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2025年以降
8月1日
土日に出勤した振替休日を取るようにと言われ、予定もなく休みを取ったせいでまたやってしまった私……
明日は休みになったからと、前日の夜、短大の時の友達を無理矢理誘って飲みに行った。久し振りに外で飲んですっかりテンションが上がってしまった私だったが、明日も仕事がある友達は終電に合わせて帰ってしまった。
仕方なく私も電車に乗り、自宅最寄り駅に着いたのは午前1時前だった。
そのまま真っ直ぐ帰れば良かったのだが、酔っていたせいなのか? 何かに導かれてなのかは不明だが、どういうわけか自宅のある西口ではなく、反対の東口を出てしまい……暫く歩いて気がついたものの、終電を過ぎた駅の構内を通り抜けることができず、仕方なく外からくぐるりと回って線路を渡って帰る羽目になった。
その途中、小さなBARを見つけた。
いつも用がないこの東口にこんなお店もあるんだと、入口を見てみると2時まで営業しているようだった。
どうせ帰って寝るだけだし、と中に入ると、お客は誰もいない。
「いらっしゃいませ」
カウンター越しに40代半ばくらい(実際は55歳だった)のこの店のマスターと思われる男性が立っていた。
「一人なんですけど、まだ大丈夫ですか?」
なぜだか分からなかった。
ただ、このマスターの柔和でありながらどこか強さを感じる眼差しと、低く耳心地の良い声に胸がドキッとして、2時まで開いていることを知りながらついお利口さんに訊ねていた。
「もちろんですよ。初めてのかたですね。他のお客様もいらっしゃっらないのでお好きなところへ」
私は6席あるカウンターの真ん中に座り、メニューを手にしたところでマスターが声を掛けてくれた。
「今日は飲んでらっしゃいますか?」
「はい、友達と少し。BARはあまり来たことがなくて、たまたま通りかかって」
「じゃあ、一杯だけ私のチョイスでご馳走させていただいて良いですか?」
「えっ? ご馳走って……ちゃんとお支払いします、私」
「いえ、初めて見えたお客様には皆さんにそうさせていただいてますので。宜しいですか?」
「ありがとうございます。お願いします」
マスターは嬉しそうに笑い、カクテルを作り始めた。
カウンターが6席と、後ろに二人掛けの席が二つしかない小さな店だった。
壁には洋楽のレコードジャケットが1980年から1995年までの年代別に飾られていた。
「お待たせしました」
マスターが作ってくれたのは桃のカクテルだった。淡いピンクの色が綺麗で甘く飲みやすいカクテルだった。
「ここはいつから始められたんですか?」
「実は今日でちょうど半年です。今年の2月1日にOPENしたばかりで」
「そうなんですね! おめでとうございます」
「ありがとうございます。だんだんお客様にも知っていただけるようになって、ありがたいことです」
そう言ってマスターが壁の掛け時計に目を向けた。時刻は1時30分になろうとしていた。
「ごめんなさい、私、ギリギリに来ちゃったもんだから……あと一杯だけいただいたら帰りますね」
私は気を効かせたつもりでそう言ったのですが、途端にマスターの顔が悲しい表情になった。
「いえ、そうじゃなく……この一杯を是非、ここにお越しいただいた証にしっかり味わっていただきたくて」
そう言ってじっとこちらを見ているマスターの目に吸い込まれてしまいそうな感覚になっていました。
「ありがとうございます。じゃあ、しっかりいただきます」
私はこれを飲み干したら終わってしまうこの時間が惜しくて、ゆっくりゆっくりグラスに口をあてていた。
続
明日は休みになったからと、前日の夜、短大の時の友達を無理矢理誘って飲みに行った。久し振りに外で飲んですっかりテンションが上がってしまった私だったが、明日も仕事がある友達は終電に合わせて帰ってしまった。
仕方なく私も電車に乗り、自宅最寄り駅に着いたのは午前1時前だった。
そのまま真っ直ぐ帰れば良かったのだが、酔っていたせいなのか? 何かに導かれてなのかは不明だが、どういうわけか自宅のある西口ではなく、反対の東口を出てしまい……暫く歩いて気がついたものの、終電を過ぎた駅の構内を通り抜けることができず、仕方なく外からくぐるりと回って線路を渡って帰る羽目になった。
その途中、小さなBARを見つけた。
いつも用がないこの東口にこんなお店もあるんだと、入口を見てみると2時まで営業しているようだった。
どうせ帰って寝るだけだし、と中に入ると、お客は誰もいない。
「いらっしゃいませ」
カウンター越しに40代半ばくらい(実際は55歳だった)のこの店のマスターと思われる男性が立っていた。
「一人なんですけど、まだ大丈夫ですか?」
なぜだか分からなかった。
ただ、このマスターの柔和でありながらどこか強さを感じる眼差しと、低く耳心地の良い声に胸がドキッとして、2時まで開いていることを知りながらついお利口さんに訊ねていた。
「もちろんですよ。初めてのかたですね。他のお客様もいらっしゃっらないのでお好きなところへ」
私は6席あるカウンターの真ん中に座り、メニューを手にしたところでマスターが声を掛けてくれた。
「今日は飲んでらっしゃいますか?」
「はい、友達と少し。BARはあまり来たことがなくて、たまたま通りかかって」
「じゃあ、一杯だけ私のチョイスでご馳走させていただいて良いですか?」
「えっ? ご馳走って……ちゃんとお支払いします、私」
「いえ、初めて見えたお客様には皆さんにそうさせていただいてますので。宜しいですか?」
「ありがとうございます。お願いします」
マスターは嬉しそうに笑い、カクテルを作り始めた。
カウンターが6席と、後ろに二人掛けの席が二つしかない小さな店だった。
壁には洋楽のレコードジャケットが1980年から1995年までの年代別に飾られていた。
「お待たせしました」
マスターが作ってくれたのは桃のカクテルだった。淡いピンクの色が綺麗で甘く飲みやすいカクテルだった。
「ここはいつから始められたんですか?」
「実は今日でちょうど半年です。今年の2月1日にOPENしたばかりで」
「そうなんですね! おめでとうございます」
「ありがとうございます。だんだんお客様にも知っていただけるようになって、ありがたいことです」
そう言ってマスターが壁の掛け時計に目を向けた。時刻は1時30分になろうとしていた。
「ごめんなさい、私、ギリギリに来ちゃったもんだから……あと一杯だけいただいたら帰りますね」
私は気を効かせたつもりでそう言ったのですが、途端にマスターの顔が悲しい表情になった。
「いえ、そうじゃなく……この一杯を是非、ここにお越しいただいた証にしっかり味わっていただきたくて」
そう言ってじっとこちらを見ているマスターの目に吸い込まれてしまいそうな感覚になっていました。
「ありがとうございます。じゃあ、しっかりいただきます」
私はこれを飲み干したら終わってしまうこの時間が惜しくて、ゆっくりゆっくりグラスに口をあてていた。
続
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