おとぎ話の結末

咲房

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運命のつがい

私だけの十字架

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 「……ぁぁ、……ぁぁ、ぁああ、ああああ!!あああー!!!」

 膝から力が抜け、その場に頽れた。

 すまない、
 すまない、おれの つがい
 縛ってごめん、傷だらけにしてごめん。犯してごめん、逃げてごめん、愛そうとしてくれたのに優しくしないでごめん。

 殺してしまってごめん―――

「藤代さん!」

 足元に縋りついた。

「藤代さん、お願いです、どうか、どうか返してください。大事にします。俺の命よりも何よりも。もう傷つけません。お願いします、お願いします」
「無理だ。もうお前の番ではない。この晶馬は、私の匂いにしか反応しない私の番だ」
「そんな……じゃあ、じゃあせめて謝らせてくれ。酷いことをした。苦しい思いもさせた、傷も沢山付けた。俺の、ホントは俺の大事な番だったんだ、せめて」
「それも許可しない。晶馬はお前が彼女と幸せになると思っている。本当にこの子の為を思うなら、この子に自分だけが幸せになるという罪悪感を持たせるな」
「そんな……俺は懺悔 ざんげすら出来ないのか……」

 晶馬、晶馬。
 何度拒絶しても拒みきれなかった。分かっていた、ホントは好きになりかけていたんだ。   
 だが運命に反抗したくてお前を傷付けてきた俺は、優しくするきっかけを見失った。さんざん酷いことをしてきたというのに、運命で繋がれているから俺から離れないと安心していた。お前を失うことなんて、全く考えていなかった。

 晶馬。

 涙があとからあとから溢れ出て頬を伝う。それは晶馬への思いと後悔の表れだ。頬の涙はそのうち止まっても、俺の心はこの先もずっと涙を流し続けるだろう。

 藤代の腕にいる晶馬は俺の晶馬じゃない。匂いが違う、俺を見る瞳の熱が違う、表情が違う。俺の番はもういないのだ。
 晶馬、お前を失った俺は、これから独りで生きて行くのか?
 死んでしまった俺の番が、俺のいない場所で生きてゆく姿を見ながら?
 俺じゃない相手に抱かれ、俺じゃない相手に寄り添い、幸せそうに笑う顔を見ながら?


 それも、いいかもしれない。

 ふと、そう思った。
 もうあいつの苦しむ姿を見なくてすむ。
 俺のじゃなくても、あいつの幸せな姿を見れるなら。あいつが笑ってるなら、それだけで。
 それだけで、いいじゃないか。

 ……そうか。俺はその姿が見たかったのか。
 俺の目の前で笑う晶馬が見たかったのだ。
 

 だからバイバイだ、晶馬。
 俺の番。愛したかったよ、晶馬。

 バイバイ、晶馬──


 このさき俺は墓守になろう。墓のひつぎにはむくろを持たない俺の番が眠っている。
 それは俺の十字架。
 俺だけが背負う罪。

 俺は、からの柩と共に生きていく。
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