16 / 60
★連合艦隊エジプトへ★
【慰労会と12月の寒さ②】
しおりを挟む
もしかして前史で、山本長官がアメリカとの戦争に踏み切ったとき、ハワイの真珠湾攻撃を立案した経緯もそこにあったのかもしれない!
今回は五輪選手団の送迎という名目で、はるばるアフリカまで艦隊を向かわせたが、前史において日本海軍は外洋での大艦隊による行動は行われていなかった。
それゆえに山本が持ってきた計画書を見た、永野軍令部総長は一旦作戦計画を見直すように指示したそうだ。
だが山本は退かず、永野も折れて山本に託した。
無謀な計画。
昭和9年3月に起きた「共鶴事件」と、翌年9月に起きた「第四艦隊事件」は、共に荒天下での艦の損傷事故は未だ記憶に新しい。
なのに山本が出した計画は、冬の千島列島から真珠湾攻撃部隊を出発させる計画。
冬場の東北より北の太平洋は荒れることが多く、その荒れ方は台風並みかそれ以上で、一旦荒れ出せば一週間以上も台風並みに荒れることもある。
そのような場所から出発して、陸地もない太平洋を進み、敵に気付かれないままハワイ島に近付きアメリカ太平洋艦隊の泊地である真珠湾を襲う。
この空母を中心とした艦隊を率いるのは、水雷専門の南雲忠一中将。
彼のこれまでの乗務経験は “水雷” という分野で駆逐艦や軽巡洋艦が主だったから遠洋航海の経験はなく、今回の五輪特別編成の輸送隊にも参加していない。
しかも南雲は航空機の運用に関わる知識もないのにだ。
更に南雲は艦隊派の急先鋒であり、山本や井上と対立しただけではなく海軍兵学校で1期下の井上に対して「殺してやる!」と脅した激しい性格の持ち主。
しかも南雲が旗艦として搭乗する第一航空戦隊は、もともと南雲の1期下の小沢治三郎が司令官を務めていたもので、彼がこの航空部隊を鍛え上げた。
なぜ山本は、この様に優秀で信頼のおける将官がいるにも拘わらず、思想的に対立する南雲を栄誉ある日米開戦の緒戦に当たる司令官に抜擢したのだろう?
もしかしたら、これは博打好きの山本が打った日本を掛けた大博打なのかもしれない!
自ら率いれば十分に実行可能だが他の者から見れば実行不可能と思える計画をわざと立て、それを見た永野が却下すれば日本が勝つ作戦はこれ以外ないから日米の開戦は諦めてもらう。
仮に永野が承諾したとしても、水雷畑で遠洋航海の経験もない南雲なら北の荒れた海で事故を起こしてしまう確率は高い。
仮に1隻でも事故が起き、艦の損傷があれば救援要請のために無線封鎖を解くしかなく、そうなればこちらの行動もアメリカが知ることになるから計画を実行することは難しくなる。
責任を取るのは時代遅れの南雲中将であり、彼が失脚すれば後任に若くて才能のある者を抜擢できる※うえ日米開戦に積極的な艦隊派も抑えることができる。
更にコチラの動きを知ったアメリカから何らかのリアクションはあるはずで、それにより日本政府は新たな対応を要求される。
そして新たな対応とは既に発覚してしまった「開戦」ではない別の対応となるだろう。
前史では成功した真珠湾奇襲攻撃だが、普通に考えれば成功する方がはるかに難しい作戦である。
山本にしてみれば、連合艦隊司令長官を務めていた永野なら、この無謀な作戦を止めてくれるだろうと思ったのかもしれない。
永野にしても無謀な計画を見過ごすはずもなく、計画を山本に託すことで彼が自ら断念してくれることを願ったのかもしれない。
慰労会が終わった帰り道で薫さんが私に聞いた。
「ねえ、草加少将はアノ時何を耳打ちしたの?」と。
私は惚けて、酔っていたから覚えていないと答えてしまった。
この時代で日本が悲惨な戦争を回避することに成功すれば、彼女はまた元居た未来に帰ってしまうだろう。
だから私と薫さんが結ばれることはない。
そう思うと、やけにこの押し迫った12月の寒さが身に凍みる。
※海軍の人事は、基本的に兵学校の卒業順に決められ、山本は第一航空戦隊指令に小沢治三郎[37期]を抜擢したかったが、そうすると南雲[36期]を抜いてしまうため実現しなかった。
ちなみに支那事変で第一連合航空隊司令官を務め海軍における航空機を運用する作戦司令官として一番有能と目されていた山口多門は[40期]であり、ミッドウェイ海戦で飛竜から山口が南雲に行った “すぐに攻撃隊を発進させるように進言した” 行為は並ならぬ逼迫した状況を察した山口の苦肉の策だったが、卒業順を重んじる海軍の風潮が当たり前だと思っている南雲にその心は届かなかったのだろう。
今回は五輪選手団の送迎という名目で、はるばるアフリカまで艦隊を向かわせたが、前史において日本海軍は外洋での大艦隊による行動は行われていなかった。
それゆえに山本が持ってきた計画書を見た、永野軍令部総長は一旦作戦計画を見直すように指示したそうだ。
だが山本は退かず、永野も折れて山本に託した。
無謀な計画。
昭和9年3月に起きた「共鶴事件」と、翌年9月に起きた「第四艦隊事件」は、共に荒天下での艦の損傷事故は未だ記憶に新しい。
なのに山本が出した計画は、冬の千島列島から真珠湾攻撃部隊を出発させる計画。
冬場の東北より北の太平洋は荒れることが多く、その荒れ方は台風並みかそれ以上で、一旦荒れ出せば一週間以上も台風並みに荒れることもある。
そのような場所から出発して、陸地もない太平洋を進み、敵に気付かれないままハワイ島に近付きアメリカ太平洋艦隊の泊地である真珠湾を襲う。
この空母を中心とした艦隊を率いるのは、水雷専門の南雲忠一中将。
彼のこれまでの乗務経験は “水雷” という分野で駆逐艦や軽巡洋艦が主だったから遠洋航海の経験はなく、今回の五輪特別編成の輸送隊にも参加していない。
しかも南雲は航空機の運用に関わる知識もないのにだ。
更に南雲は艦隊派の急先鋒であり、山本や井上と対立しただけではなく海軍兵学校で1期下の井上に対して「殺してやる!」と脅した激しい性格の持ち主。
しかも南雲が旗艦として搭乗する第一航空戦隊は、もともと南雲の1期下の小沢治三郎が司令官を務めていたもので、彼がこの航空部隊を鍛え上げた。
なぜ山本は、この様に優秀で信頼のおける将官がいるにも拘わらず、思想的に対立する南雲を栄誉ある日米開戦の緒戦に当たる司令官に抜擢したのだろう?
もしかしたら、これは博打好きの山本が打った日本を掛けた大博打なのかもしれない!
自ら率いれば十分に実行可能だが他の者から見れば実行不可能と思える計画をわざと立て、それを見た永野が却下すれば日本が勝つ作戦はこれ以外ないから日米の開戦は諦めてもらう。
仮に永野が承諾したとしても、水雷畑で遠洋航海の経験もない南雲なら北の荒れた海で事故を起こしてしまう確率は高い。
仮に1隻でも事故が起き、艦の損傷があれば救援要請のために無線封鎖を解くしかなく、そうなればこちらの行動もアメリカが知ることになるから計画を実行することは難しくなる。
責任を取るのは時代遅れの南雲中将であり、彼が失脚すれば後任に若くて才能のある者を抜擢できる※うえ日米開戦に積極的な艦隊派も抑えることができる。
更にコチラの動きを知ったアメリカから何らかのリアクションはあるはずで、それにより日本政府は新たな対応を要求される。
そして新たな対応とは既に発覚してしまった「開戦」ではない別の対応となるだろう。
前史では成功した真珠湾奇襲攻撃だが、普通に考えれば成功する方がはるかに難しい作戦である。
山本にしてみれば、連合艦隊司令長官を務めていた永野なら、この無謀な作戦を止めてくれるだろうと思ったのかもしれない。
永野にしても無謀な計画を見過ごすはずもなく、計画を山本に託すことで彼が自ら断念してくれることを願ったのかもしれない。
慰労会が終わった帰り道で薫さんが私に聞いた。
「ねえ、草加少将はアノ時何を耳打ちしたの?」と。
私は惚けて、酔っていたから覚えていないと答えてしまった。
この時代で日本が悲惨な戦争を回避することに成功すれば、彼女はまた元居た未来に帰ってしまうだろう。
だから私と薫さんが結ばれることはない。
そう思うと、やけにこの押し迫った12月の寒さが身に凍みる。
※海軍の人事は、基本的に兵学校の卒業順に決められ、山本は第一航空戦隊指令に小沢治三郎[37期]を抜擢したかったが、そうすると南雲[36期]を抜いてしまうため実現しなかった。
ちなみに支那事変で第一連合航空隊司令官を務め海軍における航空機を運用する作戦司令官として一番有能と目されていた山口多門は[40期]であり、ミッドウェイ海戦で飛竜から山口が南雲に行った “すぐに攻撃隊を発進させるように進言した” 行為は並ならぬ逼迫した状況を察した山口の苦肉の策だったが、卒業順を重んじる海軍の風潮が当たり前だと思っている南雲にその心は届かなかったのだろう。
35
あなたにおすすめの小説
対米戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。
そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。
3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。
小説家になろうで、先行配信中!
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
土方歳三ら、西南戦争に参戦す
山家
歴史・時代
榎本艦隊北上せず。
それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。
生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。
また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。
そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。
土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。
そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。
(「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です)
札束艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
生まれついての勝負師。
あるいは、根っからのギャンブラー。
札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。
時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。
そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。
亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。
戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。
マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。
マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。
高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。
科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!
世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
改造空母機動艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。
そして、昭和一六年一二月。
日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。
「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
日英同盟不滅なり
竹本田重朗
歴史・時代
世界は二度目の世界大戦に突入した。ヒトラー率いるナチス・ドイツがフランス侵攻を開始する。同時にスターリン率いるコミンテルン・ソビエトは満州に侵入した。ヨーロッパから極東まで世界を炎に包まれる。悪逆非道のファシストと共産主義者に正義の鉄槌を下せ。今こそ日英同盟が島国の底力を見せつける時だ。
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
以上をご理解の上でお読みください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる