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上司とその息子
上司と2
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「今日は19時まで。そこまで頑張って明日は14時には帰れるようにしよう!」
時刻は17時15分でした。朝の状態からするとかなり整ってきた感じはしますが、月曜日から通常業務を始めることを考えるとまだまだって感じです。
昼食の時、前職のことや、野々垣課長がこの会社に入社したばかりの頃のこと。プライベートでは奥様との出会いや、24歳で社会人になったばかりのひとり息子さんのこと等。色々な話を聞かせてくれたせいか身近に感じてしまい、「頑張れませんが、頑張りまーす!」とおどけてみる私。
そして19時ちょうどになり、一旦全員が集まって明日の予定の確認をし、今日は解散となりました。
「また明日もお願いね。ご苦労様」
野々垣課長にそう言われ、どこか名残惜しい気持ちを抱きながら私はオフィスを後にして駅に向かいました。
(あっ! スマホ忘れた!)
駅を目の前にしてスマホが無いことに気付き、記憶を辿る私。
(あそこだ!)
給湯室の荷物を整理していた時、電子レンジの上にスマホを置いたことを思い出しました。
もしかしたらもう誰もいなくて入れないかも……そう思いながら来た道を逆戻りすると、オフィスの真ん前で野々垣課長が立っていました。
「あっ、野々垣課長。すいません、まだ中に入れますか?」
すると野々垣課長の手に私のスマホが。
「これ、河合さんのかな? 誰のかは分からなかったけど、きっと忘れたことに気付いて戻ってくるかもと待ってたんだ」
「すいません、ありがとうございます! 野々垣課長はもう帰られるんですか?」
「あ、う、うん……帰る、かな」
急に表情が曇ったような、そんな気がしました。
「なんかすいません……」
「いや、河合さんは何も。今日は家内は実家に帰ってて、息子も友達と旅行に出てるみたいだから、ちょっと羽を伸ばそうかと思って」
「なんだ、そうだったんですね。変なこと聞いちゃってすいません。せっかくですから、いっぱい羽を伸ばしてくださいね!」
私はニコリと笑ってお辞儀をし、再び駅に向かおうとすると、
「あ、あの、河合さんは……今から」
足を止め、くるりと振り返ると、もじもじとした野々垣課長が私を見ていました。
「はい。私も羽を伸ばそうかと思ってます笑」
そして私たちは並んで駅とは違う方向に歩き出していました。
時刻は17時15分でした。朝の状態からするとかなり整ってきた感じはしますが、月曜日から通常業務を始めることを考えるとまだまだって感じです。
昼食の時、前職のことや、野々垣課長がこの会社に入社したばかりの頃のこと。プライベートでは奥様との出会いや、24歳で社会人になったばかりのひとり息子さんのこと等。色々な話を聞かせてくれたせいか身近に感じてしまい、「頑張れませんが、頑張りまーす!」とおどけてみる私。
そして19時ちょうどになり、一旦全員が集まって明日の予定の確認をし、今日は解散となりました。
「また明日もお願いね。ご苦労様」
野々垣課長にそう言われ、どこか名残惜しい気持ちを抱きながら私はオフィスを後にして駅に向かいました。
(あっ! スマホ忘れた!)
駅を目の前にしてスマホが無いことに気付き、記憶を辿る私。
(あそこだ!)
給湯室の荷物を整理していた時、電子レンジの上にスマホを置いたことを思い出しました。
もしかしたらもう誰もいなくて入れないかも……そう思いながら来た道を逆戻りすると、オフィスの真ん前で野々垣課長が立っていました。
「あっ、野々垣課長。すいません、まだ中に入れますか?」
すると野々垣課長の手に私のスマホが。
「これ、河合さんのかな? 誰のかは分からなかったけど、きっと忘れたことに気付いて戻ってくるかもと待ってたんだ」
「すいません、ありがとうございます! 野々垣課長はもう帰られるんですか?」
「あ、う、うん……帰る、かな」
急に表情が曇ったような、そんな気がしました。
「なんかすいません……」
「いや、河合さんは何も。今日は家内は実家に帰ってて、息子も友達と旅行に出てるみたいだから、ちょっと羽を伸ばそうかと思って」
「なんだ、そうだったんですね。変なこと聞いちゃってすいません。せっかくですから、いっぱい羽を伸ばしてくださいね!」
私はニコリと笑ってお辞儀をし、再び駅に向かおうとすると、
「あ、あの、河合さんは……今から」
足を止め、くるりと振り返ると、もじもじとした野々垣課長が私を見ていました。
「はい。私も羽を伸ばそうかと思ってます笑」
そして私たちは並んで駅とは違う方向に歩き出していました。
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