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六話
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「あーやば」
土曜日のゲームセンターで足を伸ばす男がいた。待合椅子に座りながら水分を取って休憩中の男は、人生初の肉離れを経験していた。
日本にも夏がやってきて、日に日に気温が上がっていく。今日も暑い日だった。水分を取りながら熱中症に注意して、じっくりやりつつも上手くなるための努力は惜しまなかった。そしてそれは、その最中に起きた。
「これはもしかして結構ヤバいか?」
ネットであれこれと検索して肉離れであることが発覚。今日はもう音楽ゲームはできないだろう。足であるなら尚更だ。待合椅子横の自動販売機で飲み物を買ってそのまま飲み干す勢いで水分を摂る。壊してしまった足を見ながら、しばらく休む。目の前の人のプレイを見ながら、上手くなる方法を探す。怪我をしても音ゲーマーだった。
ふくらはぎも太もももそこそこの筋肉はある。筋肉痛にはなっても故障は今まで経験がなかった。それだけ自分に気遣いが足りないということであり、自分を誤っていたという甘さでもある。しばらくの休養が必要なら、その間にできることはしておきたい。それすらも抑えておくべきかもしれない。
「水分取るか…」
冷静になってしばらくの休憩。今はひとまず安全に帰宅することから考えなければいけない。目の前のプレイから視線を外して、スマートフォンで電車の時刻表を調べる。ひとまず電車も止まってない。一応はなんとか帰れそうだということで、精神の平静を取り戻す。今日はまだもう少しやりたかったのだが、強制終了というところだろう。虚空を見上げながら、ポツリと呟く。
「それもまた人生、か」
17年間の音ゲー生活。立ち止まらずにここまできた。しかし、一度ここで立ち止まってみてもいいのかもしれない。26歳。ここまでくるのには苦労した。しかし、これからの将来もこのままで良いほど人生も甘くない。これを機に、一度立ち止まってみようか。今まで見えていなかったものが見えるかもしれないし、見落としていたものを拾う機会もあるだろう。どうすれば正解なのか、今の自分には到底分かりようもない。それでも、前に進むしかない。そうすることでしか得られないものもある。
人生の最後に死んだ時、後悔がないような人生を歩みたい。次の一歩を踏み出すために、今は立ち止まろう。それもまた、人生なのだから。
土曜日のゲームセンターで足を伸ばす男がいた。待合椅子に座りながら水分を取って休憩中の男は、人生初の肉離れを経験していた。
日本にも夏がやってきて、日に日に気温が上がっていく。今日も暑い日だった。水分を取りながら熱中症に注意して、じっくりやりつつも上手くなるための努力は惜しまなかった。そしてそれは、その最中に起きた。
「これはもしかして結構ヤバいか?」
ネットであれこれと検索して肉離れであることが発覚。今日はもう音楽ゲームはできないだろう。足であるなら尚更だ。待合椅子横の自動販売機で飲み物を買ってそのまま飲み干す勢いで水分を摂る。壊してしまった足を見ながら、しばらく休む。目の前の人のプレイを見ながら、上手くなる方法を探す。怪我をしても音ゲーマーだった。
ふくらはぎも太もももそこそこの筋肉はある。筋肉痛にはなっても故障は今まで経験がなかった。それだけ自分に気遣いが足りないということであり、自分を誤っていたという甘さでもある。しばらくの休養が必要なら、その間にできることはしておきたい。それすらも抑えておくべきかもしれない。
「水分取るか…」
冷静になってしばらくの休憩。今はひとまず安全に帰宅することから考えなければいけない。目の前のプレイから視線を外して、スマートフォンで電車の時刻表を調べる。ひとまず電車も止まってない。一応はなんとか帰れそうだということで、精神の平静を取り戻す。今日はまだもう少しやりたかったのだが、強制終了というところだろう。虚空を見上げながら、ポツリと呟く。
「それもまた人生、か」
17年間の音ゲー生活。立ち止まらずにここまできた。しかし、一度ここで立ち止まってみてもいいのかもしれない。26歳。ここまでくるのには苦労した。しかし、これからの将来もこのままで良いほど人生も甘くない。これを機に、一度立ち止まってみようか。今まで見えていなかったものが見えるかもしれないし、見落としていたものを拾う機会もあるだろう。どうすれば正解なのか、今の自分には到底分かりようもない。それでも、前に進むしかない。そうすることでしか得られないものもある。
人生の最後に死んだ時、後悔がないような人生を歩みたい。次の一歩を踏み出すために、今は立ち止まろう。それもまた、人生なのだから。
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