし、国の予算を民衆の補助金に当てようと動いた。だが、王には裏切り者も多かった。側近である何人かが私腹を肥やしていたのだ。


王は、善い行いをすれば、自分に返ってくる。そうした考えの人間であった。それを国民にも普及しており、他の者も自分と同じだと思っていたのだ。

レーベンは何度か、王に知らせた事があった。だが、王は魔物であるレーベンの言葉を聞き入れなかった。むしろ、そのような事を囁くレーベンが悪だと言い放ち、二体の間に亀裂が入った。


「何故、こんなに予算が足らぬのだ!」

気付いた時には、手遅れだった。愚王として民衆からも王宮の中からも反感を浴びた。

さらに、王が、国の金を横領しているのではないかと囁かれるようになったのだ。

「私は、横領などしておらぬ!」


一つの疑惑がどんどん信用を落とした。誰も王の言葉に耳を傾けなかった。投獄され、ついに、処刑される事となった。

処刑の前日、離れて様子を見ていたレーベンは王を逃がそうとした。

だが、王は逃げなかった。


「人間の言葉を話す化け猫め! お前がやってきてからロクな事はない!」


王はもう人々の全てに裏切られて何が正しいのか自分で判断できなくなっていた。助けに来たレーベンを蔑む言葉を浴びせた。

やせ細り、目は窪み、不眠でクマが出来ていた。以前の精悍な王とは比べようもならない王の変わり様。



レーベンは何も言い返さなかった。俺はそんな彼の後姿を悲しい気持ちで見ていた。


ゲームストーリーでは、人間目線で書かれていたから、これではなかった。信じた王に罵声を浴びせられ、人に対する嫌悪が描かれていたのだ。


だが、今、目にしているレーベンの後ろ姿は項垂れていて、純粋にこの王の言葉にショックを受けているように思えた。



「……レーベン様、行きましょう」

俺は、声をかけた。レーベンは俺が声をかけたタイミングで振り返り、そうして王から離れた。


死刑決行直前に、死刑会場に向かった王を側近たちが大笑いしている、国民たちが王に石やゴミを投げつけた。

それを、レーベンは近くで見つめていた。


本当に人の事を嫌悪していたのなら、彼ならとっくの昔にこの国を離れていただろう。


黙っていた彼は、空の一点を見つめた。

すると、空高く、空高くに、一つの光が誕生する。どんどんその光は大きさを増し、見つめるのが辛くなるような輝きを放った。


あれは、もしかしなくてもプロローグに出てくる光の玉!?



その異変に国中の人は気付いた。予言の出来る占い師、察しのいい人間の何人かが、ここに落ちると気付き、国民はすぐに移動を図った。


「あ……あれ?」

人の避難がが上手くいっている。

俺はレーベンと共に逃げゆく人間達を交互に見た。あれれ? 俺が想像していたものと違う。

……残るは、処刑台の上に立つ王のみとなった。


レーベンは王の前に立った。王の手錠を魔法で外した。


「ははははは」


王は笑うだけで動かなかった。

大きな光の玉は下に落ちてくるごとにスピードを上げる。ついに炎を上げて急加速してきた。


その光の玉が地面に落ちた時、あ……これ、死んだ。と本気で思った。バァンと目の前が突風と光に包まれて目を瞑っても瞼が赤く光っている。

暫く目を開けていられなかった。

やけに静かになった時に目を開いた。俺達……レーベンと王の立っている処刑台以外は見事になくなっていた。

城も城下町も丸ごと全て吹き飛んでしまった。



レーベンと王はかすり傷一つ負っていない。誰も死人はいない。

「よ、よかった」

俺は、素直にそう思った。全然エピソードと違うじゃん。流石、俺の夢!!

なんだかんだ、ハッピーエンドを俺の脳内で作り上げていたのか!


王はその地を見て、目を見開き涙を流していた。王を裏切った世界だ。これで王への責任も何もなくなり、王は自由になるだろう。


そんな王に何も言わずレーベンは背を向けた。


うん。恩着せがましくしない所なんて本当にレーベンっぽくて格好いい。

よかった。この話はこれでおしま…………


そう思った瞬間、王が横に置かれていた斧をレーベンに叩きつけた。

「!!」


「貴様っ!! 私の国に何をした!! この化け猫め!! 今まで飼ってやった恩をあだで返しよって!!」

「!」

猫の身体をがっしりと掴み何度も斧を叩き下ろす。


「何やってるんだっ!! レーベン様はお前を守って!」

俺は、レーベンを守ろうと、王の身体を押さえようとするも、虚しく身体がすり抜け、勢い余って転がる。


「レーベン様!!」

王の顔はもう正気を失っていた。何が正で悪なのか分かっていない。

レーベンは気を失っていた。


俺が、守ってあげなくちゃ!!

無残に横たわるレーベンを包んだ。だけど、俺が触れてもすり抜ける。包むだけで何もならない行為。

こんなことってない。

「やめて!」


俺が彼のエピソードで知っていたのは、王と仲良くなったレーベンが人間への不信を募らせてこの地を破壊したという事だけ。


全然、何もかも違うじゃないか……。


掴めない。彼の身体を抱きしめてあげられない。何も出来ない……。




涙が溢れて零れた次の瞬間、また場面が変わった。

レーベンは真っ暗い中で鎖に繋がれていた。冷たい床、高い天井、分厚い鎖。———ここは、もしかして塔の中?


「レーベン様……、レーベン様、大丈夫ですか? 何も知らなくてごめんなさい。俺、知ったかばかりで知らなかったんです」


横たわるレーベンに駆け寄る。傷が塞がっている。良かった。良かった……。


その時、部屋の扉が開いた。


そこに現れたのは王だ。だが、あの時の痩せこけた王の姿ではない。

もしかして、あの光の玉を落としてから随分経っているのか?


王は鎖に繋がれているレーベンを見ても無表情で、何にも感じていないようだった。


「私も情けがある。命はとらぬ。この塔の中で生涯を終えよ」


王は、レーベンが何故あぁして光の玉を落としたのか、その部分がごっそり抜け落ちているようだった。


俺は、知っている。この男の見た目。プロローグで『一体の魔により放たれた』と隣国に吹聴したのだ。

この男が全ての元凶。許せない気持ちが湧き上がってくる。


レーベンは、男が出て行った後、じっとその扉を見ていた。レーベンがもし王に怒っているのならば、王を消滅させるくらい鎖が繋がれていても他愛もない事だっただろう。


その深く傷ついたその身体も心も抱きしめたくて仕方がなかった。通り抜けるとわかっているのに、レーベンの身体に抱き着く。


「俺が必ず迎えにいきますから……」


やはり触れられなくて、撫でる事が出来なくて、悲しい気持ちになる。

レーベンの耳がピクリと動いたが俺の声はきっと届かない————……。




また、俺は移動した。

今度は冷たくて真っ暗な闇の中だった。彼はどこに行ったのだろう。何も見えない。

少し月の光で、レーベンの姿が目に入った。

「レーベン様」

レーベンは少しの月の光を見ていた。


こんな暗い所で、ずっと独りで淋しくはないだろうか。

「レーベン様、寒くありませんか?」

俺は、彼に寄り添った。

きっと、淋しいに決まっているから、適当な事を話しはじめた。独り言は得意だから、季節の事や、人間の事を話す。


「……それをレーベン様にも食べてもらいたいなぁ」



俺は何度か時間を移動した。

移動しても真っ暗な塔の中だった。それは、彼が何百年もこの塔の中にいた証に思えた。

生き物がこんな長く暗くて狭いところにいられるはずないんだ。

魔王にならないでなんて、俺が馬鹿だった。

「俺がレーベン様なら、とっくの昔に魔王になってますよ! 何が人間だ! 人間の馬鹿! 人間の馬鹿野郎ーー!!」

ドンドン憤りを感じて俺は人間に怒り始めた。無我夢中で人間に怒り散らかした。


すると、クスリと笑う声が聞こえた。


「———え?」

レーベンがこちらを見た。

何度か、目が合った気がしていた……。俺は、レーベンの身体に手を差し伸ばした。だが、やはりスルリと通り抜けてしまう。


「やっぱり、駄目。気のせいだったかな。…………気のせいじゃなかったらよかったのに」


触れられない身体に抱きしめるように腕を回した。

何故か、とても温かい…………温かい? というか、熱い? 





次の一瞬、レーベンはいなくなり、真っ暗な世界が広がる。

「————熱い!! 熱すぎる!! 何かが燃えているみたいだ! 見えないけれど、燃えてるの!?」


その真っ暗な空間が急に赤く破れ始める。まるで強い力がその空間を破いているような、破れ方。



「————ぎゃっ熱い!! 火傷するぅ!」


あまりの熱さに目を開けた。

すると、レーベンが手から炎を出し、樹木を燃やしていた。

「————……へ?」


俺はと言うと、木の下で地面にそのまま寝てしまっていたようだ。

ここは、森の奥……??

え? レーベン?


「レーベン様?」

俺が声をかけるとレーベンは振り向いた。

そして、次の一瞬でその燃え上がる樹木は灰になった。

「森の精霊にやられたね。精霊は気に入った生き物を捕えて木や土地の肥料にすることがあるからね」


「レ、レーベンさ、ま?」

俺がもう一度呼ぶと、彼は俺の近くに来てしゃがんだ。

「なんだい? ケガもなく君はよく眠っていた」


レーベンが真っすぐに自分を見て語りかけてくる事に涙が溢れてきた。


「ホツ……?」

「レェベンさ、まぁ……、うぅっ、変、ですよね……。 俺、寝ていたんですよね? なのに、夢かどうかわからなくて、悲しくて……」


そう言っている間も涙が止まらない。

夢にしてはあまりにリアルで、最後はもう夢か現実か分からず、怒りたくて叫びたくて仕方がなかった。


「大丈夫かい?」

「……ごめんな、さい。なんで泣き止まないんだろう。……多分、ホッとしたんです。レーベン様とお話し出来て嬉しい……」

大人の男が大泣きしているのはおかしいではないか。なのに、涙が止む気配がない。


「夢に……いつまでも捕らわれて泣くのは……恰好悪いですね」

「夢に捕らわれて?」


レーベンは、眉間を寄せて少し考えてから話した。

「私にも分からぬ事がある。君を一瞬見失った。不思議な事に君の存在が消えたように感じたのだ。ホツ、すまなかったね。怖かっただろう」

レーベンが座りんで、俺をそのまま横抱きに抱き込んだ。


「……うっ……レーベン様に触ってもらえて、……うぅ……俺ぇ、うれしい、っす! レーベン様の傍にいられてよかったぁ!」

「……」

俺はそっとレーベンの身体に触れた。さっきは触れることが出来なかった。

彼の肩に手を置き、撫でながら、背中に手を回した。






あの時、レーベンも俺も山を下りて帰ろうとしていた。

木苺をとった俺は、そのままいなくなったのだそうだ。レーベンの目から見てもあまりに不思議な事だったそうだ。


すぐに俺が木の下にいる姿を発見したそうだ。木に巻き付かれた状態の俺を見て、精霊の仕業に思ったようだが、俺が、いなくなった現象はもしかしたら違うのかもしれないと首を傾げていた。


「木苺、潰れていなくてよかった。一緒に食べましょう」



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