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再び、走る。
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「パパ上~ 」
「パパ上さま~ 」
キラキラと期待満ちた仔犬のような目で、陛下を見る二人。
「駄目だ、そんな目で見ても今回は駄目だ!! 」
陛下は、城の皆はダンサンのこの目に、弱かった。今はまだ待てをしているが目を反らすと、直ぐに何処かに行きかねない。その目が二つ増えている。
「うぬぬぬっ…… 」
「耐えろ、耐えて下さい陛下。」
(((陛下、頑張って!! )))
耐える陛下に、エールを贈る護衛騎士達。彼等にも、今にも動き出しそうなお尻をもごもご動かしたしっぽを振っている仔犬の姿が二人の前に投影される。
「パパ上~ 」
「パパ上さま~ 」
「うぬぬぬっ…… 」
陛下は、絶えた。耐えて、耐えて、耐えて……
「す、少しな 」
「殿下、ほ~ら、取ってこ~い。」
副官がボール投げた。
「お菓子の部屋!! 」
「ヘンゼルとグレーテルですわ~ 」
(((それは、お菓子の家だろ!! )))
見事、二人はボールに食らいついた。
『お菓子、お菓子』と口に出しながら二人でその場を回っている姿に、陛下と護衛騎士達は安堵した。
「陛下。こんな所に、おられましたか。」
息せき切って、走って来た黒髪の令息が陛下の前で頭を下げる。
「披露パーティー開始時間を過ぎていますが、まだ時間が掛かりそうですか。」
令息は、既に婚約披露の開始の時間が過ぎていることを報せる。
「うぬぬぬっ…… 時間が過ぎておるか。急がねばならん。」
「お、真実の愛!! 」
陛下が眉を歪ませていると、後ろからダンサンが声をあげた。
その場が、急速に冷え込む。
「真実の愛ですか~ 」
「そうだ、オードリーの真実の愛だ。」
ダンサンはこの場に来た黒髪の令息を指差した。
「どういう事ですか、陛下。」
「私に、聞くな。」
案の定、陛下はダンサンの言うことが分からないと応えた。
「サイオン王太子殿下付のヘップバーン侯爵家のネックス子息ですね。オードリー嬢と幼馴染でありながら、犬猿の仲と言われてます。」
副官が補足する。
「オードリーさまの真実の愛さまですか~ 」
「な、な、な、なに!? 」
目の前に来てちゃんと挨拶をするエリーに、驚く黒髪のネックス子息。
「エリーは、ダンサンさまの真実の愛さまです~ 」
「し、真実の愛? えっ、オードリー嬢の? 何を言っているんですか? 」
何を言われてるのか、分からず狼狽えるネックス。
「見てれば分かる。」
「さすがですわ、ダンサンさま~ 」
えっへんと、胸を貼るダンサンをキラキラとした目で見るエリー。
「どういう事ですか、陛下。」
「私に聞くな。」
答えを求める団長に、分からないと応える陛下。
「真実の愛…… つまり、オードリー嬢はネックス子息を慕っていると。」
副官の呟きに、その場の全員が息を飲んだ。(二人以外は。)
「な、な、何を。オードリー、いや、ペプシ侯爵令嬢は幼馴染ですが、彼女が俺、私を慕っているはずはない。彼女は、ダンサン様の婚約者であり…… 」
「見てれば分かる。」
「さすがですわ、ダンサンさま~ 」
今のネックス子息の狼狽えように、彼がオードリー嬢を好きなのは確実に分った。だが、完璧なオードリー嬢がネックス子息を慕っているとは思えない。その素振りすら見えない。
もしそうなら、げに恐ろしいは阿呆の勘。
「と、とにかく、オードリー ペプシ侯爵令嬢が俺を思ってるなんてありえない!! 」
わたわたと、狼狽えながら後退する。
「陛下、サイオン様の婚約披露パーティーを!! 」
「おお、そうであった。急がねばならん。」
ネックスは陛下に叫んで、逃げだした。それにつられて、
「にい上の婚約披露だ!! 」
「祝福ですわ~ 」
ダンサンとエリーの二人も走り出そうとする。
「お菓子の部屋がありますよ。」
「お菓子の部屋!! 」
「ヘンゼルとグレーテルですわ~ 」
(((それはお菓子の家!! )))
「二人は、任せた。」
「え、えーーーっ!! 」
副官の肩を掴んで、団長は放した。
「さ、陛下。参りましょう。」
「誰かサイオンに会場に来るよう連絡を入れろ!! 急ぐぞ。」
陛下は走り出した、その後を護衛騎士四人も走り出す。
「一人先行して、王太子に会場へと促せ。」
「はっ。」
一人の護衛騎士が先行して足を早める。その後を陛下が走り、団長と部下二人も走り出した。
ダンサンとエリーを任された副官は、
「お菓子、お菓子。」
「ヘンゼルとグレーテルですわ~ 」
自分を中心に手を繋いで回っている二人に、深い溜め息をついていた。
「パパ上さま~ 」
キラキラと期待満ちた仔犬のような目で、陛下を見る二人。
「駄目だ、そんな目で見ても今回は駄目だ!! 」
陛下は、城の皆はダンサンのこの目に、弱かった。今はまだ待てをしているが目を反らすと、直ぐに何処かに行きかねない。その目が二つ増えている。
「うぬぬぬっ…… 」
「耐えろ、耐えて下さい陛下。」
(((陛下、頑張って!! )))
耐える陛下に、エールを贈る護衛騎士達。彼等にも、今にも動き出しそうなお尻をもごもご動かしたしっぽを振っている仔犬の姿が二人の前に投影される。
「パパ上~ 」
「パパ上さま~ 」
「うぬぬぬっ…… 」
陛下は、絶えた。耐えて、耐えて、耐えて……
「す、少しな 」
「殿下、ほ~ら、取ってこ~い。」
副官がボール投げた。
「お菓子の部屋!! 」
「ヘンゼルとグレーテルですわ~ 」
(((それは、お菓子の家だろ!! )))
見事、二人はボールに食らいついた。
『お菓子、お菓子』と口に出しながら二人でその場を回っている姿に、陛下と護衛騎士達は安堵した。
「陛下。こんな所に、おられましたか。」
息せき切って、走って来た黒髪の令息が陛下の前で頭を下げる。
「披露パーティー開始時間を過ぎていますが、まだ時間が掛かりそうですか。」
令息は、既に婚約披露の開始の時間が過ぎていることを報せる。
「うぬぬぬっ…… 時間が過ぎておるか。急がねばならん。」
「お、真実の愛!! 」
陛下が眉を歪ませていると、後ろからダンサンが声をあげた。
その場が、急速に冷え込む。
「真実の愛ですか~ 」
「そうだ、オードリーの真実の愛だ。」
ダンサンはこの場に来た黒髪の令息を指差した。
「どういう事ですか、陛下。」
「私に、聞くな。」
案の定、陛下はダンサンの言うことが分からないと応えた。
「サイオン王太子殿下付のヘップバーン侯爵家のネックス子息ですね。オードリー嬢と幼馴染でありながら、犬猿の仲と言われてます。」
副官が補足する。
「オードリーさまの真実の愛さまですか~ 」
「な、な、な、なに!? 」
目の前に来てちゃんと挨拶をするエリーに、驚く黒髪のネックス子息。
「エリーは、ダンサンさまの真実の愛さまです~ 」
「し、真実の愛? えっ、オードリー嬢の? 何を言っているんですか? 」
何を言われてるのか、分からず狼狽えるネックス。
「見てれば分かる。」
「さすがですわ、ダンサンさま~ 」
えっへんと、胸を貼るダンサンをキラキラとした目で見るエリー。
「どういう事ですか、陛下。」
「私に聞くな。」
答えを求める団長に、分からないと応える陛下。
「真実の愛…… つまり、オードリー嬢はネックス子息を慕っていると。」
副官の呟きに、その場の全員が息を飲んだ。(二人以外は。)
「な、な、何を。オードリー、いや、ペプシ侯爵令嬢は幼馴染ですが、彼女が俺、私を慕っているはずはない。彼女は、ダンサン様の婚約者であり…… 」
「見てれば分かる。」
「さすがですわ、ダンサンさま~ 」
今のネックス子息の狼狽えように、彼がオードリー嬢を好きなのは確実に分った。だが、完璧なオードリー嬢がネックス子息を慕っているとは思えない。その素振りすら見えない。
もしそうなら、げに恐ろしいは阿呆の勘。
「と、とにかく、オードリー ペプシ侯爵令嬢が俺を思ってるなんてありえない!! 」
わたわたと、狼狽えながら後退する。
「陛下、サイオン様の婚約披露パーティーを!! 」
「おお、そうであった。急がねばならん。」
ネックスは陛下に叫んで、逃げだした。それにつられて、
「にい上の婚約披露だ!! 」
「祝福ですわ~ 」
ダンサンとエリーの二人も走り出そうとする。
「お菓子の部屋がありますよ。」
「お菓子の部屋!! 」
「ヘンゼルとグレーテルですわ~ 」
(((それはお菓子の家!! )))
「二人は、任せた。」
「え、えーーーっ!! 」
副官の肩を掴んで、団長は放した。
「さ、陛下。参りましょう。」
「誰かサイオンに会場に来るよう連絡を入れろ!! 急ぐぞ。」
陛下は走り出した、その後を護衛騎士四人も走り出す。
「一人先行して、王太子に会場へと促せ。」
「はっ。」
一人の護衛騎士が先行して足を早める。その後を陛下が走り、団長と部下二人も走り出した。
ダンサンとエリーを任された副官は、
「お菓子、お菓子。」
「ヘンゼルとグレーテルですわ~ 」
自分を中心に手を繋いで回っている二人に、深い溜め息をついていた。
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