【完結】どうやら、乙女ゲームのヒロインに転生したようなので。逆ざまぁが多いい、昨今。慎ましく生きて行こうと思います。

❄️冬は つとめて

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「さあ、楽しい舞を踊りましょう。」

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『カッ、キーーーン!! 』

金属音が会場内に響き渡った。

ロロリイの足袋のかかと部分に隠された金属と王子の剣が打つかりあった音だ。オスカル王子が婚約者を庇うために差し出した剣にロロリイが繰り出した蹴りが交わりあった。それは正確にロロリイが急所である首筋を狙ったからこそ防げたものであった。

オスカル王子は鞘に入れた剣の柄と先を持って、婚約者を背に庇いながらロロリイの蹴りをその剣で受け止めた。かなりの重圧が王子の体にかかるが、なんとか王子はロロリイを力で弾いた。ロロリイは空中で一回転すると、スザザザザと足を広げ床に手を付きながらその弾かれた力を消す。直ぐに顔をあげる。その顔は、期待に輝いていた。

「オスカル様!! 」
「下がっていろ、マリィ!! 」
何が起こったか理解が出来ぬまま振り向こうとしたマリィアン公爵令嬢に、オスカルは叫んだ。

「ルイージ、アンドレは令嬢達を護れ。フェルゼンは力をかせ!! 」
「了解だ。」

舞踏会会場のオスカル達がいる場所が彼等を置いて開けた。四人の令嬢達を護るようにルイージとアンドレが背に庇い。オスカルとフェルゼンは、ロロリイと対峙した。

直ぐさま次の攻撃を予想していたが、ロロリイは攻撃をしてこなかった。オスカルとフェルゼンは鞘に入ったままの剣をロロリイに向ける。鞘に入った剣は殺さない為だ。

「話には聞いたが、まさか本当に仕掛けてくるとは……。」
「命の恩人であるが、令嬢達を討たせる訳にはいかない。」 
「話には聞いていた? 」
ロロリイはコテンと、首を傾げた。

「ああ、くまさんね。やっぱり、患者だったのね。」
納得がいったように微笑んだ。

「では、そちらの準備は整っていると見ていいのね。攻略対象の実力を堪能させていただくわ。」
ロロリイは不敵に笑った。

「なんだ貴様は!! 」
「刺客か!! 」
「「「オスカル様、ここは我々にお任せください!! 」」」
王子にいいところを見せようと下心のある令息達が、ロロリイに立ちはだかった。相手は五人、ロロリイは微笑んだ。

「体ごなしにはいいかしら? 」
ロロリイは立ち続けて、五人を見る。どう見ても雑魚としか映らない。

「ふふっ。先に、この方達のお相手を差してもらいます。」
それでもロロリイは初めての武道会に心を弾ませていた。多くの人との戦闘の触れ合いにロロリイは飢えていた。

女性と侮って素手取り押さえようとロロリイに勢いよく襲いかかる。

「きゃあ!! 」

勢いよく襲いかかる一人を簡単に避け、足を払えばその勢いのまま周りの野次馬に突っ込んだ。一人が抱きつこうとするところをその場にしゃがみ込み、膝の部分を肘で押すと無様に後ろに尻もちをつく。 
 
令嬢ならぬ動きに三人が躊躇すれば、蹴り出し一人の腹に右の拳を叩き込む。「ぐほっ」と声ともに吐瀉物を吐き出す男の背に左手を置き、倒れ伏す男の反動を使って浮き上がる。空中で猫のようにくるりと回転して片足を高く上げる。隣りにいる一人の肩に踵落としを食らわすと、蹲る背を足蹴にまたもひらりと飛んだ。そのまま最後の一人に鋭い蹴りを御見舞する。まるで空中で舞を踊っているように流れる動きであった。

あっという間の出来事であった。

倒れ伏す三人の令息と、最初に転ばされた幸運の令息は震え上がっていた。呆然とそれを見ていた周りの令息令嬢は、声もなく立ち尽くしていた。

「弱すぎますわ。」
最後に倒した令息を見下ろしてロロリイは呟いた。静かに目線を上げ、オスカル王子達を見てはにかむように微笑む。

「さあ、楽しい舞を踊りましょう。」
ロロリイはまるで、ダンスのパートナーをお願いするようにオスカル王子に問いかけた。

あれ、何でこうなった? 
これは乙女ゲームの世界ではなかったか? 恋愛要素は? これはバトルゲームだったか? 転生した彼女は目覚めないのか? おーーい、彼女!! どこに行った!!


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