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第四章:決壊する絆
決壊する絆 3
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気心の知れた者同士のくだらないやり取りをしていると、突然部室のドアが開く音が聞こえた。
一瞬、九条先輩が顔を出したのかと驚きながら顔を向けると、立っていたのは先輩ではなく有野先生だった。
「みんな、あけましておめでとう。始業式の日から集まるなんて真面目ね」
「ここしか居場所がないんですよ」
俺たちを見回し微笑む有野先生に、妃夏が冗談めいた口調で言葉を返す。
「それはちょっと悲しくない?」
そんな妃夏に有野先生も合わせるようにして言葉を返し、それから再び俺たちを見て教師としての表情を作ると
「泉さん以外は、今年で三年生になるのよね。みんな進学希望なんでしょう? 執筆も大切なのはわかるけど、勉強をおろそかにしちゃうと、後悔することになりかねないから油断しちゃ駄目よ」
そう優しくも真面目な口調で告げてきた。
「わかりたくないけど、わかってますよ。勉強も頑張ります。知識を多く身につけることも、創作の幅を広げる武器になる。……そう信じて」
「何のキャラだよ」
したり顔で偉そうに腕組みをして、椅子に背をもたれさせたポーズを取る妃夏へ、俺は即座に突っ込みを入れる。
「あ……駄目だ、やっぱり勉強嫌いだよぉ。才樹、あたしたちどうしようね。頑張れないかも」
「知らねぇよ、情緒不安定かお前は」
妃夏の成績は昔からそれほど悪いわけではないため、勉強が嫌いだ苦手だと言う発言は大抵謙遜だと俺は割り切っている。
むしろ俺の方が成績は劣るのだから、これで勉強ができないみたいなことを言われてしまうと、正直少しだけ腹が立つくらいだ。
「先輩たちは大変ですね。わたしは今年後輩が入ってきてくれるかが、目下の悩みなんですけど」
俺と妃夏の戯れを面白そうに眺めていた泉が、悩みを吐露するように会話へ混ざってきた。
今の一年で活字愛好倶楽部へやってきたのは泉のみで、他には見学すら一人も来なかったから、本人にとっては後輩ができるかどうかは割と気になるところではあるのかもしれない。
「大丈夫だろ。今は小説も漫画も、ネットで発表してる人が多いし。意外と二、三人くらいは入部希望で来るんじゃないかって、俺は思ってるけど」
気休めでなく本心で、俺は泉の心配事へ助言的な言葉を返す。
「でも、わたしのときは他に誰も来なかったじゃないですか。同じような趣味の友達ができるかもって、すごい期待して入ったんですよ?」
「いや、そんな俺らが期待裏切ったみたいなニュアンスで言わないでくれ。それはあれだ、外れ年だったんだよ去年は。たまたまだ」
「外れ年って……」
何故か少しショックを受けたような渋い表情を浮かべてくる泉に、あまり気にするなという意味を込めて小さく頷いてみせてから、俺は有野先生へと顔をスライドさせる。
「そう言えば、先生は今日九条先輩のこと見かけたりしていませんか?」
「え? 九条さん? ああ……こっちには顔を出していないのね。始業式のときに見かけたけど、ちょっと以前よりもやつれてる感じがしたのよね。休み明けだし、寝不足で貧血になりかけてたりしてのかしら。先生も気にはなってたんだけど」
「貧血……?」
一瞬、九条先輩が顔を出したのかと驚きながら顔を向けると、立っていたのは先輩ではなく有野先生だった。
「みんな、あけましておめでとう。始業式の日から集まるなんて真面目ね」
「ここしか居場所がないんですよ」
俺たちを見回し微笑む有野先生に、妃夏が冗談めいた口調で言葉を返す。
「それはちょっと悲しくない?」
そんな妃夏に有野先生も合わせるようにして言葉を返し、それから再び俺たちを見て教師としての表情を作ると
「泉さん以外は、今年で三年生になるのよね。みんな進学希望なんでしょう? 執筆も大切なのはわかるけど、勉強をおろそかにしちゃうと、後悔することになりかねないから油断しちゃ駄目よ」
そう優しくも真面目な口調で告げてきた。
「わかりたくないけど、わかってますよ。勉強も頑張ります。知識を多く身につけることも、創作の幅を広げる武器になる。……そう信じて」
「何のキャラだよ」
したり顔で偉そうに腕組みをして、椅子に背をもたれさせたポーズを取る妃夏へ、俺は即座に突っ込みを入れる。
「あ……駄目だ、やっぱり勉強嫌いだよぉ。才樹、あたしたちどうしようね。頑張れないかも」
「知らねぇよ、情緒不安定かお前は」
妃夏の成績は昔からそれほど悪いわけではないため、勉強が嫌いだ苦手だと言う発言は大抵謙遜だと俺は割り切っている。
むしろ俺の方が成績は劣るのだから、これで勉強ができないみたいなことを言われてしまうと、正直少しだけ腹が立つくらいだ。
「先輩たちは大変ですね。わたしは今年後輩が入ってきてくれるかが、目下の悩みなんですけど」
俺と妃夏の戯れを面白そうに眺めていた泉が、悩みを吐露するように会話へ混ざってきた。
今の一年で活字愛好倶楽部へやってきたのは泉のみで、他には見学すら一人も来なかったから、本人にとっては後輩ができるかどうかは割と気になるところではあるのかもしれない。
「大丈夫だろ。今は小説も漫画も、ネットで発表してる人が多いし。意外と二、三人くらいは入部希望で来るんじゃないかって、俺は思ってるけど」
気休めでなく本心で、俺は泉の心配事へ助言的な言葉を返す。
「でも、わたしのときは他に誰も来なかったじゃないですか。同じような趣味の友達ができるかもって、すごい期待して入ったんですよ?」
「いや、そんな俺らが期待裏切ったみたいなニュアンスで言わないでくれ。それはあれだ、外れ年だったんだよ去年は。たまたまだ」
「外れ年って……」
何故か少しショックを受けたような渋い表情を浮かべてくる泉に、あまり気にするなという意味を込めて小さく頷いてみせてから、俺は有野先生へと顔をスライドさせる。
「そう言えば、先生は今日九条先輩のこと見かけたりしていませんか?」
「え? 九条さん? ああ……こっちには顔を出していないのね。始業式のときに見かけたけど、ちょっと以前よりもやつれてる感じがしたのよね。休み明けだし、寝不足で貧血になりかけてたりしてのかしら。先生も気にはなってたんだけど」
「貧血……?」
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