【完結】どうやら、乙女ゲームのヒロインに転生したようなので。逆ざまぁが多いい、昨今。慎ましく生きて行こうと思います。

❄️冬は つとめて

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美味しい、兎さん。

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桜舞い散る木の下に横になるルイージ公爵令息。緑の髪のイケメン。

木の下に横たわる彼。あなたは彼を。
①起こす。
②横に座り見詰める。
③立ち去る。

①へ進む。
「起きて下さい、起きて。」
「ん……ここは? 俺は、眠っていたのか? 」
ピンクの花びらが舞い散る中、ピンクの髪をした可愛らしい少女がルイージに微笑みかける。
「こんな所で眠っていると風邪を引きますよ。」
「ありがとうお嬢さん。君の名前は? 」
「私はロロリイ。ロロリイ・エボックです。」
チャララ~ンと、音楽と花びらが舞い散る。立ち去るピンクの髪の少女をルイージは見詰めていた。
これが『乙女ゲーム』攻略対象ルイージの出会いの場面である。

ここから先はオフレコである。
「こんな所で俺は眠ってしまったのか。昨日はしっかり眠った筈なのに。」
ルイージは桜の木に手を付いた。
「此所に来て急に眠気が……。眠りが浅かったのか? 」
ルイージは桜舞い散る空を見上げた。
「ふふっ。毒、痺れ薬に眠り粉は狩人のたしなみですわ。」
ロロリイは高位獲物に接近するため罠を張った。

でもこれは乙女ゲームのオフレコの部分。今現在進んでいる世界とは違う乙女ゲームの世界。

今現在は。
「これは? 」
黒縁眼鏡君は兎を片手に聞いてきた。ロロリイは微笑んだ。
「美味しい、兎さん。」
後で何人かの令嬢が声なき悲鳴をあげた。令息達も顔をこばらわす。


「美味しい……? 」
眼鏡君は兎を見詰める。

(あれ? 反応が薄いわ。)
ロロリイは首を傾げる。
「イノシシの方がよかったかしら? 」
(そうね、少し獲物が小さかったかしら。)
ロロリイと彼女は眼鏡君の反応の薄さに思案する。
「でも、イノシシは臭みがあってお肉は硬いですよ。」
(そうね、毛も硬いし可愛くないわ。)
心の中で、ロロリイと彼女は会話をする。しかもロロリイ寄りだ。

「可笑しいですわ、近所の奥さんは喜んでくれるのに? 」
(そうね、子供達もお肉が食べれると小躍りをしていたはず。)
ロロリイの領地は田舎であり、近所の領地も田舎の村である。ので、お肉はそのまま、つまり小さい物は解体前の姿で売られることが多かった。鳥とか兎とか。
「毛皮も鞣せば使えるからて、ご近所さんは喜んでくれるのに。」
(そうね、都会の人は解体が出来ないのかも。)
ここは王都、お肉は解体してお肉として売られていた。

兎を見詰め続ける眼鏡君にロロリイは笑って付け加える。
「あ、ちゃんと血抜きと内臓処理はしてるわ。」
(皮も剥いだ方がよかったかしら? )

後で令嬢達の何人かが、倒れた。令息達が受け止める。

ロロリイは令嬢達が倒れた音に振り向いた。そして可愛らしく首を傾げる。令息達が、青ざめる。
「如何したのかしら? 」
ロロリイを攻めてはいけない、彼女は狩人。血抜きも内臓処理もお手の物、都会の令嬢と違う者。
だが、お肉も『美味しいですわ。』と食べ、毛皮も『素敵ですわ。』と着こなす令嬢達は殺してくれる者達に感謝すれども悲鳴をあげて倒れるとはいかがなものかと思うしだい。
話がそれたので戻そう。

ここで、ハタと彼女は気づく。
(ちょっと待って。普通の令嬢は男性に取り立てお肉をお詫びのプレゼントにしない!! )
普通の女性も、男性へのプレゼントに取り立ての獲物を送ったりしません。
(しまった、普通甘いお菓子とかだわ!! )
彼女は悲鳴をあげる。
自分がどれ程ロロリイに侵略されているのかを。
(しまった、選択を誤った!! )
お肉と言うか現ナマを貰って喜ぶ男性が居るはずは無い。

青い顔で倒れた令嬢を抱えて、見ている令息。
(まずいわ。)
彼女は眼鏡君に振り返った。現ナマ兎を見つめて固まっている眼鏡君。
彼女は遭えて微笑んだ。

「皮を剥いで、お腹に香草摘めて丸焼きにすると美味しいわよ。」
彼女は料理上手として、誤魔化そうと上目遣いで笑った。


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