ラスボス推しなので! 魔王の破滅フラグ折って溺愛されます!??

モト

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シドルの口が「みつけた」と動いた。



「げっ!! レーベン様っ!! すぐ帰りましょう!!」


レーベンの腕を引っ張ってシドルから離れようとするが、あまりにシドルとの距離が近すぎた。

シドルは、まるで暗殺者のように足音を立てない小刻みの走り方で俺とレーベンの後に張り付いた。


「ねぇ? なんで逃げるの? 悪い事したの? してないなら逃げるのやめなよ」


振り向くと、シドルが二コリと笑った。以前よりも実力がアップしている。俺達が出て行った後、魔族との戦いで実力をつけたか?


「城から黙っていなくなったのは、悪かった! あと、バイクに似た乗り物を盗んだのも! でも、見逃してくれないか!!」


シドルは俺が言った事に「ん~」と少し考えて言った。


「何かホツは勘違いしているよ。ホツが城から出た事は何も責めていない。話は別の事だよ。そこの美形のおにーさんにもね」


シドルが俺からレーベンに視線を移した。細目が怪しく光ったと思ったら、ニパッと笑顔が作られた。


「んじゃ、三人で俺の泊まっている宿屋でおしゃべりしようか」

「そう言って罠じゃ……」

「私は、話くらいなら構わないよ。面倒なら消滅させればいいだけのこと」


さらりと殺害予告をするレーベン。シドルの笑顔も一瞬凍りつく。

「……じゃ、行こうか」

そう言って、シドルは宿屋へ案内した。



アドルフ王子の側近であるシドルが護衛もつけず一人で出歩いている事自体おかしい。いつ罠にはめられるか分からないので、レーベンの手をぎゅうっと握る。


「ふ。なんだい。甘えただね」

「違います! 挟み撃ちや騙される事があるやもしれません! はぐれないように手をしっかり繋いでおかないと!」

そう言うと、何がおかしいのか、くくくくくっと笑う。



「———……ホツ、安心して。本当に僕だけがここに来ているから。さぁ、着いた。どうぞ」


シドルに案内された部屋には、ベッド一つにサイドテーブルと小さいクローゼットがあるだけ。他に人の気配もしない。

とりあえず、レーベンが捕まらないように先に俺が入って調査する。


「ふーん。そのイケメンにホツが洗脳されたとかじゃないね。ホツが自分から城を出たのか」


シドルは腕を組んで俺の様子を見ている。探り合いには向かないので、直球で聞く。


「シドル、どうして俺を探していた?」

「んっとね。まぁ、順を追って話そうか。あ、紅茶どうだい?」


不要だと言うと、シドルは自分の分だけ紅茶を注ぎ始めた。

そして、また、自分だけ椅子に腰をかける。こういう時はお客様に座るように声をかけるのがマナーではないだろうか。いいけど。



「……ホツが城を出て行った後、北の塔を見に行くと、よく似せた偽物が残されていた。本物の魔獣はホツが逃したんだとすぐに分かったよ」

「……」


流石、シドル……。疑り深い性格をしているだけあって、よく周りを見ている。

いざとなれば、荷物を結ぶ用に持ってきていた縄でシドルの身体を拘束して逃げよう!!



「災害級と言われる魔獣が外に解き放されて何が起きるのか、俺達は急ぎ戦いの準備をしたよ」


だが、起きなかった。とシドルが続けた。

当たり前だ。レーベンは俺とモフモフ癒されライフを送っているのだからな。


「じゃ、いいじゃん。そのまま俺の事も放置すればいいだろう?」


「だけど、悪い事が起きた。それが何か、そこにいる美形のにーさんなら分かる? 君、北の塔の魔獣でしょ?」

「っ!!!!」


そこまで分かるのか!? 


もうこうなっては! と、鞄の中から縄を取り出す。


「……カマかけられているよ。相手はホツの反応を見ているだけだよ」

「———……え?」

「うん。全然確信はなかったけど、ホツの反応で分かったかな?」


シドルがペロリといたずらっ子みたいに舌を出した。

俺の反応を見て……って、こ、この野郎ぉ~~!!!! 



俺が、凄い顔を歪ませている中、シドルは再び話を始めた。

「君はずっと北の塔の魔獣の事ばかり。性格は一生懸命な裏表ない性格。そんな子が魔獣よりただのイケメンを選ぶとはどうも考えにくい」

「———……」

「なら、魔獣がイケメンに変化出来ると考えた方が早い」


はぁ、っとわざとらしい溜息をレーベンがついた。

「面倒くさいから早く話を進めてくれ」

「———……北の魔獣。君は僕が憎いだろう。だが、話を進めるよ」



改めてレーベンが北の塔の魔獣だと確認したシドルには緊張と警戒を感じる。

そうか。シドルはレーベンが北の塔の魔獣だと疑って俺を探しに来た。危険を承知でこの場に話しに来ている。

ようやく、俺も彼の話をまともに聞く気になった。



シドルの話では、俺とレーベンがいなくなった後も魔族達の襲来は続いているそうだ。俺が教えた戦い方や魔族の情報は役立ち戦いも有利になった。


だが、城を攻撃されて一部破壊された。今まで、どんな攻撃でもびくともしなかった城が、魔族の攻撃で破壊されたのだ。

その後も城への攻撃が続き、被害が相次いだ。

このまま魔族の攻撃が続けば、城は大破し、国の機能が一時停止して、国も国に住む人々も危なくなってしまう。



アドルフ王子達は、強い魔族の攻撃だったからだと言ったが、シドルは違うと直感で分かった。


城の建物の守備力が落ちている。何があったのか不明だ。

ふと、似た事があった事を思い出した。


北の塔も城同様の守備力がある。だが一度だけ、故意に守備力が低下したように感じた事があった。



「故意———?」

「ホツが僕達の戦闘に初めて指南してくれた日だよ。僕は魔族が北の塔を壊せるように、わざと塔の守備力を下げたのではないかと考えている」


レーベンをジッと見る。


「あの時、ホツは魔獣姿だとどうも分かっていないようであったし。早く人間の姿を見せたかった。あの鎖は第三者でないと壊せない独自の呪文が組み込まれていたので、魔族の攻撃が丁度よかった」

「……」


丁度よかったって…………、流石というか、なんというか。



「その感じとよく似ていた。だから、魔獣がいなくなったから城の守備力が落ちた……と感じたんた」


「自分のいる塔を強化していたにすぎない。私の力が大きいから城も勝手に守られていたのだろう。人間を思ってのことではない。幽閉され守るなどドMではないか。気持ちの悪い」



シドルは、やっぱり! と声を上げた。

アドルフ王子達、誰一人としてシドルの仮説を信じなかった。魔獣がそんな事をするはずがないと疑った。だけど、普段から疑り深いシドルだけが自分の考えで物事を進めた。国を助けるには、自分達だけでは無理だ。そうして、俺とレーベンを探しに来たのだと。



シドルの表情は明るいものになるけれど、俺は反対に沈んだ気持ちになった。

「……何それ。シドル、もしかして、レーベン様に助けを求めようとしているの? レーベン様に何をしてきたか、この国がどんな酷い事をしてきたか分かっているの?」

「———……うん。ごめんなさい」


「シドルが謝って済むものでもないの! 勝手過ぎっ!! レーベン様は自由なんだ!! シドルの馬鹿! 人間の馬鹿! 人間の馬鹿野郎!!」


いつだって、レーベンが傷ついてきた。もう充分じゃないか。


「レーベン様、行きましょう!!」

「————…………? ホツ……?」


レーベンの方を振り返ると、目を見開き驚いていた。


「——君は一体?」



何に驚いているのか。こんなに驚いているレーベンを見るのは初めてだけど、もう彼を人間の都合で利用されたくない。

レーベンの腕を引っ張って、部屋を出た。



「ホツ! アドルフ王子達も他の人間達の魔獣の誤解を必ず解くよ! そしたら、また会って欲しい! 自分勝手だって分かっているけど!」


部屋の中から、シドルの声が聞こえた。

俺は、彼らが嫌いじゃない。とても親身になってくれた。でも、彼らがレーベンにしてきた事は許せない。



グイグイと彼の腕を引っ張って宿屋を出て、細い路地をどんどん抜けていく。


「ホツ、君が苦しいなら助けてあげるよ。私にとっては簡単な事なのだから」

俺が彼らとレーベンの間で苦しんでいるのが分かるのか、最も簡単な方法を提示してくれる。

俺は、立ち止まって振り返った。


「また別の破滅フラグが立ってしまうかもしれない。貴方が危なくなるのは嫌なんです」


暗い気持ちから声も暗くなる。そんな俺の頬をレーベンが優しく撫でてくれる。


「———長く生きてきた私にも分からない事はある」

「……え?」

「不思議だ。分からない。でも、そうなら私は……」


レーベンの顔が優しい表情になる。口角を上げただけの笑顔でも声を上げた笑い方でもなくて、勝手に顔が笑顔になったという顔。


「ホツ、今から振り返って、あの者に助けてやると言っておいで」

「いやです。レーベン様が嫌な想いをするかもしれません」

「はは。君は……。私の破滅フラグはホツがいれば大丈夫」



信じられない程、優しい声で彼が俺の背を押した。あまりに優しい手だった為、俺は思わず足が二歩トントンっと前に出て、それから宿屋の方へ進んだ。


本当に、シドルの元に戻って、助けると言っていいのだろうか。俺は振り返りながらレーベンを見る。レーベンはすぐに戻っておいで。と手を振った。



どうして、レーベンはあんなに何もかも許せるのだろう。

そう思いながら、シドルがいる宿屋に向かった。

迷路のような細い路地を通り、同じようなレンガ状の家が続く。

空は青く晴れているが、日差しは建物で遮られ薄暗い。目の前を一人の男が横切った。

その男を見て、俺は驚いた。



「え?」


日本にいる友達にそっくりな人間だった。思わず二度見すると、全くの別人だった。


なんだ……。そうだよな。アイツは日本に帰ったんだから。



そうして、シドルの宿屋に到着した。レーベンの優しさが悪用されるかもという不安がある。契約書などをシドルに書かせた方がいいのかもしれない。そうして、宿屋の扉を開けようとした。




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