rosey-rosey

沙華やや子

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rosey-rosey ♡第3話 イケナイことであったとしても♡

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 グッ……! たくましい右腕で梨々の細い腰を抱き、運転席側へ引き寄せる水面。
「梨々ちゃん」
 名前を呼ばれながら髪の毛を撫でられる梨々。
 そしてくちづけを……さ・れ・た。

 ガマンできない! 梨々は貪るように水面の唇を求めてしまう。
 10回、20回、長い時間ふたりは唾液の交換をした。
 蝶が甘いお花の蜜を吸い上げるかのように……。水面と梨々が蝶になり、花になりした。何度も、何度も。

 キスだけでカンじてしまい、梨々は思わず切ない声を上げてしまった。
「アァン……」
 水面は幸福感に酔いしれているかのようだ。
 とても穏やかに「ああ、ステキだよ、梨々ちゃん……梨々ちゃん」と繰り返す。

 梨々はすっかりパンティを湿らせてしまった。
(クチュッッて音を聴かれたらどうしよう)

 しばらくし、そっと顔を離しこちらを見つめる水面。梨々はその時「スキ」と言いたかった。でも真希がちらつき黙ってしまった。

「オレ……こんなことしてしまって、御免なさい」と水面が恥ずかしそうに言った。
(あ……)
「いえ、嬉しいです」
「え?」
 勇気を出す梨々。
「あたし……ずっと水面さんを求めてたんです。スキ、なの」

 すると水面が「オレもなんだ、実は」
 ! 梨々は幸せ過ぎて気絶しちゃいそうだ! でも、真希が居るのに、自分は人妻なのに……と葛藤する。

 その夜、夫は帰ってこなかった。胸を撫で下ろす梨々。

「竜郁、遅くなってごめんね! パパはいつ出掛けたの?」
「うん。たぶん、お昼頃だったと思うよ。ママ、お疲れさま。俺、チャーハン作って食べたからだいじょうぶだよ」

 梨々は離婚もしていない身で水面とデートし遅くなったことを、息子に申し訳なく思った。
「ありがとうね」と梨々は心を込めて竜郁に言った。

 梨々は夜のうちにHAMAMIの店長に電話をし「急用ができたので数日間休ませてください」と伝えた。店長からOKが出た。

 翌朝さっそく役所へ出向いた。受付に訊くと男女共同参画課という所へ行くように言われた。
 梨々は事情を詳しく相談員の山中やまなかという女性に伝えた。

「今すぐシェルターを紹介します。息子さんは今お父さんとご自宅に?」  
「え、ええ。それが、夫は昨日帰って来なかったので、今いるかどうか分かりません」
「ご不安なことでしょう、私達職員が付き添います。沢田さわだという男性職員も同行します。お荷物をまとめに行きましょう」
「え! そ、そんな突然……」
 水面からも「すぐにシェルターへ逃げるんだ」と言われたけど(仕事もあるし……それに竜郁、大丈夫かな……)

「すみません、そのシェルターの場所ってどこですか?」
 聴くと、自宅よりもHAMAMIに近いことが分かった。自転車でHAMAMIまで通っていると言っても梨々の場合、ハンパない距離を走っているのだ、実は。実は梨々、ドジで仕事はどちらかというとできないが、体力はあるのだった。

「わかりました」
(シェルターのこと、竜郁にはあたしからきちんと説明しよう。竜郁を守りたいんだ)

 職員と帰ると夫が帰宅していた。
 他人が居ようとも乱暴な態度は変わらない。

「おい、てめぇ、何処ほっつき歩いてたんだよ?! あ? 仕事休んでまた男とヤリまくってたのか?!」
「辞めて下さい!」梨々が言う前に職員の沢田が口をひらいた。
「だーれだよ? てめぇはよ!」
「男女共同参画課の沢田です。あなたのそばに奥様そしてお子さまを居させておく訳には行きません」
「ハ~?! 何でだよ!?」
「敏夫! あなた、どれだけあたしに暴力振るってきた? あなたを警察に突き出すことだってできるのよ?」
「ほ~、えらい強くなったな! 梨々。チッ、勝手にしろ!」
 捕まりたくはないのだろう。敏夫はブツブツ言いながら自室に閉じこもった。

 その間中竜郁は自分の部屋に居た。もちろん事情は把握したはずだ。山中さんが竜郁の部屋のノックをする。

「はい」ドアを開ける竜郁。
「状況は……お分かりですか?」
「はい」呑み込みの早い竜郁はすぐに返事をした。

 梨々は母親として、話したい。
「竜郁、これまでパパのDVのことをほったらかして御免なさい。ママは勇気を出して竜郁を守りたいの。一緒に来てもらえますか?」

 竜郁は、高校3年生の竜郁は「ワ――――ッ!」と大泣きし「ママと行きたいよ」と言った。
 こらえてきたものが露わになったのだ。無理もない。ここまで、母とともに耐え抜いた、余りにも、酷なほどに強い子だ。

 そして荷物をまとめ母子は、職員とともにシェルターへ避難した。
 いつまでそこに居るのか分からない。

 でも(これ以上、自分もだけど、竜郁を苦しめる訳に行かない!)と梨々は気をしっかりと持った。

 職員からは役所で聞かされていた。
「なにかの時には『接近禁止命令』の発令も可能だし、離婚話になった時、夫が酷いことをするならば『退去命令』も発令できるから、自分達に相談してほしい」そう言ってくれた。

 後部座席に竜郁と座ったとたんに我慢していた涙が溢れ出る梨々。
(なによりも、なによりもこの子を傷つけてしまったことが辛い!)
 梨々は竜郁に寄り添った。
「ママ、俺は大丈夫だよ」
 泣き止んだ竜郁が母を真っ直ぐ見る。健気な息子だ。

 シェルターには同じような仲間がいた。キッチンやトイレ・お風呂は共同だが、母子に1つの部屋があてがわれた。
 竜郁はもう高校3年生。息苦しいだろうな、と梨々は息子を不憫に感じた。
 ただ、来月から竜郁は大学の寮で暮らすことになっている。自分はどうとでもなるから、と梨々は思う。

 思ったよりもHAMAMIを長く休ませてもらった。

 1週間後仕事を再開した。

 水面は、自分の携帯番号を教えてくれていたが、バタバタだった梨々はなんにも連絡できずにいた。


 あの……車内のくちづけ以来初顔合わせのふたり。恥ずかしい。梨々はキュンとする胸を押さえた。

「だいじょうぶ?」料理を取りに行った短い時間に、声を掛けてくれた水面。
「はい。ありがと、ごめんね」
 水面は黙ったまま首を横に振り、料理を持って行きなというジェスチャーをした。

 男らしくて、寡黙で本当にカッコいい。
(あ、あたし、ドキドキし過ぎてまた失敗しないようにしなくっちゃ!)

 梨々と水面は店内でこっそりと、ことあるごとに見つめ合う。
(嬉しくて、なんだかアソコまでジュン! ってしちゃう……。あたしったら)

 あれからというもの、真希はレストランHAMAMIに食事に全然来ない。
(水面さんとどうなったんだろう…?「距離を置こうと思ってる」とは言ってたけど)


 シェルターの門限は22時だ。竜郁は中学生の男の子とすぐに意気投合し、ゲームをするようになった。

 梨々は……誘惑したくなった。もちろん、水面を、だ。
 しかしその願いは砕かれた。どういうことかというと『水面のほうから梨々を誘ってきた』のだ。キャ!

 ドリンクの所でアイスティーを飲んでいた梨々。今日は忙しくて、2月と言えども暖房で暑い。汗かいちゃった。
 額の汗をぬぐいつついゴクリと流し込んだところ「梨々ちゃん、ふたりきりで逢いたいよ」サッと隙を見て囁いてきた水面。

「はい……」
(いやん、あたしまた、パンティの中が音を立てそう。仕事中なのに)

「ロージーで」小さめの声で水面。
「ええ」
(なんだか下半身がおしっこを我慢している少女のようにモジモジしちゃう……。いやね。本当に恥ずかしいわ、でもイイ感じ)

 今日の上がりは水面も梨々も16時だ。水面は梨々に目配せをし、先に退店した。
「ウフ!」と小さく笑い、梨々はロッカールームへいそいそと行き着替え、口紅を塗り直しロージーへ向かった。

 素敵なドアを開けるとこの間の奥の席に水面が座っていて手を上げた。
 笑顔で席へ行く。
 すると水面は立ち上がり椅子を引いてくれた。
(紳士だわ! レディーにされてあたし、幸せ!)

「逢えてうれしいよ、梨々ちゃん」
「あたしも」

 視線を落として黙っていると、テーブルの下で水面が自分の足で梨々の足に絡ませるように触れてきた。すごくエッチだ。
(やらしい! やらしくて、イイわ……。よがり声が出ちゃいそう)

 マスターが注文したモカを持ってきた。そっと水面は絡めた足を解いた。

「梨々ちゃん、役所の人に相談できたかい?」
「はい」
 コクリと頷き梨々は経緯を説明した。

「そっか~」ホッとしている水面。
「ひと安心だよ」

 梨々は気になっていることを思い切って話してみた。

「あの……ね、水面さん」
「梨々ちゃん、『さん』付けなくて良いよ」と笑った水面。
「あ、じゃああたしのことも……呼び捨てしてください」梨々は乙女のような微笑を投げかけ言った。
「うん、わかった、梨々。ごめんね、お話の途中で口挟んだね。どうぞ!」

「あ、はい。えと、真希さんとはどうなっているの?」
 水面は頷いた。
「別れたよ」

(え!? やったー! て、あの人がそんな簡単に諦めるかしら?)

「別れ話を、了承したの? 彼女」
「うん。俺も意外だった。でも彼女には申し訳ないけどスッキリしたよ」
「そか」

 梨々は早く夫と離婚したい。でも、怖くてたまらない。あの男は何をするか分からない。どうしたものか……。

「梨々、離婚、しないの?」
(あ……)
 梨々は正直に言った。

「あたし、離婚したいよ。でも、すっごく怖いんです、何か仕返しをされるんじゃないかと思って」
 水面は真摯に耳を傾け聴いてくれている。
「梨々、もしかしたら役所の職員の人が言ったかもしれないけど……聞いたかな? 退去命令や接近禁止命令のこと」
「ええ、聞いたわ。大丈夫なのかしら? あたし、職員の人がそばに居たって震えていたわ。出て行く時、夫が居たんだ……」

(それにしてもここのモカ、とっても良い香りで美味しい!)
「真面目な話しといてあれなんだけど……このコーヒー、おいしいね! 水面っ」
「ン……あ、ああ! すごく良い香りでしょう。酸味も独特だよね。よそのと違うんだ」

 なんだか美味しい、というだけで癒やされる。一番は、魅力的な水面が要因。水面はセクシーなだけじゃなく、安心感をとても与えてくれる。

 ふたりは前回のファーストデートよりも早く喫茶ロージーを出た。

 パーキングまで手を繋いで歩いた。手を先に握ったのは梨々だ。
 水面は優しくでも男の包容力、力でギュッと握り返してくれた。

 運転席に座った水面は、少し深い呼吸をひとつした。
 そうして「行っても……良い?」と梨々に尋ねた。

「もちろんよ」
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