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第3章「早速だけど家出がしたい」

幼馴染との恋。

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翌朝。
朝早くに起きて公ちゃんのお弁当を作っていると、そこへ水野くんが起きてきた。

「…はよ」
「あ、おはよう」

水野くんは眠たそうにあたしに目を遣ると、首を傾げて問いかけてくる。

「…何してんの?」

そう言ってあたしがいるキッチンまで来ると、ふいに手元を覗き込む。
そんな水野くんに、あたしは申し訳なく言った。

「ごめんね、キッチン勝手に使っちゃって」
「いや、それは別に構わないけど…もしかして弁当作ってる?」
「そう!あたし毎日公ちゃんにお弁当作って渡してるの!美味しそうでしょ?」
「……別に」

水野くんはあたしの言葉にそう言うと、あたしから離れてペットのうさぎに餌をあげに行く。
でも、そういえば水野くんって普段はお昼何食べてるんだろう?
ふいにそう疑問に思って聞こうとしたけれど、何だかうさぎと楽しそうに戯れてるから、なんとなく聞くのをやめた。
…昨日の夜はコンビニ弁当だったけど。まさか、毎日それじゃないよね。
………まぁ、別にどうでもいいけどさ。

…………

それからしばらくして、お弁当が完成した。
今日も大成功のそれにあたしは満足げな笑みを浮かべると、ようやく学校に行く支度を始める。
部屋で制服に着替え、その後リビングでお弁当箱を鞄に入れていたら、水野くんがうさぎを抱っこしながら言った。

「…何で、瀬川さんはその幼なじみのこと好きでいられるの?」

そう問いかけて、首を傾げる。

「何でって?」

あたしがそう聞くと、水野くんが言葉を続けて言った。

「いや…毎日そうやってアピールしても振り向いてもらえないじゃん。
なのに何で、そんなに一途でいられるわけ?」
「……」

水野くんはそう問いかけると、あたしの目をじっと見つめる。
その問いかけに、あたしの中で確かな傷がつく。
いや…あたしだって、いつも平気なわけじゃない。
普段は明るく振る舞ってるけど、これでも公ちゃんに突き放される度傷ついてるんだよ。
だけどそれを隠すと、言った。

「……今はダメでも、いつかは振り向いてくれるもん」
「!」

そう。一方的でしかないけど、大好きだし諦めたくないから。
だけどあたしがそう言ってリビングを出ようとしたら、水野くんは抱っこしていたうさぎをケージに戻して、あたしをその場に引き留めた。

「待って、」
「?」

そう言われ、肩をぐっと掴まれる。
その行動に、何?って振り向いたら水野くんが言った。

「本気でそう思ってんの?」
「え、」
「やめとけよ。無理だよ、幼なじみと恋愛なんて」
「いや、それはっ…」
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