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第三章:不鮮明な苦悩
不鮮明な苦悩 5
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「悩みなんて、別にないわよ。強いて言えば、進路とかそういうのは人並みに考えているけれど、そんなの三年生にもなれば大抵は誰でも同じことだし」
貴女に嫉妬している自分が嫌で困っている……なんて言葉を吐けるわけもなく、私はありきたりな即席の返答を口にした。
「進路……確か、九条先輩って進学する予定でしたよね? 受ける大学も一応決めてあるって、だいぶ前に聞いた記憶がありますけど」
「そんな話したかしら?」
進路が決まっているのに、悩んでいるというのはおかしくないか。
星咲さんの言いたいことはそういうことだろうと解釈しつつ、私は素っ気ない風を装って会話を続ける。
「進路を既に決めているからって、悩みが消えるわけじゃないでしょう。推薦で受けるわけでもないから、勉強だっておろそかにできないし、落ちて留年するリスクもある。その上で小説も書き上げたいし、時間を捻出するの意外と苦労してるのよ?」
「ああ……確かに、そういうのはありますよね」
考えが至らなかったといった様子で、星咲さんは納得したように小さく頷く。
「それじゃあ、先輩は執筆と勉強のジレンマで悩んでたってことですか?」
「まぁ、端的に言ってしまえばそういうこと。私も人間だからストレスだって溜まっちゃうし、それがちょっと態度に出ちゃってたのかも。もし迷惑とかをかけていたのなら、ごめんなさい」
「あ、いえそんなことはないですけど。ただ、相談に乗れることがあったら言ってほしいなって、才樹と結衣ちゃんで話し合ってたんですよ。勉強は……あたしは力になれないかなぁって感じですけど、創作の話だったらいくらでも聞けますし、才樹たちもそれは同じだと思います。だから、何かあったときは遠慮なく声かけてください」
「ありがとう。でも大丈夫だから、あまり心配はしないで。それじゃ、私は帰るわね」
これ以上一緒にいて創作の話でも持ち出されたら、気落ちするだけ。
そうなれば、帰宅後も不安定になった情緒を引きずるし、執筆に大きな影響を及ぼしてしまう。
「はい、お疲れ様です。執筆、無理だけはし過ぎないように頑張ってくださいね」
適当に会話を切り上げて別れを告げる私に、星咲さんは特に引き留めることもせずに解放してくれた。
そこは有難いなと思いながら微笑と共に小さく頷きを返して、私は踵を返し星咲さんに背を向け歩きだした。
貴女に嫉妬している自分が嫌で困っている……なんて言葉を吐けるわけもなく、私はありきたりな即席の返答を口にした。
「進路……確か、九条先輩って進学する予定でしたよね? 受ける大学も一応決めてあるって、だいぶ前に聞いた記憶がありますけど」
「そんな話したかしら?」
進路が決まっているのに、悩んでいるというのはおかしくないか。
星咲さんの言いたいことはそういうことだろうと解釈しつつ、私は素っ気ない風を装って会話を続ける。
「進路を既に決めているからって、悩みが消えるわけじゃないでしょう。推薦で受けるわけでもないから、勉強だっておろそかにできないし、落ちて留年するリスクもある。その上で小説も書き上げたいし、時間を捻出するの意外と苦労してるのよ?」
「ああ……確かに、そういうのはありますよね」
考えが至らなかったといった様子で、星咲さんは納得したように小さく頷く。
「それじゃあ、先輩は執筆と勉強のジレンマで悩んでたってことですか?」
「まぁ、端的に言ってしまえばそういうこと。私も人間だからストレスだって溜まっちゃうし、それがちょっと態度に出ちゃってたのかも。もし迷惑とかをかけていたのなら、ごめんなさい」
「あ、いえそんなことはないですけど。ただ、相談に乗れることがあったら言ってほしいなって、才樹と結衣ちゃんで話し合ってたんですよ。勉強は……あたしは力になれないかなぁって感じですけど、創作の話だったらいくらでも聞けますし、才樹たちもそれは同じだと思います。だから、何かあったときは遠慮なく声かけてください」
「ありがとう。でも大丈夫だから、あまり心配はしないで。それじゃ、私は帰るわね」
これ以上一緒にいて創作の話でも持ち出されたら、気落ちするだけ。
そうなれば、帰宅後も不安定になった情緒を引きずるし、執筆に大きな影響を及ぼしてしまう。
「はい、お疲れ様です。執筆、無理だけはし過ぎないように頑張ってくださいね」
適当に会話を切り上げて別れを告げる私に、星咲さんは特に引き留めることもせずに解放してくれた。
そこは有難いなと思いながら微笑と共に小さく頷きを返して、私は踵を返し星咲さんに背を向け歩きだした。
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