天国への階段

高嗣水清太

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永遠に、私のものにする

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「例の死神が来たんなら、お前から離れるわけがない。なのに、どこにいるかわからないだと?」
「ッ……」
「奴は突然現れては毎回お前に付き纏っていたんだろう? それが、なぜ今回は傍にいない?」
「……」
「今回の目的はお前じゃないと、考えなかったのか?」
「――っ!」

 オリヴィエは目を見開いた。
 確かに言われてみればそうだ。レニエの目的は今までならオリヴィエだった。オリヴィエは死の気配を感じるからと、いつもなら常に傍にいた死神なのに、今は……いない。どこにいるかもわからない。あのとき、オリヴィエ以外にあの場に居たのは――

「くそっ!」
(どうして気付かなかった……!!)

 自分が愚かだったことに気付き、唇を噛む。そんなオリヴィエを冷たく睨みつけながら、『血の伯爵』は言った。

「ルスタヴェリ様はどこだ」
「……知らない」
「知らなければ殺すまでだ」
「ッ……!」

 言うなり、彼は拳を振り上げる。

「お前が死ねば、レニエがこちらに来るかもしれない。元々はお前が目的だったんだ」
「まてっ、まだルスタヴェリが狙われていると決まったわけじゃ……」
「うるさい。どっちにしろお前が死ねばすべて丸く収まる。死ね」
「伯爵……っ!」

 これは何をどう言っても殺される。オリヴィエがそう思ったときだ。

「そこまでにしておけ、ベルモンド」

 背後から聞こえてきたのは低い男の声だった。
 振り向くとそこには一人の男が立っている。絹糸のような金髪をゆるく結び、後ろに垂らした美丈夫。
 けれど、その顔には嫌悪の表情が張り付いていた。

「ルスタヴェリ様! ご無事で……!」

 ルスタヴェリの顔を見た途端、『血の伯爵』は先程までの態度を一変し、敬意を示すように頭を下げた。

「ああ、問題ない。死神に私は滅せない。それよりも、その手を離せ」
「しかしこの男はルスタヴェリ様を封印しようと……っ!」
「聞こえなかったのか? 離せ、と言っている」
「……はい」

 有無を言わせないルスタヴェリの口調に、『血の伯爵』は渋々とオリヴィエの首から手を放した。解放されたオリヴィエは咳き込みながらも起き上がる。

「ルスタヴェリ……」

 オリヴィエは複雑な思いでルスタヴェリを仰ぎ見た。

「オリヴィエ、いい加減私を受け入れろ」

 ルスタヴェリはオリヴィエに手を差し伸べたが、オリヴィエはその手を取らずに立ち上がる。

「嫌だ」

 オリヴィエは真っ直ぐにルスタヴェリの目を見てはっきりと言った。

「私がお前を受け入れるということは、私もヴァンパイアに……お前の眷属になるということだろう?」
「そうだ」
「私はヴァンパイアハンターだ。ヴァンパイアに魂を売るなど絶対にしない」
「……」

 頑ななオリヴィエの様子に、ルスタヴェリは小さく溜息をつく。

「わかった。では、こうしよう。お前の命が尽きるとき、私はまたお前の前に現れる。その時までに私のものになると誓え。そうしたら、私はお前の願いを聞き入れよう」
「なっ……!?」

 オリヴィエは驚愕して目を見開く。

「それまでに答えが決まらなかったときは、お前の身体をもらい受ける。永遠に、私のものにする。それが、私の最後の賭けだ。それならばいいだろう?」
「…………」
「返事は今すぐ決めなくて構わない。だが、時間はあまり残されていないぞ」

 そう言い残すと、ルスタヴェリの姿は『血の伯爵』と共に掻き消えた。
 後に残ったのは沈黙とオリヴィエだけ――。
 オリヴィエは大きく息を吐いた。
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