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第3章 Past events
第43話 決意
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お嬢様達が次々と出てくる校門を眺め、一人一人の顔を確認していく。
校門から道をひとつ隔て向いにあるコンビニの前で、俺は煙草を燻らせている。
花蓮を探し回って雨に濡れ、家に帰ってから煙草を吸うようになった。
イライラしている時に吸いたくなる、と言う親父の言葉が、思い出されたからだ。
吸うと言うより、文字通り燻らす時間の方が長いのは、その紫煙を眺めて気持ちを少しでも落ち着かせたかったからだという気がする。
未だ花蓮が出てこない状況にイライラとしながらも、不安な気持ちが、待っている時間とともに大きくなっていくようで、感情のコントロールが効かなくなっていた。
大抵の生徒が下校時間のチャイムの後に出てくる中、早く逢いたい気持ちと、気持ちを確かめる事の不安さで、胃がキリキリとしながら、既に五本目の煙草を咥えた時にその姿は現れた。
険しい表情で一人校門を出て来たのは、この数日ただただ逢いたかった花蓮だった。
その瞬間、俺の目には花蓮しか映らなくなり、自分がここに居ると伝えたかった。
「かれぇぇぇん!!」
気がつくと大声で名前を呼んでいた。
道の反対側にいる為、俺の声は目の前を通り過ぎていく車にかき消されたが、何度もその名を叫んでいると、花蓮はハッとした表情になり、俺を探すかのように辺りを見回し始めた。
俺を見つけた花蓮は、手で口元を覆って泣いている様に見えた。
俺はすぐにでも花蓮の元に行く為に走り出そうとしたが、突然花蓮の姿が一台の車に遮られた。
花蓮の目の前で止まった車の中から出て来たのは、俺が停学になったきっかけを作った男だった。
藤田…だったか?
男の促すまま、花蓮は諦めたかのように車の後部座席に乗った。
その男は俺に気付いていたのだろう。
俺を見るなり舌を出して自身も花蓮の隣に乗り込んだ。
車が走り出す直前、後部座席に乗った花蓮が窓越しに俺を見つめ、何かを伝えていた。
『あいしてる』
口の形で俺に伝えてきた花蓮は、何かを決意したかのような表情になり、車が走り出す直前まで俺を見つめていた。
呆然とした俺は花蓮がいた場所を眺めながら、その場に行こうとフラつく足取りで進んで行った。
目の前が真っ暗になったようだった。
だから気が付かなかった。
道路の真ん中まで進んでいた俺は、車が近づいてくる事に。
突然視線が宙を舞い、車に跳ねられたのだと気がついた時には地面に叩きつけられ、意識が遠くなって行った。
◇◆◇◆◇◆◇
ああ、シン!
シンが逢いに来てくれた!
今すぐそこに行くから待ってて!
駆け出そうとしたその時、一台の車が目の前で止まった。
「やぁ花蓮!迎えに来たよ?今日は君の部屋に案内してくれる約束の日だよね?」
この男が私とシンを邪魔する男だ。
名前は、藤田…ゆういち?ゆうじ?ゆうぞう?
よく覚えてないけど、今の私には何の興味も持てない相手。
恭子は、あんな可愛い男の子羨ましいなんて言ってるけど、何が良いのかサッパリ分からない。
シンに伝言を伝えてくれた事には感謝してるけど、その意見には全く同意できないわ。
私はシンだけでいい。私の愛する人は生涯シンだけだと、あの時に決めたのだから。
この男だけではない。邪魔するのは。
父親もそうだ。
シンの家に帰ろうとしたあの日に、この場所で同じように車に乗せられ、無理やり家に連れて帰られた。
何か調べたようで、あんな男は忘れろと言われた。
あんな男?シンの事?
そう言われた瞬間、私の心に黒い感情が湧き上がった。
父親も、そして今隣にいる男も、私の敵だ。
「彼が来てるね?外出していいのかな?停学になってるのに?」
停学に?
「どうして停学に?」
興味のない男に顔も向けず、シンの事を聞いた。
「昨日僕が先輩に会いに行ったんだ。そこで僕が婚約者だからもう会わないで欲しいって頼んだら、殴られたんだよ?酷いよね?それで先生が来て、停学だって。花蓮もあんな暴力男と別れて正解だったよ!」
なるほどね。シンが殴ったと言うのならば、悪いのはこの藤田…ゆうたろう?で間違いない。
そのくせにシンに迷惑をかけるなんて、許せないわね。
窓越しに見えるシンに、愛してると口で伝え、この男を叩き潰す事を決意した。
私はシンと別れなければいけない。
このままでは、私に自由も無ければ人格すら持てない。
シンと逃げても必ず連れ戻されるから。
だから私は私なりに戦う事を決めた。
ここで別れようと、嫌われようと、私はシンを愛し続ける。私を自由にしていいのは、私の命の所有者、シンだけだから。
これからする事は、シンの為じゃなくて自分の為。
そのせいで、私がシンを裏切らなければならないのは、身が引き裂かれるような思い。
その代わり、これからの一生は全て貴方に捧げます。いえ、その代わりと言うのは正しくないわね。
私はシンに一生を捧げたいのだから。
本当にごめんなさい。別れても、嫌われても、愛し続けます。死なないで。
だからたった一度だけ、この男に抱かれる決意をした。
校門から道をひとつ隔て向いにあるコンビニの前で、俺は煙草を燻らせている。
花蓮を探し回って雨に濡れ、家に帰ってから煙草を吸うようになった。
イライラしている時に吸いたくなる、と言う親父の言葉が、思い出されたからだ。
吸うと言うより、文字通り燻らす時間の方が長いのは、その紫煙を眺めて気持ちを少しでも落ち着かせたかったからだという気がする。
未だ花蓮が出てこない状況にイライラとしながらも、不安な気持ちが、待っている時間とともに大きくなっていくようで、感情のコントロールが効かなくなっていた。
大抵の生徒が下校時間のチャイムの後に出てくる中、早く逢いたい気持ちと、気持ちを確かめる事の不安さで、胃がキリキリとしながら、既に五本目の煙草を咥えた時にその姿は現れた。
険しい表情で一人校門を出て来たのは、この数日ただただ逢いたかった花蓮だった。
その瞬間、俺の目には花蓮しか映らなくなり、自分がここに居ると伝えたかった。
「かれぇぇぇん!!」
気がつくと大声で名前を呼んでいた。
道の反対側にいる為、俺の声は目の前を通り過ぎていく車にかき消されたが、何度もその名を叫んでいると、花蓮はハッとした表情になり、俺を探すかのように辺りを見回し始めた。
俺を見つけた花蓮は、手で口元を覆って泣いている様に見えた。
俺はすぐにでも花蓮の元に行く為に走り出そうとしたが、突然花蓮の姿が一台の車に遮られた。
花蓮の目の前で止まった車の中から出て来たのは、俺が停学になったきっかけを作った男だった。
藤田…だったか?
男の促すまま、花蓮は諦めたかのように車の後部座席に乗った。
その男は俺に気付いていたのだろう。
俺を見るなり舌を出して自身も花蓮の隣に乗り込んだ。
車が走り出す直前、後部座席に乗った花蓮が窓越しに俺を見つめ、何かを伝えていた。
『あいしてる』
口の形で俺に伝えてきた花蓮は、何かを決意したかのような表情になり、車が走り出す直前まで俺を見つめていた。
呆然とした俺は花蓮がいた場所を眺めながら、その場に行こうとフラつく足取りで進んで行った。
目の前が真っ暗になったようだった。
だから気が付かなかった。
道路の真ん中まで進んでいた俺は、車が近づいてくる事に。
突然視線が宙を舞い、車に跳ねられたのだと気がついた時には地面に叩きつけられ、意識が遠くなって行った。
◇◆◇◆◇◆◇
ああ、シン!
シンが逢いに来てくれた!
今すぐそこに行くから待ってて!
駆け出そうとしたその時、一台の車が目の前で止まった。
「やぁ花蓮!迎えに来たよ?今日は君の部屋に案内してくれる約束の日だよね?」
この男が私とシンを邪魔する男だ。
名前は、藤田…ゆういち?ゆうじ?ゆうぞう?
よく覚えてないけど、今の私には何の興味も持てない相手。
恭子は、あんな可愛い男の子羨ましいなんて言ってるけど、何が良いのかサッパリ分からない。
シンに伝言を伝えてくれた事には感謝してるけど、その意見には全く同意できないわ。
私はシンだけでいい。私の愛する人は生涯シンだけだと、あの時に決めたのだから。
この男だけではない。邪魔するのは。
父親もそうだ。
シンの家に帰ろうとしたあの日に、この場所で同じように車に乗せられ、無理やり家に連れて帰られた。
何か調べたようで、あんな男は忘れろと言われた。
あんな男?シンの事?
そう言われた瞬間、私の心に黒い感情が湧き上がった。
父親も、そして今隣にいる男も、私の敵だ。
「彼が来てるね?外出していいのかな?停学になってるのに?」
停学に?
「どうして停学に?」
興味のない男に顔も向けず、シンの事を聞いた。
「昨日僕が先輩に会いに行ったんだ。そこで僕が婚約者だからもう会わないで欲しいって頼んだら、殴られたんだよ?酷いよね?それで先生が来て、停学だって。花蓮もあんな暴力男と別れて正解だったよ!」
なるほどね。シンが殴ったと言うのならば、悪いのはこの藤田…ゆうたろう?で間違いない。
そのくせにシンに迷惑をかけるなんて、許せないわね。
窓越しに見えるシンに、愛してると口で伝え、この男を叩き潰す事を決意した。
私はシンと別れなければいけない。
このままでは、私に自由も無ければ人格すら持てない。
シンと逃げても必ず連れ戻されるから。
だから私は私なりに戦う事を決めた。
ここで別れようと、嫌われようと、私はシンを愛し続ける。私を自由にしていいのは、私の命の所有者、シンだけだから。
これからする事は、シンの為じゃなくて自分の為。
そのせいで、私がシンを裏切らなければならないのは、身が引き裂かれるような思い。
その代わり、これからの一生は全て貴方に捧げます。いえ、その代わりと言うのは正しくないわね。
私はシンに一生を捧げたいのだから。
本当にごめんなさい。別れても、嫌われても、愛し続けます。死なないで。
だからたった一度だけ、この男に抱かれる決意をした。
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