2 / 11
第2話 色なしの少女
しおりを挟む
「エレナと‥‥」
団長が言いかけた時、後ろから音の小さいノックが聞こえた。
「はい。どちら様ですか」
「エレナ」
その返事に団長と副団長は顔を見合わせて頷く。
「どうぞ入ってください」
皆が扉の方を見ているのでつられて振り返った。開いた扉から姿を見せたのは、輝くような白い髪をした少女だった。
エレナ隊の隊長、エレナといえば騎士団内で唯一の色なし隊員だ。更に色なしでありながらギフトを持っているという世界で唯一の存在でもある。ただ、エレナ隊の隊員以外は彼女のギフトを見たことがないので本当はギフトないのではとよく噂されている。
今まで入団式や朝礼で見かけた事は何度もあったが、こんなに間近で姿を見たのは初めてだ。
俺の肩ぐらいまでしかない背丈に透き通るような白い肌、大きな瞳は左右で色が違う。
こちらを見た彼女が一瞬固まった後、入ってきた扉から出ていこうとしたのを団長が慌てて止め、俺の横に来るように促す。渋々隣に来た彼女に団長が笑いかける。
「エレナ、こちらミカエル・トレント。イーサ隊にいたんだけど、事情があって今日からそっちの隊に入ってもらう事にしたから急で悪いけどよろしくね」
「よ、よろしくお願いします!」
彼女に向かって深々と頭を下げた。エレナ隊への異動は不本意だが。
「ん、わかった。貴方もよろしく」
幼い見た目とは裏腹に落ち着いた雰囲気の彼女は大人のように感じさせる。‥‥もしかして幼く見えるだけで実は結構大人だったりするのかな。
「任務の方は大丈夫だった?」
「何も問題はない」
団長相手に友人のように話している。こういう時に真っ先に注意しそうな副団長を見た。視線を感じとったのかこちらを見た副団長と目が合ったが、おもむろに逸らされた。
‥‥何も気にしないでおこう。そう心に決めた。
「その、レイモンドはどうだ?」
「今の所問題ない。そんなに気になるなら会いに行けばいい。レイモンドもそれを望んでいる」
その言葉に団長は表情を曇らせて呟くようにそうだなと返事をした。
雰囲気が一気に重くなった。いつ会っても笑顔で明るい印象の団長がこんなに沈んでいる所を初めて見た。レイモンドっていう人と何かあったんだろうな。まあ、一介の騎士である俺には関係ない話だろうけど。
「エレナ、連日で申し訳ありませんが、明日も任務へ行ってもらえませんか?」
雰囲気を変えようと思ったのか副団長がエレナに話をふった。
「わかった」
「詳細は明日説明しますので、本日はゆっくり休んでください。お疲れ様でした」
お疲れと言うとエレナは足早に部屋を出て行った。俺は副団長に促され、彼女の後を追いかけた。
団長が言いかけた時、後ろから音の小さいノックが聞こえた。
「はい。どちら様ですか」
「エレナ」
その返事に団長と副団長は顔を見合わせて頷く。
「どうぞ入ってください」
皆が扉の方を見ているのでつられて振り返った。開いた扉から姿を見せたのは、輝くような白い髪をした少女だった。
エレナ隊の隊長、エレナといえば騎士団内で唯一の色なし隊員だ。更に色なしでありながらギフトを持っているという世界で唯一の存在でもある。ただ、エレナ隊の隊員以外は彼女のギフトを見たことがないので本当はギフトないのではとよく噂されている。
今まで入団式や朝礼で見かけた事は何度もあったが、こんなに間近で姿を見たのは初めてだ。
俺の肩ぐらいまでしかない背丈に透き通るような白い肌、大きな瞳は左右で色が違う。
こちらを見た彼女が一瞬固まった後、入ってきた扉から出ていこうとしたのを団長が慌てて止め、俺の横に来るように促す。渋々隣に来た彼女に団長が笑いかける。
「エレナ、こちらミカエル・トレント。イーサ隊にいたんだけど、事情があって今日からそっちの隊に入ってもらう事にしたから急で悪いけどよろしくね」
「よ、よろしくお願いします!」
彼女に向かって深々と頭を下げた。エレナ隊への異動は不本意だが。
「ん、わかった。貴方もよろしく」
幼い見た目とは裏腹に落ち着いた雰囲気の彼女は大人のように感じさせる。‥‥もしかして幼く見えるだけで実は結構大人だったりするのかな。
「任務の方は大丈夫だった?」
「何も問題はない」
団長相手に友人のように話している。こういう時に真っ先に注意しそうな副団長を見た。視線を感じとったのかこちらを見た副団長と目が合ったが、おもむろに逸らされた。
‥‥何も気にしないでおこう。そう心に決めた。
「その、レイモンドはどうだ?」
「今の所問題ない。そんなに気になるなら会いに行けばいい。レイモンドもそれを望んでいる」
その言葉に団長は表情を曇らせて呟くようにそうだなと返事をした。
雰囲気が一気に重くなった。いつ会っても笑顔で明るい印象の団長がこんなに沈んでいる所を初めて見た。レイモンドっていう人と何かあったんだろうな。まあ、一介の騎士である俺には関係ない話だろうけど。
「エレナ、連日で申し訳ありませんが、明日も任務へ行ってもらえませんか?」
雰囲気を変えようと思ったのか副団長がエレナに話をふった。
「わかった」
「詳細は明日説明しますので、本日はゆっくり休んでください。お疲れ様でした」
お疲れと言うとエレナは足早に部屋を出て行った。俺は副団長に促され、彼女の後を追いかけた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる