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 馬車の中で他愛のない会話をしていると、話は私の作る魔法薬のことになった。


「そういえばずっと気になっていたことがあるんだけどさ」

「ん?なにかしら?」

「どうしてセレーナの魔法薬は、他の人が作る魔法薬より効果が高いんだろうな」

「!」


 それは私も思っていた。

 以前に果物屋のおじさんに低級の回復薬をあげた時、おじさんは素人目から見てもずいぶんと具合が悪そうだった。だから低級の回復薬では少し楽になる程度にしか回復しないだろうが、飲まないよりはいいだろうと思いおじさんにあげたのだ。

 しかし回復薬を飲んだおじさんは具合が悪かったのが嘘だったかのように元気になったのだ。中級や上級の回復薬ならあっという間に元気になるかもしれないが、低級ではそんなにすぐに効果は出ないはず。それなのに回復薬を飲んですぐに元気になったおじさんは、いつも以上に元気に果物を売っていたのだ。


 (私も不思議に思っていたけど悪いことではないしあまり気にしていなかったわ。でもあの家で魔法薬を作っていた時より家を出てからの方が調子がいいと言うか…。そうだとすれば考えられる理由はアレしかないわよね)


 シェインがいることも忘れ考え込んでいると目の前から声をかけられた。


「そんなに考え込んでどうしたんだ?」

「わっ!」

「す、すまない。驚かせてしまったな」

「ご、ごめんなさい!ちょっと考え事をしていて…」

「それはさっきの話のことか?」

「ええ。私も前から疑問には思っていたの。でも効果が低いならまだしも、効果が高いのであればそこまで気にすることではないかと思ってあまり考えてこなかったのよ。それにこの国に来てからは毎日が忙しくてそれどころではなかったし。でも…」

「何か心当たりがあるのか?」

「…」


 (心当たりは、ある。でもこんなこと言ったら頭がおかしいと思われてしまいそうで怖い…)


「…俺には言えないこと?」

「っ!ち、違う!…ただ怖いの」

「怖い?」

「…心当たりはあるの。でも頭がおかしいんじゃないかって思われそうで…」

「そんな心配をしているのか?」

「っ!そんなって」

「俺はセレーナのことを信じている。セレーナの言うことなら当然信じるさ」


 シェインがそう言って私の両手を握ってくれた。その手から伝わる熱が私の中にある恐怖を消していってくれるように感じた。


 (…そうだわ。今までもシェインは私を信じてくれていた。私はなにを怖がっていたのかしら)


「…じゃあ聞いてくれる?」

「ああ、もちろんだ」


 そして私は前世の記憶を思い出したこと、その後から魔法薬の効果が高くなったと感じることをゆっくりであるが話した。シェインは時折相槌を打ちながら最後まで話を聞いてくれた。


「…そんなことがあるんだな。不思議ではあるがそれでセレーナが困ったことは今までなかったんだろう?」

「ええ。むしろ記憶を思い出してからは良いことばかりだったわ。こうしてシェインと出会うことができたしね」

「ああその通りだな。俺にとっては前世の記憶を含めてセレーナはセレーナだ」

「そう言ってもらえて嬉しいわ。ありがとう」


 その後も話をしたが、私が作る低級回復薬は他の低級回復薬と別で管理するようにスターリン侯爵に伝えた方がいいだろうということになった。

 理由については実際に私の回復薬を飲んだことがあるシェインの方から伝えてくれるそうだ。自分からだと上手く伝えられるか不安に思ったのでありがたくシェインを頼ることにしたのだった。
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