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第1話 『進む道なき』シオン その2
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「勇者様のご友人様は、俺らの事を覚えているか?」
一人は『重戦士』マジク。
分厚い鎧に大型の方形盾。鉄球を先端につけたメイスを奮う怪力自慢。
三人組の首領を自称する。
「覚えてはいないだろう? そういうのを、平気で踏みつけに出来る奴だよ。私は最初からそう思っていた」
一人は『軽戦士』ボルカ。
腰には細身の長剣。鎧は鉄鋲を打った革鎧。
自在に走る剣先の間合いの長さと速さは尋常のものではない。
三人組のリーダーを自称する。
「そうでなければ、厚かましく『勇者』の横に立っていられるわけがない」
最後の一人が『四連剣士』サライ。
盾と幅広の剣と鎖鎧。いかにもな標準的な戦士。
攻守共に隙が無く、連撃の手数と広い視野で三人組の司令塔を自称する。
「どうしたんですか? マジクさん、ボルカさん、それにサライさん。他の方々は?」
その三人組が、どうして自分の後をつけてきたのか、シオンにはそれが分からない。
いや、薄々は分かっている。
三人の憎々しげな表情が、言わずとも理由を告げている。
「お師匠様からの言いつけだ」
マジクは盾を構えてメイスを担ぎ上げる。
「我らはお前に罰を与えに来たのだ」
ボルカは剣を顔の前に立てて構える。
「覚悟してもらおうか」
サライは剣を横手に構え、じわりと間合いを詰めてくる。
「ちょっ……ちょっと待ってください! どうしてそんな……。それに、ここはダンジョンの外ですよ!」
ダンジョンの中は治外法権だ。
魔物と人が殺し合い、時には人間同士が殺し合う。
しかし、街の中ではそうはいかない。
街中で武器を抜くだけでも、場合によっては牢屋送りだ。
人を殺すともなれば、間違いなくお尋ね者として手配される。
それでも、ダンジョンの常識を街に持ち込んだ冒険者が、賞金首として貼り出される。
そんな光景をシオンは何度か目にしていた。
「賞金首になりたいんですか? そんな命令をコーザ様がするはずが無いでしょう。やめて下さい!」
両手を広げてみせるシオン。
杖代わりに手にしていた剣が、音を立てて地面に落ちた。
だが三人は嘲笑を浮かべるばかり。
「法が適用されるのは人に対してだけだろう?」
サライがじわりと間合いを詰める。
シオンはもう、剣の間合いの中にいる。
「お前は魔物だ」
「だからオレ達は罰せられない」
シオンの退路を塞ぐように、マジクとボルカは左右から回り込んでくる。
一歩下がれば、二人の間合いの中に入るだろう。
「……魔物……? なんですか、それ……なんでそんな事を言うんですか!」
三人の目は、魔物を狙う時のものだった。
シオンの背中に冷や汗が流れる。
膝が震えていた。
この三人が、シオンの数倍もある魔物を同じように包囲して傷も負わずに倒していた。
その光景がシオンの脳裏をよぎった。
「勇者様の刃は、魔物だけを斬る正義の刃だ」
「お前は、勇者様に斬られた」
「故に、お前は魔物だ。それ以外に有り得ない」
三方からの殺意がシオンを刺す。
シオンはもう、三人の武器の間合いの中にいた。
逃げる事すらもう、出来そうには無かった。
「剣を抜け。我らの誇りにかけて、それくらいは許してやる」
そう言うサライの視線はシオンの足元に注がれている。
シオンの足元には、土にまみれた剣がある。先程落としたシオンの剣だ。
それに触れた瞬間、サライは斬りかかってくるだろう。
それだけは、シオンにもはっきりと分かった。
一人は『重戦士』マジク。
分厚い鎧に大型の方形盾。鉄球を先端につけたメイスを奮う怪力自慢。
三人組の首領を自称する。
「覚えてはいないだろう? そういうのを、平気で踏みつけに出来る奴だよ。私は最初からそう思っていた」
一人は『軽戦士』ボルカ。
腰には細身の長剣。鎧は鉄鋲を打った革鎧。
自在に走る剣先の間合いの長さと速さは尋常のものではない。
三人組のリーダーを自称する。
「そうでなければ、厚かましく『勇者』の横に立っていられるわけがない」
最後の一人が『四連剣士』サライ。
盾と幅広の剣と鎖鎧。いかにもな標準的な戦士。
攻守共に隙が無く、連撃の手数と広い視野で三人組の司令塔を自称する。
「どうしたんですか? マジクさん、ボルカさん、それにサライさん。他の方々は?」
その三人組が、どうして自分の後をつけてきたのか、シオンにはそれが分からない。
いや、薄々は分かっている。
三人の憎々しげな表情が、言わずとも理由を告げている。
「お師匠様からの言いつけだ」
マジクは盾を構えてメイスを担ぎ上げる。
「我らはお前に罰を与えに来たのだ」
ボルカは剣を顔の前に立てて構える。
「覚悟してもらおうか」
サライは剣を横手に構え、じわりと間合いを詰めてくる。
「ちょっ……ちょっと待ってください! どうしてそんな……。それに、ここはダンジョンの外ですよ!」
ダンジョンの中は治外法権だ。
魔物と人が殺し合い、時には人間同士が殺し合う。
しかし、街の中ではそうはいかない。
街中で武器を抜くだけでも、場合によっては牢屋送りだ。
人を殺すともなれば、間違いなくお尋ね者として手配される。
それでも、ダンジョンの常識を街に持ち込んだ冒険者が、賞金首として貼り出される。
そんな光景をシオンは何度か目にしていた。
「賞金首になりたいんですか? そんな命令をコーザ様がするはずが無いでしょう。やめて下さい!」
両手を広げてみせるシオン。
杖代わりに手にしていた剣が、音を立てて地面に落ちた。
だが三人は嘲笑を浮かべるばかり。
「法が適用されるのは人に対してだけだろう?」
サライがじわりと間合いを詰める。
シオンはもう、剣の間合いの中にいる。
「お前は魔物だ」
「だからオレ達は罰せられない」
シオンの退路を塞ぐように、マジクとボルカは左右から回り込んでくる。
一歩下がれば、二人の間合いの中に入るだろう。
「……魔物……? なんですか、それ……なんでそんな事を言うんですか!」
三人の目は、魔物を狙う時のものだった。
シオンの背中に冷や汗が流れる。
膝が震えていた。
この三人が、シオンの数倍もある魔物を同じように包囲して傷も負わずに倒していた。
その光景がシオンの脳裏をよぎった。
「勇者様の刃は、魔物だけを斬る正義の刃だ」
「お前は、勇者様に斬られた」
「故に、お前は魔物だ。それ以外に有り得ない」
三方からの殺意がシオンを刺す。
シオンはもう、三人の武器の間合いの中にいた。
逃げる事すらもう、出来そうには無かった。
「剣を抜け。我らの誇りにかけて、それくらいは許してやる」
そう言うサライの視線はシオンの足元に注がれている。
シオンの足元には、土にまみれた剣がある。先程落としたシオンの剣だ。
それに触れた瞬間、サライは斬りかかってくるだろう。
それだけは、シオンにもはっきりと分かった。
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