兄貴がイケメンすぎる件

みららぐ

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幼なじみがモテすぎてる件②

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「工藤、こっち」
「あ、ハイ」

あれから、しばらくしてようやく部活が始まった。
雑用を任されたあたしは、顧問の先生に手伝って貰いながら、一つずつ仕事をこなしていく。

部員達がグランドを走っている間に石やゴミを拾ったり、
部員全員分のドリンクを作ったり、
空気が無くなってしまったボールに空気をいれたり、
部員全員分のユニフォームを洗濯したり、
散らかった部室内や倉庫の中を片付けたり…。

いや忙しすぎでしょ!

「せ、先生…マネージャーとか募集しないんですか?」
「いやー、去年募集してそれなりに集まってたんだけどな、皆んな仕事内容がハードすぎて退部してくんだよ。それに、恋愛目的で入部したりな」
「…で、結果誰もいなくなってマネージャーも募集しなくなったと?」
「そういうことだな。まぁ、新入生が入部したら、しばらくはそいつらに任せればいいから」

先生はそう言うと、「じゃあ俺はグランドの様子を見に行くから」と掃除途中の部室を後にする。
…え、ここからはあたし独りで掃除しろってこと?
あたしはホウキ片手に唖然とすると、一旦散らかったままの部室内を見渡してみた。

倉庫から持ってきたのか、転がったままのサッカーボールが数個…。
ベンチに出しっぱなしになっているいくつかの鞄…。
空になったペットボトルがいくつか床に転がっていて…。
脱ぎ散らかしてある誰かの古いシューズ。
ってか、野球のバットが何でサッカー部の部室に置いてあるの。

あたしはその光景を見渡すと、やがて「やるしかないか」と片付け始めた。

…………

そして、それからどれくらいの時間が経過しただろうか。
部室内に散らかっていたサッカーボールを倉庫に戻すべくグランドを通りかかったら、その時そこから女子達の黄色い歓声が聞こえてきた。

「相沢くーん!頑張ってー!」
「もう超かっこいー!」

「…」

…この歓声は。
健の応援に来た女子達の声だ。
健も、かなりモテているみたいだから。
だけどそのモテようをそこまでよく知らなかったあたしは、そこに不意に目を遣って、ちょっとびっくりした。

だって、応援に来ている女子の数が思っていたよりも多すぎる。
嘘…健ってこんなにモテてたの?
女子達は皆んな顔を赤くして見ていて、だけど一方の健は部活に集中して励んでいる。

あたしがそんな光景にびっくりしながら、そのまま倉庫の中に入ると、その時顧問の先生に声をかけられた。

「あ、工藤!お前も12時になったら休憩入っていいぞ」
「ああ、ハイ」

そう言われて、サッカーボールを元あった場所に戻した直後、グランドに備え付けられてある大きな時計に目を遣る。
今の時刻…12時5分前。
するとふいにあたしは、同じ学年の部員に声をかけられた。

「あ、ねー工藤さんちょっと手当てしてー」
「え、」
「膝擦りむいた。めっちゃいてぇ」
「あ、はいはい」

そう言われて、近くにあった救急箱を手に取って、早速その手当てを始める。

「お前そんくらいツバつけときゃ治るよ」
「いや先生ひでぇな」

手当てをしている最中、先生がそう言って冗談交じりに笑う。
そんな会話をそばで聞いて思わずあたしも笑っていると、手当てが完了したその直後、先生がホイッスルを吹いて言った。

「おーし、じゃあ1時まで休憩ー。そっから練習試合始まるから気合い入れとけよー」

そしてそんな声とともに、部員達がそれぞれ部室に戻ったり一旦グランド隅でドリンクを飲んだりする。
…さ、じゃああたしはそこのコンビニでお昼買ってこよ。
そう思った時だった。

「相沢くん!」
「!」

不意にその時健を呼ぶ女の子の声が聞こえて、そこに目を遣れば。
早速健が、女子達に囲まれていた。

「相沢くんお疲れ!このタオル使って!」
「おー、ありがと」
「相沢くん相沢くん!あたしまた唐揚げ作ったの。良かったら食べてよ」
「え、マジで?いや嬉しい。ありがと」

…その他に、冷え冷えのドリンクや差し入れのケーキ等。
早月くんと変わらないくらいのモテようだな。
しかも健、凄く嬉しそうだし。
ニコニコニコニコしちゃってるし。

…そんな光景を目の前で目にすると。
何だかほんの少し、胸が痛んだ。
だって…だって健は…

そして不意に蘇る小さい頃の記憶。
しばらくは忘れていた記憶が、目の前のそれで頭の中に映像として流れてくる。

『ねぇ健くん、何でいつも世奈ちゃんと遊んでるの?』
『ね、ね、健くん。次は私と一緒におママごとしよー。健くん旦那さん役ね』

『いいよ。じゃあ世奈ちゃん、また後でね』

『やだ!健くんは世奈のだよ!違うとこ行っちゃやだ!』
『世奈ちゃん、健くんは他のお友達と遊ぶんだって。ほら、先生とも遊ぼうよ。皆もいるよ』

『世奈ちゃん』
『…健くん』
『やっぱり世奈ちゃんも一緒に遊ぼ、』

「……」

その記憶は、まだ幼稚園に通っていた頃のこと。
その頃のあたしは健のことが大好きで、いつでも何をする時でも健にべったりだった。
…でも健は、その頃も既に女の子に人気があって、他の友達も多かったから。
子どもの頃の記憶って、何故か嫌な記憶が多かったりするんだよね。
…出来れば、思い出したくなかったな。
そう思っていると…

「世奈!」
「!」

グランドを出た直後、後ろから名前を呼ばれて、振り向けば。
そこには、両手いっぱいに差し入れを貰ってきたらしい健がいて。
健はあたしに追いつくと、言った。

「見て!こんなに差し入れ貰った!」
「…へぇ」
「クッキーとかあるから世奈も食う?あ、世奈が好きな唐揚げもあるよ」
「……」

せっかくだから分けて食お。
健はそう言うと、嬉しそうにニコニコと笑みを浮かべる。
…健は、いつもそう。
その気がないくせに、それなのに周りに優しいの。
だから皆どんどん集まって来ちゃう。

「…そっか。可愛い子も多かったもんね。彼女候補がいっぱいいるじゃん。良かったね」

あたしはそう言うと、「コンビニ行ってくるね」とその場を後にする。
でも、その背中を健にすぐに留められた。
何かさっきからちょっとオカシイ。

「ちょっと待って世奈」
「…」
「…お前何か怒ってない?」
「…、」

健はあたしにそう問いかけると、あたしの目の前に回り込む。
だけどそんなことはないあたしは、その問いかけに首を横に振った。

「別に怒ってないよ」

そう。怒ってはない。
怒って、は。

「…けど機嫌悪い時の顔してるよ」
「そんなことないってば。ほら、友達が部室で待ってるんじゃないの?」
「……まぁ、本当に何もないなら別にいいけど」

あたしの言葉に健はそう言うと、やがて部室へと戻っていく。
やだな。大好きなのは早月くんのはずなのに。
健が、あたしの初恋だからかな?

「…健は世奈のだよ」

チクチクと、胸が痛い。

「違うとこ行っちゃ…やだ」

だけどそんなこと、今更口に出して言えるはずもなく。
胸の奥深くにそれを閉じ込める。
子どもの頃は、嫌だ嫌だと言えたけど、成長するにつれてだんだん言えなくなって、気がつけばもうこんなに溝が出来ていた。

健が、あたしのことを好きだって言ってくれて。
抱きしめてくれて。
それに満足してる、あたしがいる…。








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