18 / 76
第二章:懊悩の足枷
懊悩の足枷 9
しおりを挟む
「スランプってやつか。俺はまだ経験がないから、あんまりあれこれ言える立場でもないけど、あり得ないとは言えないな。九条先輩、俺らよりもこれまでに書いた作品の数も多そうだし」
「かもね。あたしもまだスランプに陥るってよくわからないけど、確かにここ数日の先輩は雰囲気がおかしかった感じはしてたかも。悩みがあるんならあたしたちで助けてあげられないかな? 役者不足かもしれないけどさ」
提案を口にした妃夏は、俺と泉の反応を期待するような眼差しで見つめてくる。
「気持ちはわかるけど、俺たちに何かできるか? 他人の創作、それも先輩に対して口出しできるほど俺は立派でもないし、偉そうにアドバイスできるような実績もないんだぞ」
スランプにせよ他の悩みにせよ、俺が九条先輩の助けになれるイメージは全然わかない。
大体、こういうのは男の俺より、女子同士とかで対応した方がうまくいく気もするのだが。
「そんなの、あたしだって同じだよ。でも、悩みとかってさ、具体的に何かをしてあげられなくても、話を聞いてあげるだけでもマシになるとかよく言うじゃない。だから、まずはみんなで九条先輩が何に悩んでいるのか、そこを教えてもらうところからだよね」
「いや、だよねじゃないんだわ」
既に行動に移すことが前提となっているような、前向き発言を放ってくる妃夏へ待ったをかけて、俺は困ったなという思いで頭を掻く。
「そもそも、九条先輩が相談に乗ってもらうことを望んでいるかってのも大事な部分だろ。それに、たぶん俺がしゃしゃり出るより、妃夏か泉が声かけた方が話しやすいと思うんだよな。いくら毎日のように顔合わせてる相手とはいえ、男子からいきなり話聞きますよなんて言われても、余計な困惑を与えるだけだろうし」
「それを言ったら、わたしだってですよ。先輩からすれば、一年の後輩にいつでも相談してくださいなんて言われたら、喜ぶよりも逆に惨めな気分にさせちゃう可能性があります。危険です、極めて」
「いや、別に危険ではないと思うが……」
真面目な顔で大袈裟なことを言う泉へ突っ込みを入れ、俺はどうしたものかと考えてみる。
同じ部の仲間であり、創作を理解し合える仲間でもある九条先輩を、みんなが助けてあげたいと思うのは当然の流れだろう。
だけど、どう助ければ良いのか。
悩みを打ち明けてくれたとして、それが自分たちにとって手に負えるものなのか。
何もしてあげられなかったり、最悪の場合は下手に首を突っ込んだせいで、余計に迷惑をかける事態になることだって、あり得えないとは言い切れない。
「先輩の悩みが何なのか、それはまだよくわかんないけどさ、まずは聞くだけ聞いてみようよ。みんなが気が引けるって言うなら、あたしがそれとなく声かけてみるからさ。ね? このまま九条先輩が悩んでたら、心配過ぎて新しい話の執筆も捗らなくなっちゃうよ」
俺が一人で逡巡している最中に、妃夏は迷う必要なしと言わんばかりの快活な口調でそう話を続けてきた。
「星咲先輩が悩みを聞いてくれるなら、わたしも協力するのはやぶさかではありません」
泉が迷いなく同意し、大きく首を縦に振る。
「やぶさかなんて言葉をリアルで使う後輩は始めて見たな……」
「え? 使いません? やぶさか」
「かもね。あたしもまだスランプに陥るってよくわからないけど、確かにここ数日の先輩は雰囲気がおかしかった感じはしてたかも。悩みがあるんならあたしたちで助けてあげられないかな? 役者不足かもしれないけどさ」
提案を口にした妃夏は、俺と泉の反応を期待するような眼差しで見つめてくる。
「気持ちはわかるけど、俺たちに何かできるか? 他人の創作、それも先輩に対して口出しできるほど俺は立派でもないし、偉そうにアドバイスできるような実績もないんだぞ」
スランプにせよ他の悩みにせよ、俺が九条先輩の助けになれるイメージは全然わかない。
大体、こういうのは男の俺より、女子同士とかで対応した方がうまくいく気もするのだが。
「そんなの、あたしだって同じだよ。でも、悩みとかってさ、具体的に何かをしてあげられなくても、話を聞いてあげるだけでもマシになるとかよく言うじゃない。だから、まずはみんなで九条先輩が何に悩んでいるのか、そこを教えてもらうところからだよね」
「いや、だよねじゃないんだわ」
既に行動に移すことが前提となっているような、前向き発言を放ってくる妃夏へ待ったをかけて、俺は困ったなという思いで頭を掻く。
「そもそも、九条先輩が相談に乗ってもらうことを望んでいるかってのも大事な部分だろ。それに、たぶん俺がしゃしゃり出るより、妃夏か泉が声かけた方が話しやすいと思うんだよな。いくら毎日のように顔合わせてる相手とはいえ、男子からいきなり話聞きますよなんて言われても、余計な困惑を与えるだけだろうし」
「それを言ったら、わたしだってですよ。先輩からすれば、一年の後輩にいつでも相談してくださいなんて言われたら、喜ぶよりも逆に惨めな気分にさせちゃう可能性があります。危険です、極めて」
「いや、別に危険ではないと思うが……」
真面目な顔で大袈裟なことを言う泉へ突っ込みを入れ、俺はどうしたものかと考えてみる。
同じ部の仲間であり、創作を理解し合える仲間でもある九条先輩を、みんなが助けてあげたいと思うのは当然の流れだろう。
だけど、どう助ければ良いのか。
悩みを打ち明けてくれたとして、それが自分たちにとって手に負えるものなのか。
何もしてあげられなかったり、最悪の場合は下手に首を突っ込んだせいで、余計に迷惑をかける事態になることだって、あり得えないとは言い切れない。
「先輩の悩みが何なのか、それはまだよくわかんないけどさ、まずは聞くだけ聞いてみようよ。みんなが気が引けるって言うなら、あたしがそれとなく声かけてみるからさ。ね? このまま九条先輩が悩んでたら、心配過ぎて新しい話の執筆も捗らなくなっちゃうよ」
俺が一人で逡巡している最中に、妃夏は迷う必要なしと言わんばかりの快活な口調でそう話を続けてきた。
「星咲先輩が悩みを聞いてくれるなら、わたしも協力するのはやぶさかではありません」
泉が迷いなく同意し、大きく首を縦に振る。
「やぶさかなんて言葉をリアルで使う後輩は始めて見たな……」
「え? 使いません? やぶさか」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
負けヒロインに花束を!
遊馬友仁
キャラ文芸
クラス内で空気的存在を自負する立花宗重(たちばなむねしげ)は、行きつけの喫茶店で、クラス委員の上坂部葉月(かみさかべはづき)が、同じくクラス委員ので彼女の幼なじみでもある久々知大成(くくちたいせい)にフラれている場面を目撃する。
葉月の打ち明け話を聞いた宗重は、後日、彼女と大成、その交際相手である名和立夏(めいわりっか)とのカラオケに参加することになってしまう。
その場で、立夏の思惑を知ってしまった宗重は、葉月に彼女の想いを諦めるな、と助言して、大成との仲を取りもとうと行動しはじめるが・・・。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる