【完結】どうやら、乙女ゲームのヒロインに転生したようなので。逆ざまぁが多いい、昨今。慎ましく生きて行こうと思います。

❄️冬は つとめて

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朝の川原で、人命救助。

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「昨日は失敗してしまったわ。」
彼女は深く反省した。
「現ナマ(兎の死体)を渡すなんて、淑女として有るまじき行為だわ。」
いえ、女性でなくとも男性でもあり得ません。ただ彼等が貴族でなければ、王都に住む者でなければ、あるいは引かれなかったかも知れない。ロロリイは、王都まで物々交換をしてやって来たのだから。



朝早くからロロリイは、川の近くに来ていた。ノエル学園は森や川、湖等も敷地内にあった。ロロリイは罠に掛かった獲物を確認すると同時に、川の近くで何かを煮炊きしていた。
「料理で胃袋を掴んじゃおう、策戦よ。眼鏡君、待ってなさい。ふふふっ。」
学園寮から近く、これはロロリイの感覚なので、普通の者には遠乗りの距離であった。つまり、田舎の人の直ぐそこが、かなりの距離を歩く意味になるのと同じ事。

「はじめちょろちょろ、中ぱっぱ、王様死んでも蓋取るな~♪ 」

米の炊き方の歌を歌いなが薪をくべる。彼女は、ご飯を炊いていた。この世界、白米は無く家畜の餌としてモミは売られていた。大袋ひとつで、かなりの量が安く売られていた。
「ふふふっ、お安かったわ。脱穀も精米もして貰ったし、兎10羽でお釣りがくるわ。」
    
ロロリイは凄腕の狩人であった。兎10羽など簡単に仕留められるのである。流石は腕力と猛獣駆除で子爵まで、登り上がったエボック家である。
「手造り弁当を渡して、眼鏡君の胃袋をわしづかみよ。」
彼女は眼鏡君を餌付けしようと考えていた。彼女は料理は出来ないが、ロロリイはサバイバル料理の出来る者。彼女の頭の中にある料理を、見事に作る事が出来ていた。

(流石はロロリイ、ヒロインね。)

綺麗な箱を用意して、ロロリイは微笑んだ。


朝の爽やかな風をあびながら、草原の中を遠乗りをしている、アンドレ・フォン・カプチーノがいた。

「きゃぁ!! 」
女性の悲鳴を聞いて、アンドレは馬を止めた。悲鳴の聞こえた川の方角に馬を走らせる。川原を見回せる橋の上から下を覗き込んだ。その時、下から猪が飛び出した。

ヒッヒヒッヒーーン!! 
「うわぁぁぁぁ……!! 」

馬は驚いて、前足を振り上げた。アンドレは見事馬に振り落とされて、川にダイブした。

馬は逃げ出し、飛び出した猪は橋の上で息絶えた。急所には矢が刺さっている。
「ロロリイから逃げようなんて、百年早いわ。」
ロロリイはヒラリと橋の上に飛び上がった。肩には弓矢と縄が担がれている。ロロリイは満足そうに猪を見詰めた。
「馬の嘶きが聞こえたけれど、空耳かしら? 」
ロロリイは可愛らしく、首を傾げた。猪の後ろ足を縄で締め上げ、橋に吊し血抜きを始める。内蔵を抜き、川原の端に埋め猪を川に沈めた。大きな獲物が捕れたとロロリイはスキップながらに、元の場所、煮炊きをしていた所に戻って来た。

「あら? 」

ロロリイは川原に打ち上げられているアンドレを見つけた。

「まだ寒いのに、水泳なんて豪胆だわ。」
(な、訳ないじゃない!! きっと自殺だわ。)
「自殺? なら、放って置いた方がいいかしら。」
もし生きているのなら、このまま放って置けば寒さで亡くなるだろう。

「駄目よ、ロロリイ。人命救助よ。」
彼女は、ロロリイに言い聞かせた。やはり彼女には、目の前で人が死なれるのは辛かった。

ロロリイはスキップしながら、アンドレに近づいた。近くにある棒でツンツンと突く。

「(ツンツン)生きてますか? (ツンツン)死んでますか? 死んでたら、返事して下さい。(ツンツン)」
(死んでたら返事しないわよ!! )
「そっか。」
(そうよ。)
仕方がないのでロロリイはアンドレを逆さまにつり上げた。足を肩に担ぎ上げた。動いている間に逆さまで体か揺れたことで、肺に入っていた水を吐き出すことに成功する。

「ゲホッゲホッゲホッ!! 」
アンドレは咳き込んだ。

「(あ、生きてる。)」
ロロリイは、アンドレを火の傍に置いて眼鏡君を落とす弁当作りに戻るのであった。





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