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第二章:懊悩の足枷
懊悩の足枷 11
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“もう少し気持ちに余裕を持たなきゃ駄目よ”
放課後、有野先生から言われた言葉が棘のように脳裏へと突き刺さり、何度も何度も繰り返し再生される。
呪いでもかけられた気分だと気が滅入りそうになり、それが余計に執筆に対する集中力を霧散させていく。
「余裕なんて、どこにもないわよ。どうしてこんな惨めな思いを味わわなくちゃいけないの……」
家に帰り、すぐに夕食とシャワーを済ませて自室へ籠って既に三時間が経過している。
机の上で開かれたノートパソコン、その画面はほとんど文字の書き込まれておらず、無駄に白い光を照射していた。
執筆をするために大切なことは、気持ちを常にニュートラルにすること。
これは私の中で、最も大切なルール。
苛々したり悲しんだり、そういう一時的な感情を抱いて執筆をすれば、確実に作風に影響が出てしまう。
それも大抵は、悪い意味での影響が。
そうなれば当然、全ては書き直しの作業になり時間をロスしてしまうだけで、何一つメリットへ繋がることは得られない。
だからこそ私は、常に感情を揺さぶられることが無いよう、日頃から注意し生活を続けてきた。
それなのに、後輩の星咲妃夏が自分よりも先に結果を出すことにリーチをかけたという、そのことに。
「私って、こんなにも嫉妬深かったの?」
意味もなくキーボードに載せていた手を離し、自分の頭を抱えるように移動させる。
そのまま机に肘をつき項垂れると、情けないくらいに弱々しいため息を吐き出した。
創作に、性別も年齢も関係ない。
わかっているつもりだったけれど、自分より年齢が下のそれも身近にいた人物が先に結果を出してしまうということが、ここまで精神に影響を与えてくるなんて想定していなかった。
今日、部室で星咲さんの姿を見て、真っ先に抱いたのが敵愾心。
そしてそれを自覚した瞬間に湧き上がってきた、自己嫌悪。
何をしているんだという、自分自身への呆れと戸惑いが、部活中は終始胸の中を渦巻いていた。
私は上辺だけの賛辞をどうにか口に出し、平静を装うことだけで必死だった。
「駄目だわ、このままじゃ……何も集中ができない」
ふらりと立ち上がり、私はベッドへと移動するとそのまま倒れ込むようにして横になる。
休んでいる暇なんてないけれど、一度このモヤモヤとした負の感情をリセットしなくては、何も書ける気がしない。
星咲さんへ嫉妬してしまっているのなら、一秒でも早く彼女と同じかそれ以上の結果を出せば、自分の感情をクリアにできる。
そう思ったから、これまで以上にスケジュールを詰めて執筆することを決意したのに、始めた側からこんな体たらくに陥ってしまっていては、元の木阿弥でしかない。
「星咲さんが悪いんじゃない。全て、私の実力不足。結果さえ出せれば……」
自分に言い聞かせるように小声で呟き、私は頭と心を休めるために目を閉じる。
このまま少しでも休息を取って、また執筆を再開しよう。
そう思いながら、気分を整えるように何度も深呼吸を繰り返しリラックスを図ってはみたけれど、その後一向にメンタルが回復することはないまま、結局パソコンの前に戻ることすらできず、朝を迎えることになってしまった。
“もう少し気持ちに余裕を持たなきゃ駄目よ”
放課後、有野先生から言われた言葉が棘のように脳裏へと突き刺さり、何度も何度も繰り返し再生される。
呪いでもかけられた気分だと気が滅入りそうになり、それが余計に執筆に対する集中力を霧散させていく。
「余裕なんて、どこにもないわよ。どうしてこんな惨めな思いを味わわなくちゃいけないの……」
家に帰り、すぐに夕食とシャワーを済ませて自室へ籠って既に三時間が経過している。
机の上で開かれたノートパソコン、その画面はほとんど文字の書き込まれておらず、無駄に白い光を照射していた。
執筆をするために大切なことは、気持ちを常にニュートラルにすること。
これは私の中で、最も大切なルール。
苛々したり悲しんだり、そういう一時的な感情を抱いて執筆をすれば、確実に作風に影響が出てしまう。
それも大抵は、悪い意味での影響が。
そうなれば当然、全ては書き直しの作業になり時間をロスしてしまうだけで、何一つメリットへ繋がることは得られない。
だからこそ私は、常に感情を揺さぶられることが無いよう、日頃から注意し生活を続けてきた。
それなのに、後輩の星咲妃夏が自分よりも先に結果を出すことにリーチをかけたという、そのことに。
「私って、こんなにも嫉妬深かったの?」
意味もなくキーボードに載せていた手を離し、自分の頭を抱えるように移動させる。
そのまま机に肘をつき項垂れると、情けないくらいに弱々しいため息を吐き出した。
創作に、性別も年齢も関係ない。
わかっているつもりだったけれど、自分より年齢が下のそれも身近にいた人物が先に結果を出してしまうということが、ここまで精神に影響を与えてくるなんて想定していなかった。
今日、部室で星咲さんの姿を見て、真っ先に抱いたのが敵愾心。
そしてそれを自覚した瞬間に湧き上がってきた、自己嫌悪。
何をしているんだという、自分自身への呆れと戸惑いが、部活中は終始胸の中を渦巻いていた。
私は上辺だけの賛辞をどうにか口に出し、平静を装うことだけで必死だった。
「駄目だわ、このままじゃ……何も集中ができない」
ふらりと立ち上がり、私はベッドへと移動するとそのまま倒れ込むようにして横になる。
休んでいる暇なんてないけれど、一度このモヤモヤとした負の感情をリセットしなくては、何も書ける気がしない。
星咲さんへ嫉妬してしまっているのなら、一秒でも早く彼女と同じかそれ以上の結果を出せば、自分の感情をクリアにできる。
そう思ったから、これまで以上にスケジュールを詰めて執筆することを決意したのに、始めた側からこんな体たらくに陥ってしまっていては、元の木阿弥でしかない。
「星咲さんが悪いんじゃない。全て、私の実力不足。結果さえ出せれば……」
自分に言い聞かせるように小声で呟き、私は頭と心を休めるために目を閉じる。
このまま少しでも休息を取って、また執筆を再開しよう。
そう思いながら、気分を整えるように何度も深呼吸を繰り返しリラックスを図ってはみたけれど、その後一向にメンタルが回復することはないまま、結局パソコンの前に戻ることすらできず、朝を迎えることになってしまった。
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