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彼氏の家に泊まりに行った結果がヤバすぎる件
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「世奈?…入るよ、」
「うん」
健にバスタオルを持ってきてほしいと伝えてから、数分後。
しばらくしてようやく健がバスタオルを持って脱衣場に入ってきた。
「ここ置いとくよ」
「ん、ありがとー」
「…」
そして健はバスタオルを腰くらいの高さの引き出しの上に置くと、お風呂場にいるあたしにそう声をかける。
さ、健が脱衣場から出て行ったら速攻でお風呂場から出よう。
…しかし、そう思っていると…
「……ねぇ世奈」
「うん?」
ふいに健が、脱衣場であたしに言った。
「これ何?」
「?」
何やら健は脱衣場で何かを見つけたらしく、ドア越しにあたしにそう言うけれど、そのドアが磨りガラスだからあたしが見えるはずもなくて。
そんな健に、あたしはのぼせそうになりながら言う。
「何って?何かあった?っていうか暑いんだけど早く出てってくんない?」
「……」
あたしがそう言うと、やがて健は無言で脱衣場を後にして行く。
?…何だったんだろう。
そう思いながら、あたしはようやく再び独りになった脱衣場に出ると、さっき健が見つけた“何か”を探してみる。
けど…
「……何?何もないじゃん」
いくら探してもそれらしきものは見つからず、あたしはやがて探すのを諦めるとバスタオルで体を拭いた。
…………
「お風呂ありがと」
「うん」
「ドライヤー借りるね」
「…うん」
しばらくして再びリビングに戻ると、健はソファーに項垂れながらテレビを見ていた。
あたしがそう言ってドライヤーを借りようとすると、その前に健が言う。
「世奈、ちょっと」
「?」
ふいに呼ばれて振り向けば、そいつに手招きをされる。
何?とドライヤー片手に健の隣に腰を下ろすと、健があたしにある物を見せながら言った。
「さっき脱衣場でコレ見つけたんだけど」
「…!」
「これ何?」
健がそう言ってあたしに見せてきたものは。
こないだのゴールデンウィークに皆で京都に旅行に行った時、思わず勢いで早月くんと二人で買ってしまった恋愛に効くお守りだった。
「え、えっとこれは…」
「……」
本当はあの時のあたしの願いとしては健と晴れて恋人同士になってこれを二人で買いたかったのに、それが出来なかったから。
普段はカップル向けのお守りだけど、それでも恋愛のお守りだから、とりあえずは恋に関係していたらそれなりに効くかなぁなんて思って。
一応、肌身離さず持ち歩いていたりする。
それに、デザインからしてお洒落で可愛くて気に入ってるし。
あたしは明らかに不満そうな顔をする健からそれをさりげなく取り戻すと、言った。
「あ、かわ…可愛いでしょ?京都で買ったの。恋愛に効くお守りなんだって」
「へぇ」
「えと…確か、恋愛にとにかく効くって有名で、えぇっと…あっ、どんな恋も幸せにしてくれる!みたいな?感じで」
「あそ。だから早月も持ってるわけだ?」
「!?」
あたしが必死に言葉を選んでそう言っていると。
不機嫌なままの健が、早月くんの名前を出してそう言う。
ってか、早月くんも?
いや確かに一緒に買ったわけだけど。
え、早月くんも持ち歩いてるの!?
あたしが健の言葉にそう思って、だけど何も言えないでいると、そのうちにまた健が言った。
「けどアイツが言うにはこのお守り、カップル向けのお守りらしいじゃん。確か肌身離さず持ち歩いてると別れないんだってな?」
「!…っ、」
「これ、京都行った時に早月とお揃いで買ったんだって?それでお互いに今も持ち歩いてんの?え、お前らって速攻で別れたんじゃなかったっけ?」
健はそう言うと、あたしから再びそのお守りを奪い取って。
どうなんだよ、と。
夕方のときの優しい目から、いつのまにか鋭い目つきに変わる。
そんな雰囲気の健に、あたしは少しビビってしまって、一瞬言葉を失ってしまったけれど…意を決して再び口を開くと、目の前の健に言った。
「っ…わ、別れたよ!だって、あたしが本当に好きなのは健だし」
「じゃあ何でこんなの持ち歩いてんの」
「…それは、」
「……え。考えたくなかったけど、もしかして世奈…早月からフラれたから、俺のところに来たとかじゃ…ないよな?」
「!」
健はあたしにそう問いかけると、凄く悲しそうな顔をしてあたしを見る。
その顔に、あたしまでも悲しくなる。
けど…違う。違うよ。
そんなことあるわけないじゃん。
どうしてそう思うの。
確かにこのお守りは、早月くんとお揃いで買ってしまったけど、今持ち歩いているのは健のためでしかないのに。
「…あ、」
だから、それは違うって否定しようとしたら。
健の肩に手を伸ばしたら。
それを健にすぐに振り払われた。
「!…っ」
その手にビックリして思わず手を引っ込めると、また前みたいに冷たい目をした健が言う。
「…じゃあいんじゃね?行けば?」
「…え」
「そんな無理して付き合ってくれなくてもいいし、俺としては。それに、どーせあんま続かないのもわかってるし」
「!」
「いいよ。結局早月がイチバンなんじゃね?俺は確かに世奈の幼なじみだけど、だからってすぐには別れないっていう保証もないわけじゃん。俺だって他の奴らと同じかもよ?」
「!!」
健はそう言うと、奪い取っていたお守りをあたしに向かって投げるように返す。
一方、そんなことを言われたあたしはすっごく泣きそうで。
どうして、一番わかっていてほしい人には、いつも上手く伝えられないんだろう。
健はきっと、あたしを早月くんのところに行きやすいようにしている。
だからわざと冷たくしてる。
あたしの気持ちを勘違いしているから。
……わかってるよ。あたしだって。
わかってるけど…
「っ…わかった」
「…」
「じゃあほんとに早月くんのとこ行くから」
「ん、」
「本当に行くからね!」
「…うん」
ああもう何でだろう。
何で健とはいつもこうなっちゃうの。
あたしは髪が濡れたまま、持ってきた鞄を手に取るとすぐに玄関に向かう。
…そんなあたしの背中を、健は追いかけて来ない。
何で…何でっ…。
“どーせあんま続かないのもわかってるし”
「~っ、」
あたしはさっきの健の言葉を思い出すと、やがて涙を流しながら健の家を後にした。
…わかってる。
あの冷たい言葉も、本当は健の優しさだってことくらい。
頭ではわかってるんだけど…。
あたしは健の家を出た後、思わず走ってマンションに向かう。
もう真っ暗でほとんど人がいない夜道。
その夜道を、泣きながら走っていると…
「!…わっ、と」
「っ、あっ、すみませっ…!?」
ふいに誰かの肩にぶつかってしまって、涙声でそう謝ったら。
「!…世奈ちゃんっ!?」
「!!」
なんと、ぶつかった相手は早月くんで。
目を丸くしてあたしを見つめる早月くんと、目が合った…。
「うん」
健にバスタオルを持ってきてほしいと伝えてから、数分後。
しばらくしてようやく健がバスタオルを持って脱衣場に入ってきた。
「ここ置いとくよ」
「ん、ありがとー」
「…」
そして健はバスタオルを腰くらいの高さの引き出しの上に置くと、お風呂場にいるあたしにそう声をかける。
さ、健が脱衣場から出て行ったら速攻でお風呂場から出よう。
…しかし、そう思っていると…
「……ねぇ世奈」
「うん?」
ふいに健が、脱衣場であたしに言った。
「これ何?」
「?」
何やら健は脱衣場で何かを見つけたらしく、ドア越しにあたしにそう言うけれど、そのドアが磨りガラスだからあたしが見えるはずもなくて。
そんな健に、あたしはのぼせそうになりながら言う。
「何って?何かあった?っていうか暑いんだけど早く出てってくんない?」
「……」
あたしがそう言うと、やがて健は無言で脱衣場を後にして行く。
?…何だったんだろう。
そう思いながら、あたしはようやく再び独りになった脱衣場に出ると、さっき健が見つけた“何か”を探してみる。
けど…
「……何?何もないじゃん」
いくら探してもそれらしきものは見つからず、あたしはやがて探すのを諦めるとバスタオルで体を拭いた。
…………
「お風呂ありがと」
「うん」
「ドライヤー借りるね」
「…うん」
しばらくして再びリビングに戻ると、健はソファーに項垂れながらテレビを見ていた。
あたしがそう言ってドライヤーを借りようとすると、その前に健が言う。
「世奈、ちょっと」
「?」
ふいに呼ばれて振り向けば、そいつに手招きをされる。
何?とドライヤー片手に健の隣に腰を下ろすと、健があたしにある物を見せながら言った。
「さっき脱衣場でコレ見つけたんだけど」
「…!」
「これ何?」
健がそう言ってあたしに見せてきたものは。
こないだのゴールデンウィークに皆で京都に旅行に行った時、思わず勢いで早月くんと二人で買ってしまった恋愛に効くお守りだった。
「え、えっとこれは…」
「……」
本当はあの時のあたしの願いとしては健と晴れて恋人同士になってこれを二人で買いたかったのに、それが出来なかったから。
普段はカップル向けのお守りだけど、それでも恋愛のお守りだから、とりあえずは恋に関係していたらそれなりに効くかなぁなんて思って。
一応、肌身離さず持ち歩いていたりする。
それに、デザインからしてお洒落で可愛くて気に入ってるし。
あたしは明らかに不満そうな顔をする健からそれをさりげなく取り戻すと、言った。
「あ、かわ…可愛いでしょ?京都で買ったの。恋愛に効くお守りなんだって」
「へぇ」
「えと…確か、恋愛にとにかく効くって有名で、えぇっと…あっ、どんな恋も幸せにしてくれる!みたいな?感じで」
「あそ。だから早月も持ってるわけだ?」
「!?」
あたしが必死に言葉を選んでそう言っていると。
不機嫌なままの健が、早月くんの名前を出してそう言う。
ってか、早月くんも?
いや確かに一緒に買ったわけだけど。
え、早月くんも持ち歩いてるの!?
あたしが健の言葉にそう思って、だけど何も言えないでいると、そのうちにまた健が言った。
「けどアイツが言うにはこのお守り、カップル向けのお守りらしいじゃん。確か肌身離さず持ち歩いてると別れないんだってな?」
「!…っ、」
「これ、京都行った時に早月とお揃いで買ったんだって?それでお互いに今も持ち歩いてんの?え、お前らって速攻で別れたんじゃなかったっけ?」
健はそう言うと、あたしから再びそのお守りを奪い取って。
どうなんだよ、と。
夕方のときの優しい目から、いつのまにか鋭い目つきに変わる。
そんな雰囲気の健に、あたしは少しビビってしまって、一瞬言葉を失ってしまったけれど…意を決して再び口を開くと、目の前の健に言った。
「っ…わ、別れたよ!だって、あたしが本当に好きなのは健だし」
「じゃあ何でこんなの持ち歩いてんの」
「…それは、」
「……え。考えたくなかったけど、もしかして世奈…早月からフラれたから、俺のところに来たとかじゃ…ないよな?」
「!」
健はあたしにそう問いかけると、凄く悲しそうな顔をしてあたしを見る。
その顔に、あたしまでも悲しくなる。
けど…違う。違うよ。
そんなことあるわけないじゃん。
どうしてそう思うの。
確かにこのお守りは、早月くんとお揃いで買ってしまったけど、今持ち歩いているのは健のためでしかないのに。
「…あ、」
だから、それは違うって否定しようとしたら。
健の肩に手を伸ばしたら。
それを健にすぐに振り払われた。
「!…っ」
その手にビックリして思わず手を引っ込めると、また前みたいに冷たい目をした健が言う。
「…じゃあいんじゃね?行けば?」
「…え」
「そんな無理して付き合ってくれなくてもいいし、俺としては。それに、どーせあんま続かないのもわかってるし」
「!」
「いいよ。結局早月がイチバンなんじゃね?俺は確かに世奈の幼なじみだけど、だからってすぐには別れないっていう保証もないわけじゃん。俺だって他の奴らと同じかもよ?」
「!!」
健はそう言うと、奪い取っていたお守りをあたしに向かって投げるように返す。
一方、そんなことを言われたあたしはすっごく泣きそうで。
どうして、一番わかっていてほしい人には、いつも上手く伝えられないんだろう。
健はきっと、あたしを早月くんのところに行きやすいようにしている。
だからわざと冷たくしてる。
あたしの気持ちを勘違いしているから。
……わかってるよ。あたしだって。
わかってるけど…
「っ…わかった」
「…」
「じゃあほんとに早月くんのとこ行くから」
「ん、」
「本当に行くからね!」
「…うん」
ああもう何でだろう。
何で健とはいつもこうなっちゃうの。
あたしは髪が濡れたまま、持ってきた鞄を手に取るとすぐに玄関に向かう。
…そんなあたしの背中を、健は追いかけて来ない。
何で…何でっ…。
“どーせあんま続かないのもわかってるし”
「~っ、」
あたしはさっきの健の言葉を思い出すと、やがて涙を流しながら健の家を後にした。
…わかってる。
あの冷たい言葉も、本当は健の優しさだってことくらい。
頭ではわかってるんだけど…。
あたしは健の家を出た後、思わず走ってマンションに向かう。
もう真っ暗でほとんど人がいない夜道。
その夜道を、泣きながら走っていると…
「!…わっ、と」
「っ、あっ、すみませっ…!?」
ふいに誰かの肩にぶつかってしまって、涙声でそう謝ったら。
「!…世奈ちゃんっ!?」
「!!」
なんと、ぶつかった相手は早月くんで。
目を丸くしてあたしを見つめる早月くんと、目が合った…。
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