悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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熱。

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セルビアは、引き籠もった。

『乙女の秘密』を、知られたからだ。
(死にたい。 )
毛布の中で、震える。

「「「セルビア、しっかりして。」」」
令嬢達が、泣いている。

(無理よ、死にたい。)
『乙女の秘密』を、弟と好きな人に知られ セルビアは落ち込んでいた。
(皆も、好きな人に知られたら 私の気持ちが分かるわ。)
走馬灯のように、過去が蘇る。ボルトに知られた、あの日 あの顔。
(ボルト様は私の事を、どう思ったの? )

「姉様、死なないで。」
天使が、不安そうな声を 上げている。
(セルビィ。)
セルビアは、神に祈る様に手を組んだ。
(お願い。私を、嫌わないで。)

「「「セルビア。」」」
「姉様!! 」

セルビアは弟に嫌われるのでは と。その事が、不安でならなかった。
(顔を、見せられない 見られない。)
「先立つ不孝を、許して。」
セルビアの弱々しい声が、聞こえてくる。
「姉様!! 」
「「「気をしっかり、お持ちになって!! 」」」
セルビィと令嬢達は、ベットに縋り付いた。



「大丈夫です。セルビア様は、単なる微熱ですから。」
重症者の最後のように接するセルビィ 令嬢達に、アリスは言った。
「でも、もう何日も熱が。」
セルビィは、今にも泣き出しそうに 言った。
「母様見たいに、死んでしまうかも。」
セルビィは、目に涙を溜める。その哀しげな表情に、アリスと令嬢達は 胸を掴まれた。
「大丈夫です、セルビィ様。セルビア様の病気は仮病ですから。」
アリスは、真実を暴露した。
「仮病? 」
「「「仮病なの? 」」」
「はい。仮病ですから、セルビア様は死にません。」
健康優良者のセルビアは、熱を出した事がなかった。だから、毛布の中に潜り込んだ。
(どうして私は健康なの? こんな時ぐらい、熱が出てもいいじゃ無い。)
心身ともに疲れてるはずなのに、微熱ひとつも出ない。
「姉様は、仮病なの? 」
「はい。仮病です。」
「「「セルビア。」」」
令嬢達は、怒りに震えた。
セルビィは、呆然と聞く。
「姉様は、死なない? 」
「はい。死にません。」
「母様見たいに、死なない? 」
「はい。死にません。」
アリスは、安心させる様に微笑む。
「姉様は、仮病なの。」
「はい。仮病です。」
「仮病だから、死なない? 」
「はい。仮病だから、死にません。」

「仮病 仮病て、言わないで!! 」
セルビアは、顔を出した。
「姉様!! 」
「セルビィ。」
二人は顔を合わせた。セルビアは気まずそうに、顔を背ける。
「よかった。」
セルビィが、破顔した。
眩しい天使の笑顔が、向けられる。
「ごめんなさい。心配かけて。」
セルビアは素直に、謝った。


「セルビア様は、仮病ですから 安心して部屋に戻って下さい。」
アリスは、優しく促した。
「そうね、セルビィ君は部屋に戻って。」
「セルビアは、私達がみているから。」
「大丈夫。」
令嬢達は微笑みながら、セルビィの背を押した。
「ですが、まだ傍にいたいです。」
「セルビアとお話があるの。」
「僕、静かにしています。」
「女子だけの話なの。」
「ですが、姉様の顔を見ていたいです。」
「乙女の秘密なの。」
令嬢達は、セルビィを部屋から つまみ出した。
「姉様!! 」
静かに閉まる扉に、セルビィは縋り付く。

「セルビィ、セルビアは大丈夫なのか? 」
不安そうに 扉を見て、立ち尽くすセルビィの肩に ナルトは手を置いた。
「姉様は、仮病です。」
「仮病? 」
「はい。仮病です。」
「なんでまた? 」
「分かりません。」
「そうか。」
ナルトは、なんとなくセルビアの仮病の訳が 分かった気がした。



「セルビア様、仮病ですって? 」
「仮病ですか? 」
「仮病。」
「はい。仮病です。」
令嬢達の問いかけに、アリスが応えた。
「仮病、仮病って、言わないで!! 」
「「「仮病でしょう。」」」
令嬢達は、声を合わせていった。
「死にたい。 」
「死なないわよ。」
「死にたいの。」
「無理ですわ。」
「死んでしまいたい。」
「仮病じゃ死なないわよ。」


「死にたい。 」
「どうして?」
「死にたいの。」
「何故?」
「死んでしまいたい。」
「駄目よ。」
セルビアは、自暴自棄になっている。令嬢達は、理由を聞いた。
「どうやら、セルビィ様ならず ボルト様にも知られたようで。」
アリスが、代わりに応えた。
「「「えっ!? 」」」
令嬢達は、セルビアに哀れみの目を向ける。
「そうよ、知られたのよ。もう死にたい!! 」
セルビアは声を上げた。
「もう、お終いよ!! 」
セルビアは、毛布を頭に被った。



応接室でナルトとお茶をしながら、セルビィは考えた。
「姉様は何故、仮病なんて? 」
「ん、そうだな。」
首を傾げて、セルビィはナルトに聞いた。
「恥ずかしかったんじゃ ないのか。」
「恥ずかしい? 」
セルビィは、首を傾げた。
「あんな本、呼んでると知れたらな。」
「あんな本? 」
セルビィは、益々 首を傾げた。
「どうやら、叔父さんにも知られたようだし。」
「ボルト様? 」
セルビィは、頭を捻る。
「何故、ボルト様が出て来るのです。」
ナルトは、慌てた。
「乙女には、男に知られたくない事が あるんだ。」
「知られたくない 事? 」
セルビィは、考えた。
「なんですか? 」
ナルトは、頭を掻いた。
「セルビィは、あの本をどう思った。」
「あの本? 」
セルビィは思い出したように、手を合わせた。
「あの不思議な、男同士の生殖活動の本ですか? 」
「その 身も蓋もない言い方を、やめろ。」
セルビィは、可愛らしく首を傾げた。
「その生殖活動を、どう思う。」
「どうとは? 」
「気持ち悪いとか、恥ずかしいとか。」
「何故です? 生殖活動は、子孫を残すための行為。何故、気持ち悪いんですか? 何故、恥ずかしんですか? 」
ナルトは、頭を抱えた。
「ちょっと、待ってろ。」
そう言うと、ナルトは部屋を出て行った。
暫くして戻って来たナルトの手には、薄い本が握られていた。
「セルビィ。これを見てみろ。」
セルビィは、ナルトから本を受け取って 見る。
「どう思う? 」
パラパラと、本を捲って見る。
「女性の裸ですね。」
「ああ。」
「それが? 」
セルビィは、不思議そうにナルトを見た。
「ドキドキとかムラムラとか、しないか? 」
「ドキドキ? 」
セルビィは、首を傾げた。
「ムラムラ? 」
セルビィには、分からない様であった。
「ヨシ、分かった。」
ナルトは、本を取り上げた。
「何が、分かったんです? 」
「お前がまだ、お子様だと言う事がだ。」
「僕は、もう直ぐ十六です。お子様ではありません。」
「お子様だ。この本を見て何にも感じないのなら、お子様だ。」
「女性の裸が? 」
「そうだ、女性の裸だ。」
「ドキドキ、ムラムラ? 」
首を傾げる。
「ドキドキ ムラムラし無い限り、お子様だ。」
「お子様。」
セルビィは、ナルトから 本を取ろうとした。
「『男の純情』を、奪うな。」
ナルトは、本を懐に隠した。セルビィは、頰を膨らませて ナルトを睨んだ。
「まあ、総てが終わったらお前も大人になれるさ。」
ナルトは、笑った。

(今は、恋愛に避けれる余裕など無いんだろうな。)
総ての事が、終わったら。
(その前に、シスコンをなんとかしないと な。)
ナルトは、セルビィの頭を優しく 撫でた。


セルビアは、毛布にくるまって頭だけを 出す。
「私はどうして、こんなに健康なの? 」
「健康は、いいことよ。」
「儚げな女性に、なりたい。」
「仕方がないわよ、豪の者は皆 健康優良者ですもの。」
「お父様さえ、熱を出したのに。」
「あれは、知恵熱でしょう。」
令嬢達は、頷いた。
「そうです。セルビィ様も知恵熱ですし。」
アリスが、応えた。
「ねえ、おかしくない。」
「「「「えっ。」」」」
リリアナが、疑問を定義した。
「セルビィ君て、本当に病弱なの。」
「何を言ってるの? セルビィは、領地で療養するくらい 病弱なのよ。」
「そうですわね。」
アイリーンが、不思議そうに呟いた。
「確かに、変よね。」
テレジアが、頷く。
「何、何なの? 」
セルビア不安そうに、皆を見る。
「セルビア様。ルナの大地は、ここ(王都)より苛酷なのでは? 」
「「「そうよ!! 」」」
令嬢達は、叫んだ。
「普通の田舎では、ないはずですわ。」
「体が弱いのに、そんな苛酷な処で 療養をするのかしら。」
「セルビィ君が倒れたのって、あの一回しかないわ。」
「「「本当にセルビィ君て、病弱なの? 」」」
令嬢達は、疑問を口にした。セルビアは真っ赤になって、叫んだ。
「セルビィは、病弱よ!! 」
皆の言葉に惑わされながら、やはりセルビィを信じたくて。セルビアは急に頭に血が登って、倒れた。
「「「セルビア!!」」」
「セルビア様!? 」

セルビアは、念願の熱を出して 倒れた。
外には、雪が降り積もる。短い冬休みが、終わっていく。




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