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エピローグ
エピローグ 6
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「間違いなく、役に立ててるさ。今も九条先輩が創作を続けていることこそが、その証明だろ?」
「……うん、そうだね!」
俺の同意を込めた言葉を噛み締めるような間を空けてから頷き、妃夏は心底嬉しそうに笑って頷いた。
「そんじゃ、早速レジに行こうぜ。売り切れる前に買わないと」
「あ、じゃあおれも買わなきゃ」
話が一区切りついたタイミングで、慌ててソフトを手に取った守草と三人で仲良くレジへと歩きだす。
「はぁーあ、守草も出版社に就職して、九条先輩と妃夏はプロの作家になって活躍中。泉も、ちゃっかり詩集発売して夢叶えてるし、まだ燻ぶってるのはマジで俺だけだもんなぁ。なかなか、現実はうまくいかねぇなぁ」
手にしたソフトを眺めながら、俺は冗談を含んだ声音でそんな小言をこぼす。
俺たちが高校を卒業した年の冬、泉はネットで募集していた詩のコンテストに作品を応募し、優秀賞を受賞した。
才能を評価されたのか、翌年にはまさかの詩集が世に出回ることとなり、報告を受けた俺たちよりも泉本人が「信じられないです」と連呼していたのを今でも鮮明に覚えている。
泉が妃夏や九条先輩よりも先に夢を実現したのも、個人的には衝撃だった。
そして、今は既に結婚し、二年前に第一子の女の子が生まれたという写真付きのハガキが俺たちの元へ届いた。
学生時代に言っていた夢を、本当に全て叶えてしまったんだなと、赤ちゃんと一緒に写る幸せそうな泉の顔を見て、当時の俺はじみじみとそんなことを考えた。
「大丈夫だよ、夢を叶えるのは競争じゃないんだから。才樹には才樹のペースやタイミングがあるだけ。書き続ければ、ゴールはあるよ」
数歩前を歩く妃夏が、くるりと振り返りながら俺の小言に言葉を返す。
同情や建前のない、真っ直ぐなその言葉と表情に、俺は気怠げな笑みを浮かべながら肩を竦めた。
「ゴール、ね。むしろ、そこがスタートラインなんじゃねぇのか?」
「あ、確かにそうかも。でも、新しいスタートを切るための、最初のゴールだと思うよ」
「……そうか」
俺たちは随分と、長い道を駆けているんだな。
妃夏の返答にそんな思いを抱きながら、俺はもう一度手にしたソフトへ目を向ける。
夢を手にするという、最初のゴールを先に迎えた仲間たち。
その後を必死に追いかけるかたちにはなってしまっているけれど、俺はまだまだリタイアを選ぶつもりはない。
いずれはみんなに追いつき、良き仲間でありライバルとして切磋琢磨していける、そんな楽しい未来へ到達したい。
そんなずっと変わることのない夢を、改めて胸の奥に描きながら。
「あ、あたしが会計一番乗りね!」
はしゃぐように早足になる妃夏の、近くにあるはずなのに遠い背中を、俺は羨望を込めた眼差しで眺めた。
「……うん、そうだね!」
俺の同意を込めた言葉を噛み締めるような間を空けてから頷き、妃夏は心底嬉しそうに笑って頷いた。
「そんじゃ、早速レジに行こうぜ。売り切れる前に買わないと」
「あ、じゃあおれも買わなきゃ」
話が一区切りついたタイミングで、慌ててソフトを手に取った守草と三人で仲良くレジへと歩きだす。
「はぁーあ、守草も出版社に就職して、九条先輩と妃夏はプロの作家になって活躍中。泉も、ちゃっかり詩集発売して夢叶えてるし、まだ燻ぶってるのはマジで俺だけだもんなぁ。なかなか、現実はうまくいかねぇなぁ」
手にしたソフトを眺めながら、俺は冗談を含んだ声音でそんな小言をこぼす。
俺たちが高校を卒業した年の冬、泉はネットで募集していた詩のコンテストに作品を応募し、優秀賞を受賞した。
才能を評価されたのか、翌年にはまさかの詩集が世に出回ることとなり、報告を受けた俺たちよりも泉本人が「信じられないです」と連呼していたのを今でも鮮明に覚えている。
泉が妃夏や九条先輩よりも先に夢を実現したのも、個人的には衝撃だった。
そして、今は既に結婚し、二年前に第一子の女の子が生まれたという写真付きのハガキが俺たちの元へ届いた。
学生時代に言っていた夢を、本当に全て叶えてしまったんだなと、赤ちゃんと一緒に写る幸せそうな泉の顔を見て、当時の俺はじみじみとそんなことを考えた。
「大丈夫だよ、夢を叶えるのは競争じゃないんだから。才樹には才樹のペースやタイミングがあるだけ。書き続ければ、ゴールはあるよ」
数歩前を歩く妃夏が、くるりと振り返りながら俺の小言に言葉を返す。
同情や建前のない、真っ直ぐなその言葉と表情に、俺は気怠げな笑みを浮かべながら肩を竦めた。
「ゴール、ね。むしろ、そこがスタートラインなんじゃねぇのか?」
「あ、確かにそうかも。でも、新しいスタートを切るための、最初のゴールだと思うよ」
「……そうか」
俺たちは随分と、長い道を駆けているんだな。
妃夏の返答にそんな思いを抱きながら、俺はもう一度手にしたソフトへ目を向ける。
夢を手にするという、最初のゴールを先に迎えた仲間たち。
その後を必死に追いかけるかたちにはなってしまっているけれど、俺はまだまだリタイアを選ぶつもりはない。
いずれはみんなに追いつき、良き仲間でありライバルとして切磋琢磨していける、そんな楽しい未来へ到達したい。
そんなずっと変わることのない夢を、改めて胸の奥に描きながら。
「あ、あたしが会計一番乗りね!」
はしゃぐように早足になる妃夏の、近くにあるはずなのに遠い背中を、俺は羨望を込めた眼差しで眺めた。
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