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恋人の距離
魔法使い再び
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「晶馬くん、まだ自分の事、人より劣ってると思ってる?」
「それは……はい」
「あらら。じゃあ僕のことはどう思ってるの?」
「先輩?凄い人です。綺麗で格好良くて何でもできて、αの中でも最上位種の稀少種で、本来なら全く接点がなかった、手の届かない雲の上の人」
「ふふ、そうなんだ。だけどね、その凄い人が君が欲しくて堪らなくて、運命から無理やり引き剥したんだよ。君にはそれだけの魅力があるんだ」
「僕の魅力?僕に魅力なんて……。先輩が僕のどこを気に入ってくれたのかも分からないのに」
「随分自信がないんだね。君に掛かってる呪いはそうとう頑丈みたいだ。分かった。じゃあ魔法使いがその呪いを解いてあげるよ」
魔法使い?先輩また魔法を使ってくれるの?
「何から話そうか。じゃあ、まず君を好きになった切っ掛けからいこうかな」
そう言って先輩は僕との出会いまで遡ってくれた。
「初めて君を見た時の第一印象は、あまりΩらしくない子だな、だった。匂いは薄いし、顔もαの気を引く派手さがない。でも僕はそれを純朴だと思ったよ。好印象だった」
純朴……やっぱり地味なんだ……
「え、えーっとそれでね、」
そこから興味を持って僕を見ていたから、Ωとβに友達がいてクラスのαとも仲が良い事、集団が苦手な事、僕が先輩のゼミと親交のある酒井ゼミの学生であることが分かったらしい。
「晶馬くんは自分の魅力に自信がなくても、自分がΩだというコンプレックスじゃないよね。だからβやαとも気兼ねなく仲良く出来る。そんな君なら、僕を "αの上位種" としてではなく、別のカテゴリーで認識してくれるかなって思った。だから "先輩" として近づいてみたんだ。初めて喋った時のこと憶えてる?」
「はい。先輩のゼミと合同の親睦会でしたね」
「あの時は二つのゼミが合同だったし、普段参加しない僕が行くって言ったから、更に凄い人数になってたね」
「えっ、そうだったんですか」
「ふふ。やっぱり気付いてなかったね。その大混乱の親睦会で、きみは自分の食事もせず皆の世話ばかり焼いていた。優しい子だなって思いながら見てたけど、食べ損ねるんじゃないかとハラハラした。だからそっと近づいてみた。僕に気付いた時の君のびっくり眼は可愛かったな」
うっ、どんくさくて食いっぱぐれかけてたのを見られていたなんて恥ずかしい。そういえばあの時、先輩はこれ食べなさいって鍋の〆の麺を取り分けてくれたんだった。
「あれから先輩って呼んでもらってるけど、晶馬君は僕と挨拶を交わすくらいに仲良くなっても、何も変わらなかった。周りに自慢したりも僕の名声を利用したりもしなかった。
きみにとって僕は稀少種じゃなくて先輩だったんだ。君と話す時はいつも稀少種の藤代李玖じゃなくて、先輩の藤代李玖だった。こんな事、初めてだった。分かるかな、稀少種という特別な存在じゃない、ただの先輩、藤代李玖の喜びが。僕は君を知るごとにどんどん惹かれていった。優しくて素直で僕を先輩として慕ってくれる君と、もっともっと仲良くなりたかった。だから会うたびにお菓子をあげてしまったんだ。食が細そうな君が心配なのもあるけど、家族にエサを運んでくるオスの行動と一緒だよ。僕があげたものを君が口にする。野生の本能が、あたかも君が僕の庇護下に入ったような気にさせた。君が僕の大事な家族になったみたいだった。だからぼくは君を見てると食べ物をあげたくて仕方がなくなるんだ」
会うたびにお菓子をくれた先輩。そんな風に思ってくれてたなんて。
「僕は君が思ってるよりもずっと前から君の事を見てたよ。君との関係も大事にゆっくりと進めていきたかった。晶馬くんともっと仲良くなったら告白して恋人になり、ゆくゆくは僕の大切な家族になって欲しいと夢見てた」
先輩は当時を思い出すみたいに目を閉じて微笑んだ。すると突然眉間に深い皺が寄った。
「なのに、あの日突然運命に奪われた」
「!」
僕の心臓がドクっと大きな音をたてた。
先輩から冷たいオーラが立ち昇り、氷山のような大きく恐ろしいものに直接触れている自分を想像した。畏怖の念で体が硬直する。怖い。今すぐここから逃げ出したい。知らず知らずのうちに手足が震えていた。
この感覚は知ってる。あの時と同じだ……
「それは……はい」
「あらら。じゃあ僕のことはどう思ってるの?」
「先輩?凄い人です。綺麗で格好良くて何でもできて、αの中でも最上位種の稀少種で、本来なら全く接点がなかった、手の届かない雲の上の人」
「ふふ、そうなんだ。だけどね、その凄い人が君が欲しくて堪らなくて、運命から無理やり引き剥したんだよ。君にはそれだけの魅力があるんだ」
「僕の魅力?僕に魅力なんて……。先輩が僕のどこを気に入ってくれたのかも分からないのに」
「随分自信がないんだね。君に掛かってる呪いはそうとう頑丈みたいだ。分かった。じゃあ魔法使いがその呪いを解いてあげるよ」
魔法使い?先輩また魔法を使ってくれるの?
「何から話そうか。じゃあ、まず君を好きになった切っ掛けからいこうかな」
そう言って先輩は僕との出会いまで遡ってくれた。
「初めて君を見た時の第一印象は、あまりΩらしくない子だな、だった。匂いは薄いし、顔もαの気を引く派手さがない。でも僕はそれを純朴だと思ったよ。好印象だった」
純朴……やっぱり地味なんだ……
「え、えーっとそれでね、」
そこから興味を持って僕を見ていたから、Ωとβに友達がいてクラスのαとも仲が良い事、集団が苦手な事、僕が先輩のゼミと親交のある酒井ゼミの学生であることが分かったらしい。
「晶馬くんは自分の魅力に自信がなくても、自分がΩだというコンプレックスじゃないよね。だからβやαとも気兼ねなく仲良く出来る。そんな君なら、僕を "αの上位種" としてではなく、別のカテゴリーで認識してくれるかなって思った。だから "先輩" として近づいてみたんだ。初めて喋った時のこと憶えてる?」
「はい。先輩のゼミと合同の親睦会でしたね」
「あの時は二つのゼミが合同だったし、普段参加しない僕が行くって言ったから、更に凄い人数になってたね」
「えっ、そうだったんですか」
「ふふ。やっぱり気付いてなかったね。その大混乱の親睦会で、きみは自分の食事もせず皆の世話ばかり焼いていた。優しい子だなって思いながら見てたけど、食べ損ねるんじゃないかとハラハラした。だからそっと近づいてみた。僕に気付いた時の君のびっくり眼は可愛かったな」
うっ、どんくさくて食いっぱぐれかけてたのを見られていたなんて恥ずかしい。そういえばあの時、先輩はこれ食べなさいって鍋の〆の麺を取り分けてくれたんだった。
「あれから先輩って呼んでもらってるけど、晶馬君は僕と挨拶を交わすくらいに仲良くなっても、何も変わらなかった。周りに自慢したりも僕の名声を利用したりもしなかった。
きみにとって僕は稀少種じゃなくて先輩だったんだ。君と話す時はいつも稀少種の藤代李玖じゃなくて、先輩の藤代李玖だった。こんな事、初めてだった。分かるかな、稀少種という特別な存在じゃない、ただの先輩、藤代李玖の喜びが。僕は君を知るごとにどんどん惹かれていった。優しくて素直で僕を先輩として慕ってくれる君と、もっともっと仲良くなりたかった。だから会うたびにお菓子をあげてしまったんだ。食が細そうな君が心配なのもあるけど、家族にエサを運んでくるオスの行動と一緒だよ。僕があげたものを君が口にする。野生の本能が、あたかも君が僕の庇護下に入ったような気にさせた。君が僕の大事な家族になったみたいだった。だからぼくは君を見てると食べ物をあげたくて仕方がなくなるんだ」
会うたびにお菓子をくれた先輩。そんな風に思ってくれてたなんて。
「僕は君が思ってるよりもずっと前から君の事を見てたよ。君との関係も大事にゆっくりと進めていきたかった。晶馬くんともっと仲良くなったら告白して恋人になり、ゆくゆくは僕の大切な家族になって欲しいと夢見てた」
先輩は当時を思い出すみたいに目を閉じて微笑んだ。すると突然眉間に深い皺が寄った。
「なのに、あの日突然運命に奪われた」
「!」
僕の心臓がドクっと大きな音をたてた。
先輩から冷たいオーラが立ち昇り、氷山のような大きく恐ろしいものに直接触れている自分を想像した。畏怖の念で体が硬直する。怖い。今すぐここから逃げ出したい。知らず知らずのうちに手足が震えていた。
この感覚は知ってる。あの時と同じだ……
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