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第五章:未来への兆し
未来への兆し 7
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「なぁ、それ本当に九条先輩だったか?」
作家になるのは諦めると心を決めかけていたはずの九条先輩が、小説家になるための実用書を買っていた?
にわかには信じられず、俺はつい疑うように響平を見上げた。
「ああ。間違いないよ。私服だったけど、九条先輩って美人だからな。さすがに人違いはあり得ない」
「そうか……」
根拠がいまいちな気もするが、ここまでしっかり断定するのなら可能性は高いと言えるかもしれない。
だが、そうなるとやはり、九条先輩は何故そんな矛盾した行動を取っていたのかが気にかかる。
たった二日やそこらで、何か心境に変化があったのか、それともあくまで響平の勘違いで、たまたま実用書のコーナーを眺めていただけということもないとは言えない。
「ああいう難しそうな本に金使うなんて、オレには真似できん。遊びに使いたくなる」
「自分が楽しんだりやりたいことに金使うって意味では同じだろ」
腕を組み唸る響平へ持論を返しながら、俺は後で妃夏にも今の話を聞かせてみようと思いつく。
どんな理由であれ、もし九条先輩が創作を続ける方向に気持ちが傾いてくれたのなら、仲間として嬉しくないはずがない。
ホームルームを告げるチャイムが鳴った。
「あ、もう時間か。今日も一日、勉強怠ぃな」
時計を見上げうんざりした様子で肩を落とした響平が、自分の席へと戻っていく。
それを見送り、そのまま妃夏の席へ視線を向けると、クラスの女子とまだ何かお喋りをしているようで、席には戻らずに談笑する声が耳に届いた。
九条先輩のことを、何気に部員の中では一番気にかけていた妃夏が響平の話を知ったら、どんな反応を示すのか。
安堵して喜ぶ妃夏の顔を想像しながら、俺は九条先輩はまた部活に顔を出してくれるだろうかと、そんなことを考えた。
作家になるのは諦めると心を決めかけていたはずの九条先輩が、小説家になるための実用書を買っていた?
にわかには信じられず、俺はつい疑うように響平を見上げた。
「ああ。間違いないよ。私服だったけど、九条先輩って美人だからな。さすがに人違いはあり得ない」
「そうか……」
根拠がいまいちな気もするが、ここまでしっかり断定するのなら可能性は高いと言えるかもしれない。
だが、そうなるとやはり、九条先輩は何故そんな矛盾した行動を取っていたのかが気にかかる。
たった二日やそこらで、何か心境に変化があったのか、それともあくまで響平の勘違いで、たまたま実用書のコーナーを眺めていただけということもないとは言えない。
「ああいう難しそうな本に金使うなんて、オレには真似できん。遊びに使いたくなる」
「自分が楽しんだりやりたいことに金使うって意味では同じだろ」
腕を組み唸る響平へ持論を返しながら、俺は後で妃夏にも今の話を聞かせてみようと思いつく。
どんな理由であれ、もし九条先輩が創作を続ける方向に気持ちが傾いてくれたのなら、仲間として嬉しくないはずがない。
ホームルームを告げるチャイムが鳴った。
「あ、もう時間か。今日も一日、勉強怠ぃな」
時計を見上げうんざりした様子で肩を落とした響平が、自分の席へと戻っていく。
それを見送り、そのまま妃夏の席へ視線を向けると、クラスの女子とまだ何かお喋りをしているようで、席には戻らずに談笑する声が耳に届いた。
九条先輩のことを、何気に部員の中では一番気にかけていた妃夏が響平の話を知ったら、どんな反応を示すのか。
安堵して喜ぶ妃夏の顔を想像しながら、俺は九条先輩はまた部活に顔を出してくれるだろうかと、そんなことを考えた。
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