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七話
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金曜日の仕事終わり。明日から二日間は休みだ。常に5連勤と2連休が続く。それが日勤職の宿命だった。家に帰宅するなり不安のタネが目の前に広がる。
「これどうしようマジで」
昨日壊れたフライパン。3年目にして取っ手の部分が取れるという形での壊れ方だった。しかもその壊れ方が厄介で、取っ手の部分の引っ掛けるための穴の部分だけが取れたのである。そんな壊れ方がある事自体初耳だった。その厄介な壊れ方をしたフライパンを見つめながら、扱いを模索する。
「洗っても吊る場所ないんじゃ保管に困るぞ」
扱いには困るが、無くなるともっと困る。替えのフライパンもすぐに買いに行けるわけではない。壊れた取っ手部分の中を覗くと腐食したネジが見える。
おそらく接合部の隙間から水が入っていたのだろう。この状態で使い続けるにしても、いったいいつまで保つのか。
間違いなくパスタ茹で機にしかなり得ないそれを取っ手から持ち上げようとした瞬間、左手が不自然に軽くなって空を切る。おかしい。このフライパンはそこそこの重量があったはずだ。ふと視線を下げると、そこにはネジ部が露呈し、IHコンロに鎮座するフライパン本体と、無惨に分離した取手のみが左手に握られていた。
「おい!まじか!おい!」
まさかすぎる事態に頭が一瞬混乱したが、理解すれば絶望の一言だった。そして、ここまで頑張ってきてくれたことに感謝だ。壊れる時は一瞬。それをこんな時に実感するとは思わなかった。
目の前の戦友を前に、してやれることは一つだけだった。最後の一仕事として、パスタを茹でてもらう。それで、こいつの役目が終わる。
目の前のほぼ全壊状態のフライパンをもう一度見る。何をどう頑張っても修復は無理だ。次の不燃ゴミで捨てることになるのだろう。諸行無常というやつか。そんなことを考えながら目の前の茹でられたパスタを眺めていると、ポツリと言葉がこぼれた。
「それもまた人生、か」
もはや再起不能の戦友を見ながら、次の戦友を見つける旅に出ると誓う。それが、こいつへの報いになるはずだと信じて。
「これどうしようマジで」
昨日壊れたフライパン。3年目にして取っ手の部分が取れるという形での壊れ方だった。しかもその壊れ方が厄介で、取っ手の部分の引っ掛けるための穴の部分だけが取れたのである。そんな壊れ方がある事自体初耳だった。その厄介な壊れ方をしたフライパンを見つめながら、扱いを模索する。
「洗っても吊る場所ないんじゃ保管に困るぞ」
扱いには困るが、無くなるともっと困る。替えのフライパンもすぐに買いに行けるわけではない。壊れた取っ手部分の中を覗くと腐食したネジが見える。
おそらく接合部の隙間から水が入っていたのだろう。この状態で使い続けるにしても、いったいいつまで保つのか。
間違いなくパスタ茹で機にしかなり得ないそれを取っ手から持ち上げようとした瞬間、左手が不自然に軽くなって空を切る。おかしい。このフライパンはそこそこの重量があったはずだ。ふと視線を下げると、そこにはネジ部が露呈し、IHコンロに鎮座するフライパン本体と、無惨に分離した取手のみが左手に握られていた。
「おい!まじか!おい!」
まさかすぎる事態に頭が一瞬混乱したが、理解すれば絶望の一言だった。そして、ここまで頑張ってきてくれたことに感謝だ。壊れる時は一瞬。それをこんな時に実感するとは思わなかった。
目の前の戦友を前に、してやれることは一つだけだった。最後の一仕事として、パスタを茹でてもらう。それで、こいつの役目が終わる。
目の前のほぼ全壊状態のフライパンをもう一度見る。何をどう頑張っても修復は無理だ。次の不燃ゴミで捨てることになるのだろう。諸行無常というやつか。そんなことを考えながら目の前の茹でられたパスタを眺めていると、ポツリと言葉がこぼれた。
「それもまた人生、か」
もはや再起不能の戦友を見ながら、次の戦友を見つける旅に出ると誓う。それが、こいつへの報いになるはずだと信じて。
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